

著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
目次
遺言書を作成しても、財産を渡す相手として指定した受取人が自分より先に亡くなってしまうケースは起こり得ます。
その場合、遺言書の効力や財産の行方はどうなるのでしょうか。
また、似たようなケースとして、生命保険金の受取人が先に死亡した場合の扱いも気になるところです。
この記事では、遺言書の受取人が死亡した場合の法的な扱い、代襲相続の可否、生命保険金との違い、予備的遺言や公正証書遺言による対策まで解説します。
・受遺者が遺言者より先に死亡すると、その部分の遺言は原則として効力を生じません
・失効した財産は相続人に帰属し、法定相続人全員で遺産分割協議が必要になることがあります
・遺言書では、通常の法定相続と違って代襲相続が当然に起きるわけではありません
・生命保険金は保険法のルールが関係するため、遺言書とは分けて確認しましょう
【結論】遺言書で指定した受取人が先に死亡すると、その部分の遺言は原則無効に

結論から言うと、遺言書で財産を受け取るように指定された人、つまり受遺者が遺言者本人よりも先に死亡した場合、その受遺者に関する部分の遺言は効力を失います。
e-Gov法令検索「民法」の第994条では、遺贈は遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは効力を生じないと定められています。
また、同じく民法第995条では、遺贈が効力を生じないときは、受遺者が受けるはずだったものは相続人に帰属するとされています。
したがって、「長男に自宅を相続させる」「友人Aに預金を遺贈する」と書いていても、その受取人が先に亡くなっていれば、その部分の遺言は原則として無効になる点に注意が必要です。
| 対象 | 原則の扱い | 根拠・確認ポイント | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 遺贈の受遺者が先に死亡 | その受遺者に関する遺言部分は効力を生じません。 | 民法第994条・第995条を確認します。 | 予備的遺言で次の受取人を指定します。 |
| 「相続させる」旨の遺言で指定相続人が先に死亡 | 特段の事情がない限り、その部分の効力は生じないと考えます。 | 最高裁平成23年2月22日判決の考え方を踏まえます。 | 文面で代替取得者を明確にします。 |
| 法定相続として処理される財産 | 相続人全員で分け方を決めます。 | 法定相続人・法定相続分を確認します。 | 遺産分割協議書を作成します。 |
| 生命保険金の受取人が先に死亡 | 受取人の相続人全員が保険金受取人となるのが保険法上の原則です。 | 保険法第46条と保険会社の約款を確認します。 | 保険会社で受取人変更手続きをします。 |
無効になった遺産は法定相続人全員の共有財産となり、遺産分割協議が必要に

遺言の一部が無効になると、その対象となっていた財産は行き先を失います。
その財産は、特定の誰かに自動的に引き継がれるわけではなく、法定相続人全員で分け方を決める対象になります。
その結果、相続人全員で「誰が」「どの財産を」「どの割合で」取得するかを話し合う遺産分割協議が必要になります。
遺産分割協議がまとまったら、預貯金の解約、不動産の相続登記、株式の名義変更などに使うため、遺産分割協議書を作成するのが一般的です。
作成方法や不動産の記載例は、内部リンクの「遺産分割協議書の書き方」もあわせて確認してください。
| 確認すること | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 遺言のどの部分が失効するか | 受取人が先に死亡した財産だけが問題になります。 | 遺言書全体が当然に無効になるわけではありません。 |
| 法定相続人は誰か | 配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹などを戸籍で確認します。 | 代襲相続人が協議に参加するケースがあります。 |
| 法定相続分の目安 | 国税庁の法定相続分一覧で基本割合を確認できます。 | 最終的な分け方は相続人全員の合意で決められます。 |
| 遺産分割協議書の作成 | 合意内容を文書化し、各種名義変更に使います。 | 相続人全員の署名押印が必要になるのが通常です。 |
法定相続人の範囲や法定相続分は、国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」でも整理されています。
法定相続分は協議がまとまらない場合の基準でもあるため、遺言が失効した財産を分けるときの出発点として確認しておきましょう。
注意!遺言書では原則として「代襲相続」は認められない

通常の相続では、本来相続人となる子などが先に亡くなっている場合、その子供が代わりに相続する代襲相続という制度があります。
しかし、遺言書で特定の財産を遺す遺贈や「相続させる」旨の遺言の場合、この代襲相続は原則として当然には適用されません。
例えば、長男にA不動産を相続させると遺言しても、長男が遺言者より先に亡くなっていた場合、長男の子が自動的にA不動産を相続できるわけではありません。
この点は、上位記事でも共通して強調されている重要な注意点です。
最高裁判所の判例でも代襲相続は原則否定されている
遺言における代襲相続が原則として認められないことは、最高裁判所の判例でも示されています。
「相続させる」旨の遺言は、遺言者が亡くなった時点で、指定された相続人が生存していることを前提にしたものと考えられます。
そのため、その相続人が遺言者より先に亡くなった場合、特段の事情がない限り遺言の効力は生じないと判断されます。
裁判例を確認する場合は、裁判所の裁判例検索で「最高裁 平成23年2月22日 相続させる 遺言」などの語句を検索すると、該当判例を確認しやすくなります。
「特段の事情」があれば代襲相続が認められる可能性も
最高裁の判例では原則として代襲相続を否定していますが、「特段の事情」があれば例外的に認められる可能性も示されています。
この特段の事情とは、遺言書の文面や作成当時の事情から、遺言者が「もし受取人が先に死亡したら、その子供に財産を渡したい」と考えていたことが合理的に読み取れる場合を指します。
ただし、何が特段の事情にあたるかの判断は難しく、相続人間で争いになると裁判で判断されることもあります。
例外に期待するよりも、あらかじめ予備的遺言で明確に書いておくことが現実的な対策です。
受取人の死亡に備えるための遺言書作成3つの対策

遺言者の意思を確実に実現し、受取人が先に死亡した場合のトラブルを防ぐためには、事前の対策が不可欠です。
具体的には、「予備的遺言の記載」「定期的な見直し」「公正証書遺言の活用」の3つを押さえておきましょう。
上位記事でも、予備的遺言の文例や公正証書遺言の活用が共通して紹介されており、検索ユーザーが最も知りたい実務ポイントだと考えられます。
| 対策 | 向いているケース | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 予備的遺言を記載する | 受取人が高齢、同年代、健康面に不安がある場合 | 第一順位の受取人が先に死亡した場合の次の取得者を明記します。 |
| 遺言書を定期的に見直す | 家族関係、財産内容、受取人の状況が変わった場合 | 新しい日付の遺言書を作成し、古い内容との矛盾を避けます。 |
| 公正証書遺言を作成する | 無効リスクや文言解釈の争いを避けたい場合 | 公証人が関与し、原本が公証役場で保管されます。 |
| 生命保険の受取人を確認する | 遺言書と生命保険を併用して財産承継を考える場合 | 保険会社の約款と受取人変更手続きを確認します。 |
対策①:「もしもの場合」を想定した予備的遺言(補充遺言)を記載する
最も有効な対策は、「予備的遺言(補充遺言)」を遺言書に記載しておくことです。
これは、「もし第一の受取人が自分より先に死亡した場合は、代わりにこの人に財産を渡す」という第二の指定をあらかじめ書き加えておく方法です。
例えば、「妻Aに不動産を相続させる。もし妻Aが自分より先に死亡した場合は、長男Bに相続させる」といった内容です。
これにより、最初の受取人が亡くなっても遺言の目的が失われにくくなり、遺言者の意思を確実に実現しやすくなります。
【文例】予備的遺言の具体的な書き方
予備的遺言を記載する際は、誰がどのような条件で財産を引き継ぐのかを明確にすることが重要です。
以下のように、第一の取得者と第二の取得者を分けて書くと、後日の解釈争いを防ぎやすくなります。
預貯金の表示:〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
万一、妻Aが遺言者より先に、又は遺言者と同時に死亡した場合には、前条記載の預貯金を長男Bに相続させる。
対策②:状況の変化に合わせて定期的に遺言書を見直す
遺言書は一度作成したら終わりではありません。
家族の結婚、離婚、出産、死亡、財産内容の変化によって、以前は最適だった遺言内容が現在の状況に合わなくなることがあります。
特に、受取人や予備的に指定した人の健康状態に変化があった場合は、遺言書の見直しを検討すべきです。
遺言書が複数ある場合、原則として後に作成した内容が優先されますが、古い遺言と新しい遺言の矛盾が争いになることもあります。
書き直すときは、撤回する範囲や残す内容を明確にしましょう。
対策③:より確実性を高める公正証書遺言を作成する
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言などがありますが、より確実性を求めるなら公正証書遺言を検討しましょう。
公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、形式不備によって無効になるリスクを抑えやすい方法です。
また、原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配も少なくなります。
受取人が先に亡くなるような不測の事態に備えるなら、予備的遺言を含めた公正証書遺言として作成しておくと安心です。
遺言書の見直しや必要書類の整理をまとめて進めたい方へ
受取人が先に死亡した場合の対応では、遺言書の文面だけでなく、戸籍、財産資料、生命保険契約、相続税への影響もあわせて確認する必要があります。
相続アシストでは、相続税申告と周辺手続きに関する資料整理をまとめて相談できます。
遺言書の効力や相続人関係の整理に不安がある場合は、早めに全体像を確認しておきましょう。
生命保険金の受取人が死亡した場合の扱いは遺言書と異なる

遺言書と混同されやすいのが、生命保険金の扱いです。
死亡保険金は、一般に相続財産そのものではなく、保険金受取人固有の権利として扱われます。
そのため、保険金の受取人が被保険者より先に死亡した場合の扱いは、遺言書とは異なります。
生命保険の相続税上の扱いや非課税枠については、内部リンクの「生命保険の相続税の計算と手続き」で詳しく解説しています。
| 場面 | 保険法上の原則 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 保険金受取人が保険事故前に死亡した場合 | 受取人の相続人全員が保険金受取人となります。 | 保険会社の約款で異なる定めがないか確認します。 |
| 保険金受取人を変更したい場合 | 保険事故発生前であれば、保険会社への意思表示で変更できます。 | 通知が保険会社へ到達する時期が重要です。 |
| 遺言で保険金受取人を変更する場合 | 遺言によって変更することも可能です。 | 遺言効力発生後、相続人が保険会社へ通知しないと対抗できません。 |
| 受取人変更で争いが起きそうな場合 | 遺言執行者の指定が実務上役立つことがあります。 | 旧受取人への支払い後に紛争化するリスクを避けます。 |
生命保険金については、e-Gov法令検索「保険法」の第43条、第44条、第46条が重要です。
特に第46条では、保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人全員が保険金受取人となると定められています。
保険金受取人の法定相続人が保険金を受け取るのが一般的
死亡保険金の受取人が被保険者より先に亡くなった場合、多くの契約では、亡くなった受取人の法定相続人が新たな受取人になります。
これは、遺言のように指定部分が当然に失効するのではなく、保険法や保険約款に基づいて受取人の地位が引き継がれるためです。
ただし、具体的な扱いは契約内容や保険会社の約款によって異なる場合があります。
加入中の保険がある場合は、保険証券と約款を確認しておきましょう。
遺言書で生命保険金の受取人を変更することも可能
生命保険金の受取人は、通常、保険会社への届け出によって変更しますが、遺言書で変更することも可能です。
保険法第44条では、保険金受取人の変更は遺言によってもできるとされています。
ただし、遺言による変更は、遺言が効力を生じた後に相続人が保険会社へ通知しなければ、保険会社に対抗できません。
トラブルを避けるためには、遺言書に書くだけでなく、可能であれば生前に保険会社で受取人変更手続きを済ませておくことが望ましいでしょう。
遺言書の受取人死亡に関するよくある質問

遺言書の受取人が先に亡くなってしまった場合の扱いについては、多くの方が疑問や不安を感じています。
ここでは、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
ご自身の状況と照らし合わせながら、対策を考える際の参考にしてください。
遺言書に書かれた受取人が自分より先に死亡した場合、その遺言はすべて無効になりますか?
いいえ、遺言書全体が無効になるわけではありません。
効力を失うのは、あくまで先に死亡した受取人に関する部分です。
他の受取人への遺贈や、認知、遺言執行者の指定など、財産以外の事項に関する記載は有効に残る場合があります。
まずは、どの部分が失効するのかを切り分けて確認しましょう。
受取人だった親が亡くなった場合、その子供である孫が代わりに遺産を相続(代襲相続)できますか?
遺言書による財産の指定は、原則として受取人個人に対するものです。
そのため、受取人が遺言者より先に死亡した場合、その子供が当然に同じ財産を受け取れるわけではありません。
ただし、遺言が失効した財産について法定相続のルールに戻る場合、孫が代襲相続人として遺産分割協議に参加するケースはあります。
つまり、遺言による取得と法定相続による取得は分けて考える必要があります。
受取人が死亡した事態に備えて、遺言書にはどのようなことを書いておけば良いですか?
「予備的遺言(補充遺言)」を記載しておくことが最も有効な対策です。
「もし受取人であるAが先に死亡した場合は、代わりにBに相続させる」という一文を加えておきましょう。
これにより、万一の事態が発生しても遺言の目的が失われにくくなり、ご自身の意思を確実に残すことにつながります。
神戸で生前対策にお悩みなら「生前対策診断サポート」で現状整理から

遺言書の作成や受取人の指定など、生前対策は複雑で、何から手をつければよいか分からない方も多いでしょう。
SWATSの「生前対策診断サポート」は、特定の手段ありきではなく、まず財産状況やご家族の関係、ご希望を整理し、今何をすべきかを明確にすることから始めます。
遺言書だけで十分なのか、生命保険や生前贈与、家族信託なども検討すべきかは、家族構成や財産内容によって異なります。
受取人死亡のリスクまで含めて、現状整理から対策設計まで一緒に確認していきましょう。
神戸で生前対策の相談先にSWATSが選ばれる4つの理由

生前対策を成功させるには、ご自身の状況に合わせた適切な判断が不可欠です。
SWATSでは、お客様一人ひとりの状況に寄り添い、最適な対策を設計するための体制を整えています。
税務と法務の統合的な視点、中立的な提案、長期的な設計、柔軟な相談方法が、多くのお客様に選ばれる理由です。
税務と法務の両面から最適な対策を一体で判断できる
生前対策には、遺言の有効性といった法務の視点と、相続税の負担を考慮する税務の視点の両方が欠かせません。
SWATSでは、これらの専門分野を別々に検討するのではなく、一体で判断できる体制を構築しています。
これにより、法的に有効であると同時に、税務的にも無理のない総合的な生前対策をご提案できます。
遺言・家族信託など特定の制度に偏らない中立的な提案
生前対策の方法には、遺言書のほか、家族信託、任意後見、生前贈与など様々な選択肢があります。
私たちは特定の制度や商品を販売することが目的ではありません。
ご家族への想いと財産状況を丁寧に整理し、メリット・デメリットを比較したうえで、中立的な立場で必要な対策をご提案します。
相続発生後の手続きまで見据えた長期的な設計
生前対策は、単に書類を作成して終わりではありません。
実際に相続が発生した際に、ご家族が困ることなく手続きを進められることがゴールです。
対策の設計段階から、将来の遺産分割協議や相続税申告まで見据え、相続発生後も使える設計を心掛けています。
神戸での対面相談と全国対応のオンライン相談が選べる
SWATSは神戸に拠点を構え、地域に密着した対面でのご相談に対応しています。
直接顔を合わせてじっくりと話を伺うことで、より深いご提案が可能です。
また、遠方にお住まいの方や来所が難しい方のために、全国どこからでも相談できるオンライン相談体制も整えています。
まとめ:受取人の死亡に備え、予備的遺言で意思を確実に残そう

遺言書で指定した受取人が遺言者より先に亡くなると、その部分の遺言は原則として効力を失います。
対象財産は法定相続人による遺産分割協議が必要になり、遺言者が想定していなかった形で財産が分かれる可能性があります。
この不測の事態を避けるには、「もし受取人が先に死亡した場合は、別の人に財産を渡す」という予備的遺言を記載しておくことが最も有効です。
生命保険金は保険法や約款の確認も必要になるため、遺言書、保険契約、相続税への影響をまとめて整理しておきましょう。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

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