
著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
目次
親や祖父母からまとまった資金援助を受けるときは、贈与税の非課税特例を使えるかどうかが重要です。
贈与税には年間110万円の基礎控除のほか、住宅取得資金、配偶者控除、教育資金、結婚・子育て資金など、目的別の非課税制度があります。
ただし、制度ごとに対象者・期限・必要書類・申告の要否が異なります。
この記事では、贈与の非課税特例の全体像と、利用者が多い住宅取得等資金の非課税特例について、2026年時点の一次情報をもとに整理します。
・住宅取得等資金の非課税特例は、令和8年12月31日までの贈与が対象です
・非課税限度額は、省エネ等住宅が1,000万円、それ以外の住宅が500万円です
・非課税額以下でも、特例を使うには贈与税申告が必要です
・教育資金の一括贈与は、令和8年3月31日で新規適用が終了しています
そもそも贈与税の非課税特例とは?

贈与税の非課税特例とは、特定の目的や条件を満たす場合に、一定額までの贈与について贈与税がかからなくなる制度です。
通常、個人から1年間に受けた贈与の合計額が110万円を超えると贈与税の対象になります。
国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率」でも、暦年課税では1月1日から12月31日までの贈与額を合計し、基礎控除額110万円を差し引いて計算するとされています。
一方で、住宅購入、教育、結婚・子育て、配偶者への居住用不動産など、政策的に支援されている分野では、基礎控除とは別に大きな非課税枠が設けられています。
ただし、これらの特例は「使えば自動的に非課税」ではありません。
制度によっては、贈与税が0円でも申告が必要になるため、要件と手続きをセットで確認しましょう。
贈与税の非課税枠については「贈与税の非課税枠の仕組みと計算方法」で詳しく紹介しています。
【一覧】目的別でわかる贈与税の主な非課税特例

競合記事では、贈与税が非課税になるケースをまず一覧化し、その後に住宅取得資金や申告手続きへ進む構成が多く見られます。
読者が自分に関係する制度を選びやすいよう、ここでは非課税枠・対象者・手続き・注意点で比較します。
| 制度 | 主な非課税枠 | 対象・目的 | 申告・手続き | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 暦年贈与の基礎控除 | 年間110万円 | 用途を問わない贈与 | 110万円以下なら原則申告不要 | 受贈者1人ごとの合計額で判定します。 |
| 住宅取得等資金の非課税特例 | 省エネ等住宅1,000万円、一般住宅500万円 | 直系尊属から住宅取得等資金を受ける場合 | 贈与税申告が必要 | 令和8年12月31日までの贈与が対象です。 |
| 配偶者控除 | 基礎控除とは別に最大2,000万円 | 婚姻期間20年以上の夫婦間の居住用不動産など | 贈与税申告が必要 | 同じ配偶者からは一生に一度です。 |
| 教育資金の一括贈与 | 最大1,500万円 | 30歳未満の子・孫の教育資金 | 金融機関経由で申告 | 令和8年3月31日で新規適用は終了しています。 |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 最大1,000万円 | 18歳以上50歳未満の子・孫の結婚子育て資金 | 金融機関経由で申告 | 令和9年3月31日までが対象です。 |
| 生活費・教育費の都度贈与 | 通常必要と認められる範囲 | 扶養義務者からの生活費・教育費 | 原則申告不要 | 預貯金や投資に回すと課税対象になることがあります。 |
一次情報として、配偶者控除は国税庁「No.4452」、教育資金は「No.4510」、結婚・子育て資金は「No.4511」、生活費等は「No.4405」も確認しておくと安心です。
暦年贈与の基礎控除:年間110万円まで非課税
暦年贈与は、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額から、基礎控除110万円を差し引いて贈与税を計算する方法です。
年間110万円までであれば、原則として贈与税はかかりません。
ただし、受贈者1人あたりの年間合計額で判定するため、複数人から贈与を受けた場合は合算して確認します。
夫婦間で居住用不動産を贈与する場合の配偶者控除
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与した場合、基礎控除とは別に最大2,000万円まで控除できます。
いわゆる「おしどり贈与」と呼ばれる制度ですが、贈与税申告をしなければ適用できない点に注意が必要です。
教育資金・結婚子育て資金の一括贈与は期限に注意する
教育資金の一括贈与は、30歳未満の子や孫に最大1,500万円まで非課税で教育資金を渡せる制度でしたが、国税庁の案内では令和8年3月31日で新規適用は終了しています。
一方、結婚・子育て資金の一括贈与は、令和9年3月31日までの制度として残っています。
いずれも金融機関の専用口座を使う制度であり、通常の贈与契約だけで完結するものではありません。
【最重要】住宅取得等資金の贈与税の非課税特例を徹底解説

数ある非課税特例の中でも、住宅購入を予定している人にとって特に重要なのが「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」です。
国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」では、令和6年1月1日から令和8年12月31日までに、父母や祖父母など直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け、一定要件を満たす場合に非課税となるとされています。
競合記事でも、この制度は「限度額」「受贈者要件」「住宅要件」「申告書類」を分けて解説しており、本記事でも同じ順で実務上の確認ポイントを整理します。
住宅取得等資金の非課税限度額と省エネ等住宅の基準

2026年7月時点で、住宅取得等資金の非課税限度額は、省エネ等住宅が1,000万円、それ以外の住宅が500万円です。
この非課税枠は贈与者ごとではなく、贈与を受ける人ごとに判定されます。
例えば父と祖父の両方から贈与を受けた場合でも、それぞれ1,000万円ずつ非課税になるわけではなく、受贈者1人につき上限額までです。
| 住宅の種類 | 非課税限度額 | 主な基準 | 確認書類の例 |
|---|---|---|---|
| 省エネ等住宅 | 1,000万円 | 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上、耐震等級2以上、免震建築物、高齢者等配慮対策等級3以上など | 住宅性能証明書、建設住宅性能評価書の写しなど |
| それ以外の住宅 | 500万円 | 床面積・居住・取得期限などの基本要件を満たす住宅 | 売買契約書、工事請負契約書、登記事項証明書など |
省エネ等住宅かどうかは、広告や営業担当者の説明だけで判断せず、申告時に提出できる証明書類があるかを確認しましょう。
証明書の取得に時間がかかることもあるため、贈与を受ける前から住宅会社や不動産会社に確認しておくと安心です。
住宅取得等資金の適用要件をチェックリストで確認

住宅取得等資金の非課税特例は、贈与を受ける人の要件と、取得する住宅の要件を両方満たす必要があります。
どちらか一方でも満たさない場合は、非課税特例を使えないため、契約前・贈与前・申告前の3段階で確認しましょう。
| 確認区分 | 主な要件 | 判断ポイント |
|---|---|---|
| 贈与者 | 父母・祖父母などの直系尊属 | 配偶者の親は、養子縁組がない限り直系尊属に含まれません。 |
| 受贈者 | 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上 | 年齢判定日は誕生日ではなく、その年の1月1日です。 |
| 所得 | 合計所得金額2,000万円以下。床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下 | 高所得者や小規模住宅では特に確認が必要です。 |
| 資金の使途 | 翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を新築・取得・増改築等に充てる | 住宅ローン返済や家具購入などは対象外です。 |
| 居住 | 翌年3月15日までに居住、または遅滞なく居住する見込み | 翌年12月31日までに居住していない場合は原則不適用です。 |
| 住宅 | 日本国内の家屋で、床面積40㎡以上240㎡以下、2分の1以上が居住用 | 登記簿上の床面積で判定します。 |
中古住宅の購入やリフォームでも特例は利用できる
住宅取得等資金の非課税特例は、新築住宅だけでなく、中古住宅の取得や増改築等でも利用できる場合があります。
国税庁の要件では、中古住宅については昭和57年1月1日以後に建築された住宅、または耐震基準に適合することを一定の書類で証明できる住宅などが対象です。
増改築等の場合は、自己が所有し居住している家屋に対する一定の工事であり、工事費用100万円以上などの要件を満たす必要があります。
土地だけの購入や住宅ローン返済は対象外
この特例は、住宅用家屋の新築・取得・増改築等の対価に充てるための金銭贈与が対象です。
家屋とあわせて取得する敷地は対象に含まれる場合がありますが、土地だけを取得する場合は対象外です。
また、国税庁のQ&Aでも、既存の住宅ローン返済に充てる金銭の贈与は対象外とされています。
贈与税の非課税特例を利用するために必要な申告手続き

住宅取得等資金の非課税特例は、贈与税が0円になる場合でも申告が必要です。
国税庁のQ&Aでも、非課税となる金額以下であっても、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、一定書類を添付して申告する必要があると案内されています。
申告しないまま期限を過ぎると、特例を適用できないリスクがあります。
申告期限は贈与を受けた翌年2月1日から3月15日まで
贈与税の申告期間は、原則として贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。
例えば、2026年中に住宅取得等資金の贈与を受けた場合は、2027年2月1日から3月15日までに申告します。
住宅の取得や居住の期限とも絡むため、贈与日・契約日・引渡日・入居日を一覧で管理しておきましょう。
住宅取得等資金の贈与で提出が求められる添付書類一覧
必要書類は新築・取得か増改築等か、省エネ等住宅に該当するかによって変わります。
国税庁「令和7年分贈与税の申告書等の様式一覧」では、住宅取得等資金の非課税に関するチェックシートや添付書類の案内も掲載されています。
| 書類区分 | 主な書類 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 共通書類 | 贈与税申告書、申告書第1表の2、戸籍謄本、本人確認書類など | 直系尊属からの贈与であることを証明します。 |
| 新築・取得 | 売買契約書や工事請負契約書の写し、登記事項証明書など | 登記事項証明書は、不動産番号の記載により添付省略できる場合があります。 |
| 増改築等 | 増改築等工事証明書、確認済証・検査済証の写しなど | 工事内容と費用が要件に合っているかを確認します。 |
| 省エネ等住宅 | 住宅性能証明書、建設住宅性能評価書の写しなど | 1,000万円枠を使う場合は証明書類の取得が重要です。 |
贈与契約書は国税庁の必須添付書類として列挙されるものではありませんが、贈与の事実や日付を明確にするために作成しておくと実務上安心です。
贈与契約書の書き方については「贈与契約書の書き方と税務調査で困らない作成ポイント」で詳しく紹介しています。
必要書類や申告期限をまとめて確認したい方へ
住宅取得等資金の贈与では、住宅会社・金融機関・税務署にまたがって確認すべき資料が多くなります。
相続アシストでは、贈与税申告だけでなく、将来の相続税や生前対策まで含めて整理できます。
2024年以降の税制改正と他制度との併用について

2024年以降の贈与では、暦年贈与の生前贈与加算期間の見直しや、相続時精算課税制度の基礎控除創設など、生前贈与をめぐるルールが大きく変わっています。
住宅取得等資金の非課税特例は、暦年贈与や相続時精算課税制度と併用できますが、どの制度でいくら処理するかを事前に整理することが重要です。
暦年贈与との併用で非課税枠を広げられる
住宅取得等資金の非課税特例は、暦年贈与の基礎控除110万円と併用できます。
省エネ等住宅で1,000万円の非課税枠を使い、同じ年に基礎控除110万円も使える場合、合計1,110万円まで贈与税がかからない可能性があります。
ただし、暦年贈与分は相続開始前の一定期間内に相続財産へ加算される可能性があるため、相続税対策としての効果も確認しましょう。
相続時精算課税制度との併用は可能
住宅取得等資金の非課税特例は、相続時精算課税制度とも併用できます。
国税庁「No.4504」でも、住宅取得等資金の非課税と相続時精算課税を組み合わせた計算例が示されています。
2024年1月1日以後の贈与では、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられていますが、一度選択すると制度の影響が続くため、贈与者ごとの累計管理が必要です。
贈与税の非課税特例に関するよくある質問

贈与税の非課税特例は要件が細かいため、利用前に誤解しやすい点を確認しておきましょう。
特に住宅取得等資金では、誰から受けた贈与か・何に使ったか・期限内に申告したかが重要です。
暦年贈与の110万円控除と住宅取得資金の非課税特例はどう違うのですか?
暦年贈与の基礎控除は、用途を問わず年間110万円まで非課税になる制度です。
一方、住宅取得等資金の非課税特例は、住宅の新築・取得・増改築等に使う金銭に目的が限定されますが、最大1,000万円という大きな枠を使えます。
両制度は併用できますが、住宅取得等資金の特例は贈与税申告が必要です。
夫婦で住宅取得資金の贈与を受ける場合、非課税枠はそれぞれ利用できますか?
夫婦それぞれが、自分の父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け、それぞれが要件を満たす場合は、受贈者ごとに非課税枠を使える可能性があります。
ただし、住宅の持分や資金の流れが実態と合っていないと、後から説明が難しくなります。
夫婦で利用する場合は、持分割合・贈与額・支払口座を整合させましょう。
贈与された資金を住宅ローンの返済に充てた場合も対象になりますか?
いいえ、対象外です。
この非課税特例は、住宅用家屋の新築・取得・増改築等の対価に充てるための金銭贈与が対象です。
すでに組んでいる住宅ローンの繰上げ返済に充てる目的の贈与は、住宅取得等資金の非課税特例の対象外です。
専門家による「生前対策診断サポート」で最適な贈与プランを

贈与税の非課税特例は有効な節税手段ですが、要件が複雑で、どの制度をどのように組み合わせるのが適切かは家庭ごとに異なります。
特に住宅取得資金の贈与は、相続税だけでなく、住宅ローン、持分、将来の遺産分割にも関係します。
専門家の客観的な視点を活用することで、税務と法務の両面から無理のない贈与プランを設計しやすくなります。
SWATSが選ばれる理由
生前対策の相談においてSWATSが選ばれる理由は、単一の制度知識を提供するだけでなく、ご家庭ごとの状況に合わせた総合判断を支える体制にあります。
税務と法務の専門家が連携し、特定の制度に偏らず、将来の相続発生後まで見据えたプランをご提案します。
税務と法務の両面から最適な対策を一体でご提案
生前対策は、贈与税を節税するだけでは十分ではありません。
将来の遺産分割で家族が揉めないか、名義預金と見られないか、住宅の持分設定に無理がないかといった視点も必要です。
SWATSでは、税理士と司法書士などの専門家が連携し、相続発生後まで見据えた設計を行います。
遺言や家族信託など特定の制度に偏らない中立的なアドバイス
生前対策には、生前贈与のほかにも、遺言書の作成、家族信託、任意後見などさまざまな方法があります。
どの方法が適切かは、財産の内容や家族関係、ご本人の希望によって異なります。
相続と贈与の違いについては「相続と贈与の違いを比較|税金メリットと選び方」で詳しく紹介しています。
相続発生後の手続きまで見据えた長期的なサポート
生前対策は、実行して終わりではありません。
その対策が、実際に相続が発生した際に円滑に機能することが重要です。
SWATSでは、生前のプランニング段階から、将来の遺産分割協議や相続税申告までを見据えて設計します。
生前対策の診断については「生前対策診断」で詳しく紹介しています。
贈与税の非課税特例や住宅取得資金の申告に不安がある場合は早めに相談する

贈与税の非課税特例は、制度を知っているだけでは足りません。
期限までに資金を使い、必要書類をそろえ、申告書に正しく反映してはじめて効果を得られます。
住宅購入前に贈与を受ける予定がある、親族間で複数の贈与を組み合わせたい、将来の相続税まで考えて判断したい場合は、贈与を実行する前に専門家へ相談すると安心です。
相続税申告や周辺手続きをまとめて相談したい場合は、相続アシストもあわせてご確認ください。
まとめ

贈与税の非課税特例は、住宅取得資金のように高額な資金援助を受ける際に大きな効果があります。
特に住宅取得等資金の非課税特例は、令和8年12月31日までの贈与について、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円まで非課税になる可能性があります。
ただし、対象者・住宅要件・期限・必要書類・申告のすべてを満たす必要があります。
どの制度が自分に合っているか、将来の相続まで含めて判断したい場合は、早めに専門家へ相談しましょう。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

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