
著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
目次
遺言作成の注意点を押さえずに遺言書を書くと、せっかく作成した書面が無効になったり、内容の解釈をめぐって相続人同士のトラブルにつながったりすることがあります。
特に自筆証書遺言では、日付、署名、押印、財産目録、訂正方法などに細かなルールがあります。
遺言書は、ご自身の財産を誰にどのように遺すかを決めるための重要な意思表示です。
ただし、形式だけを整えれば十分というわけではなく、誰に・どの財産を・どの割合で渡すのかを具体的に書くことも大切です。
遺言書の効力については「遺言書の効力とは?種類別の書き方から無効になるケースまで解説」で詳しく紹介しています。
・自筆証書遺言は、本文・日付・氏名を自書し、押印する必要があります
・日付が「吉日」などで特定できない場合、無効になる可能性があります
・財産目録をパソコンで作成する場合は、全ページに署名・押印が必要です
・遺留分や曖昧な表現に配慮しないと、相続トラブルにつながることがあります
・自宅保管、法務局保管、公正証書遺言では、検認の要否や安全性が異なります
遺言書の作成で失敗しないために押さえるべき基本

遺言書を作成する際は、法律で定められたルールを守ることが大前提です。
原則として、家族に口頭で希望を伝えただけでは遺言としての効力は認められません。
形式に不備があると、書面を作成していても法的な効力が認められない可能性があります。
政府広報オンラインでも、自筆証書遺言では遺言者本人が本文・日付・氏名を自書し、押印することや、日付を具体的に記載することが要件として整理されています。
詳しくは政府広報オンライン「知っておきたい遺言書のこと」を確認してください。
また、形式だけでなく、内容も重要です。
財産の分け方が不明確であったり、特定の相続人に偏りすぎたりすると、相続人間でのトラブルの原因となります。
法的に有効で、かつ相続人が納得しやすい内容にすることが、失敗しない遺言書作成の基本です。
作成前に財産と家族関係を整理する
遺言書を書く前に、預貯金、不動産、有価証券、生命保険、借入金などを一覧化しましょう。
財産の記載漏れがあると、遺言書に書かれていない財産について相続人全員で遺産分割協議が必要になることがあります。
不動産は登記事項証明書、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号、有価証券は証券会社名や銘柄などを確認し、財産を特定できる情報をもとに記載します。
| 確認する財産 | 主な確認資料 | 遺言書での注意点 |
|---|---|---|
| 不動産 | 登記事項証明書、固定資産税通知書 | 所在、地番、家屋番号、持分まで確認する |
| 預貯金 | 通帳、残高証明書、取引明細 | 金融機関名、支店名、口座番号を特定する |
| 有価証券 | 証券会社の残高報告書、取引報告書 | 銘柄や口座情報を明確にする |
| 生命保険 | 保険証券、契約内容のお知らせ | 受取人指定と遺言内容が矛盾しないか確認する |
遺言書が無効になる!?作成時に陥りがちな5つの落とし穴

遺言書には厳格な要件が定められており、一つでも満たしていないと無効になる可能性があります。
特に自筆で作成する場合、良かれと思って書いた内容が、かえって法的な不備につながることも少なくありません。
ここでは、遺言書作成時に陥りやすい5つの具体的な失敗例と、なぜそれが問題になるのかを解説します。
民法の条文を確認したい場合は、e-Gov法令検索「民法」も参照してください。
| 落とし穴 | 問題になる理由 | 対処法 |
|---|---|---|
| 日付が特定できない | 複数の遺言書がある場合に新旧を判断できない | 年月日を具体的に書く |
| 夫婦連名で作成する | 共同遺言は禁止されている | 夫婦でも別々に作成する |
| 本文をパソコンで作る | 自筆証書遺言の本文は自書が必要 | 本文、日付、氏名は本人が手書きする |
| 財産目録に署名・押印がない | 自書でない財産目録は全ページに署名・押印が必要 | 両面印刷なら両面に署名・押印する |
| 訂正方法が誤っている | 訂正箇所や訂正内容が明確でないと無効リスクがある | 不安な場合は書き直す |
日付が「令和〇年吉日」では無効になる
自筆証書遺言では、遺言書を作成した年月日を正確に記載するルールがあります。
「令和6年吉日」や「令和6年7月」のように、日付が特定できない記載では、その遺言書は無効になる可能性があります。
これは、複数の遺言書が見つかった場合に、どちらが新しいものかを判断できなくなり、遺言者の最終的な意思が分からなくなるためです。
必ず、作成した年月日を明確に記してください。
夫婦連名の共同遺言は法律で禁止されている
夫婦が同じ一枚の紙に連名で遺言を記す共同遺言は、民法で禁止されており無効です。
遺言は個人の最終的な意思表示であり、他者の影響を受けずに自由に作成・変更できる必要があります。
共同遺言では、例えば夫が後から内容を変えたいと思っても、妻の意思に制約される可能性があるため認められません。
遺言書は、たとえ夫婦であっても各自が別々に作成するルールになっています。
パソコンやスマホで作成した本文は認められない
自筆証書遺言は、遺言者が本文のすべてを自筆で書くことが原則的なルールです。
そのため、パソコンやスマートフォンで作成して印刷したものや、他人が代筆したものは無効となります。
全文を自筆で書くことで、筆跡から本人の意思に基づいていることを確認できるようにしています。
ただし、2019年の法改正により、財産の内容を記した財産目録については、パソコンでの作成や通帳・登記事項証明書のコピー添付が認められるようになりました。
財産目録の各ページに署名・押印がない
遺言書に添付する財産目録をパソコンで作成したり、通帳のコピーや登記事項証明書を添付したりする場合、そのすべてのページに遺言者が署名と押印をするルールがあります。
この署名・押印が1ページでも欠けていると、その財産目録が使えなくなる可能性があります。
本文が有効でも、財産の指定部分が不明確になると、意図した相続が実現できなくなる可能性があるため、全ページの署名・押印を忘れないようにしてください。
変更・修正のルールが守られていない
一度作成した自筆証書遺言の内容を変更・修正する際には、民法で定められた方式に従って手続きを行う必要があります。
具体的には、変更したい箇所を二重線などで消し、正しい内容を近くに書き加えたうえで、変更した箇所に押印し、さらに変更内容を付記して署名します。
この方式を守らない修正は無効となり、修正前の内容が有効なままとなることがあります。
迷う場合は無理に訂正せず、新しい遺言書として書き直す方が安全です。
あなたに最適なのはどれ?遺言書2つの方式を比較

遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つの方式があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いは、作成方法、費用、家庭裁判所による検認の要否などです。
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、法的な不備のリスクが伴います。
一方、公正証書遺言は費用と手間がかかりますが、形式不備で無効になりにくい方法です。
| 比較項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 本人が本文・日付・氏名を自書して押印する | 公証人が関与し、証人2人以上の立会いで作成する |
| 費用 | 自分で作成すれば低コスト | 財産額に応じた公証人手数料などがかかる |
| 検認 | 自宅保管なら原則として家庭裁判所の検認が必要 | 検認不要 |
| 保管 | 自宅保管または法務局保管制度を利用 | 原本は公証役場で保管 |
| 向いている人 | 費用を抑えたい人、内容が比較的シンプルな人 | 確実性を重視したい人、財産や家族関係が複雑な人 |
【費用を抑えたい方向け】自筆証書遺言のメリット
自筆証書遺言の最大のメリットは、費用をかけずに手軽に作成できる点です。
紙とペン、印鑑さえあれば、いつでもどこでも遺言書を作成できます。
公証役場へ出向く必要もなく、証人を依頼する必要もありません。
また、遺言の内容を誰にも知られずに秘密にしておけるというメリットもあります。
書き直しも比較的容易なため、財産状況や心境の変化に応じて柔軟に見直しやすいのも特徴です。
【法的な不備のリスク】自筆証書遺言のデメリット
自筆証書遺言のデメリットは、法律で定められた要件を満たしておらず、無効になるリスクがあることです。
日付の記載漏れや押印忘れなど、わずかなミスで法的な効力が失われる可能性があります。
また、遺言書を自分で保管するため、紛失、盗難、改ざんのリスクも伴います。
相続開始後には、家庭裁判所で検認という手続きが必要となり、相続人に手間と時間がかかる点もデメリットと言えます。
【法的な確実性が高い】公正証書遺言のメリット
公正証書遺言の大きなメリットは、法律の専門家である公証人が作成に関与するため、形式不備で無効になる心配がほとんどないことです。
また、作成時には証人2名が立ち会うため、遺言者の意思能力が明確になり、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
原本は公証役場で厳重に保管されるため、紛失や改ざんのおそれもありません。
さらに、相続開始後の家庭裁判所での検認手続きが不要なため、相続手続きをスムーズに進められます。
【作成に費用がかかる】公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言のデメリットとして、作成に費用がかかる点が挙げられます。
手数料は相続させる財産の価額によって変動し、数万円から数十万円程度になるのが一般的です。
また、作成には公証人との打ち合わせや、証人2名の立会いが必要になるため、手間と時間がかかります。
証人は推定相続人など利害関係者はなれないため、証人の確保も事前に検討しておきましょう。
遺言の方式選びや財産整理をまとめて進めたい方へ
遺言書は方式選びだけでなく、財産の棚卸し、相続税の影響、遺留分、家族信託や任意後見との関係まで整理して考える必要があります。
生前対策診断では、現在の状況をもとに、遺言書だけで十分か、他の対策も必要かを専門家と確認できます。
相続トラブルを未然に防ぐための遺言書の書き方3つのコツ

法的に有効な遺言書を作成するだけでは、相続トラブルを完全に防げるとは限りません。
遺言書の中身が原因で、相続人同士が揉めるケースは少なくないためです。
遺された家族が円満に相続手続きを進められるよう、内容面でも細やかな配慮が求められます。
また、財産を受け取る予定の人が遺言者より先に亡くなる場合に備え、予備的遺言を検討することも重要です。
「長男にすべて任せる」など曖昧な表現は避ける
遺言書の中身は、誰が読んでも解釈に迷わないよう、具体的かつ明確に記載することが重要です。
「長男にすべて任せる」や「家は妻に」といった曖昧な表現は、相続人によって解釈が異なり、揉める原因になりかねません。
不動産であれば所在・地番・家屋番号まで正確に、預貯金であれば金融機関名・支店名・口座番号まで特定し、それぞれの財産を受ける人が誰なのかを具体的に記載してください。
生命保険金については、通常の預貯金などと異なり、保険契約で指定された受取人が取得するのが原則です。
遺留分を侵害する内容になっていないか確認する
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律で保障された最低限の遺産取得分であり、遺言書の内容を検討する際に無視できないラインです。
遺言書でこれに満たない財産しか与えられなかった相続人は、多くの財産を受け取った他の相続人に対し、不足分を金銭で請求できることがあります。
遺留分を侵害する遺言も直ちに無効になるわけではありませんが、後から請求されると深刻なトラブルに発展しがちです。
遺留分侵害額請求後の相続税申告書の書き方については「遺留分侵害額請求後の相続税申告書の書き方」で詳しく紹介しています。
なぜこの財産配分にしたのか付言事項で想いを伝える
付言事項とは、遺言の末尾に記すメッセージのことで、法的な効力はありません。
しかし、なぜこのような財産配分にしたのかという理由や、家族への感謝の気持ち、残された家族に仲良く暮らしてほしいという願いなどを記すことで、相続人の感情的な対立を和らげる効果が期待できます。
特に法定相続分と異なる配分をする場合は、付言事項で理由を説明することが、相続人の納得を得て円満な相続につながります。
自筆証書遺言書保管制度と検認の注意点

自筆証書遺言は、自宅で保管する方法だけでなく、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあります。
保管方法によって、紛失や改ざんのリスク、相続開始後の検認の要否が変わります。
法務局に預ける場合は、A4サイズ、余白、片面記載、ページ番号などの様式ルールがあります。
これらの様式については、東京法務局「遺言書を作成するときの注意点」でも具体例つきで案内されています。
| 保管方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 自宅保管 | 費用を抑えやすく、すぐに作成・保管できる | 紛失、改ざん、発見されないリスクがある。原則として検認が必要 |
| 法務局保管制度 | 原本を法務局で保管でき、検認が不要になる | 本人が法務局に出向く必要があり、様式ルールを守る必要がある |
| 公正証書遺言 | 公証人が関与し、原本が公証役場で保管される | 費用と証人2人が必要 |
自宅で見つかった遺言書は勝手に開封しない
自宅で封印された自筆証書遺言が見つかった場合、家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封する必要があります。
家庭裁判所の検認については、裁判所「遺言書の検認」でも、申立人や申立先、必要書類が案内されています。
検認は遺言書の状態を確認し、偽造・変造を防ぐための手続きです。
ただし、検認を受けたからといって、遺言書の内容が当然に有効と判断されるわけではない点にも注意してください。
遺言書の注意点に関するよくある質問

遺言書の作成を検討する中で、多くの方が疑問に思う点について解説します。
自筆証書遺言と公正証書遺言は、どちらを選ぶべきですか?
法的な確実性を最優先するなら公正証書遺言を推奨します。
費用はかかりますが、形式不備で無効になるリスクが低く、検認も不要です。
費用を抑えたい場合は自筆証書遺言も選択肢ですが、無効リスクを避けるため専門家に相談すると安心です。
遺言書の内容で家族が揉めないようにするための注意点はありますか?
相続人全員の遺留分に配慮した中身にすることが重要です。
特定の相続人に財産が偏ると、遺留分侵害額請求をされ揉める原因となります。
また、なぜその配分にしたのかを付言事項で伝えることで、相続人の納得を得やすくなります。
パソコンで作成した財産目録を遺言に添付するときの注意点を教えてください。
パソコンで作成した財産目録は、印刷したすべてのページに署名と押印が必要です。
このルールが守られていないと、財産目録自体が無効になる可能性があるため注意しなくてはなりません。
用紙の表裏に印刷した場合は、両面に署名・押印が必要です。
遺言書の作成に不安があれば「生前対策診断」で専門家に相談

遺言書の作成には、民法で定められた厳格なルールを守る必要があり、少しの不備が原因で無効になってしまう可能性があります。
また、相続税や遺留分といった専門的な知識も求められるため、ご自身だけで完璧な遺言書を作成するのは簡単なことではありません。
もし少しでも作成に不安を感じる場合は、専門家に相談することをおすすめします。
現状を整理し、どのような対策が必要かを明確にする生前対策診断のようなサービスを利用するのも一つの方法です。
ご自身の生前対策については「生前対策診断」で詳しく紹介しています。
生前対策で専門家のサポートが選ばれる3つの理由

生前対策を専門家に依頼することで、ご自身の状況に合った最適な準備が可能になります。
専門家ならではの視点と知識を活用することで、個人では気づきにくいリスクにも対応できます。
税務と法務の両面から最適なプランを提案できる
遺言書の作成は民法という法律の知識が求められる法務の領域ですが、相続には相続税という税務の問題も密接に関わってきます。
法的に有効な遺言を作成しても、相続税の負担が重くなってしまっては意味がありません。
税務と法務、両方の視点を持つ専門家であれば、遺産分割と納税の両方を見据えた、総合的に最適なプランを提案することが可能です。
遺言だけでなく家族信託など幅広い選択肢から検討できる
生前対策は遺言書の作成だけではありません。
例えば、認知症による資産凍結に備える「家族信託」や「任意後見」といった制度もあります。
専門家はこれらの制度を横断的に理解しており、ご家族の状況や財産内容、将来への希望などをヒアリングしたうえで、幅広い選択肢の中から最適な解決策を検討できます。
遺言書の相談については「遺言コンサルティングサポート」で詳しく紹介しています。
相続発生後の手続きまで見据えた長期的なサポート体制
生前対策は、遺言書などを作成して終わりではありません。
重要なのは、実際に相続が発生した際に、その内容がスムーズに実現されることです。
専門家は、遺言の執行や不動産の名義変更、預貯金の解約、相続税申告といった死後の手続きまで見据えて対策を設計します。
将来発生する手続きの負担を軽減し、円滑な資産承継を実現するための長期的なサポートが期待できます。
まとめ

遺言書を作成する際には、法的に無効にならないよう形式的なルールを守ることが第一です。
日付や署名・押印といった基本的な要件を確実に満たす必要があります。
それに加えて、相続人全員の遺留分に配慮し、財産の分け方を具体的に記すなど、相続トラブルを未然に防ぐための内容面の工夫も欠かせません。
もし作成に不安がある場合は、法務と税務の両面からサポートできる専門家へ相談することを検討してください。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

相続の概要や今後の流れをわかりやすくご説明します。相談は15分程度で全国どこからでもご参加可能です。
まずはお気軽に、お電話またはWebフォームにてお申し込みください。





