
著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
死因贈与契約とは、生前に贈与者と受贈者が合意し、贈与者が亡くなったときに財産を渡す契約です。
遺言による遺贈と似ていますが、死因贈与は双方の合意で成立する契約である点が大きく異なります。
この記事では、死因贈与契約の基本、遺贈・生前贈与との違い、契約書の作り方、税金や登記の注意点まで整理します。
・死因贈与契約は、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与です
・遺言と違い、贈与者と受贈者の事前合意が必要です
・口約束でも成立し得ますが、実務では契約書や公正証書で残すことが重要です
・不動産、遺留分、相続税が関係する場合は、契約前に専門家へ確認しましょう
目次
死因贈与契約とは?死亡を条件に財産を渡す契約

生前:贈与者と受贈者が契約する
死亡時:契約の効力が発生する
死亡後:預貯金・不動産などを契約内容に沿って移転する
死因贈与契約は、「自分が亡くなったら、この財産をあなたに渡す」という内容を、生前に契約として合意しておく方法です。
民法では、贈与は一方が財産を無償で与える意思を示し、相手が受け取る意思を示すことで効力が生じるとされています。さらに、死因贈与については、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与に、性質に反しない限り遺贈の規定を準用すると定められています。条文はe-Gov法令検索「民法」で確認できます。
つまり、死因贈与は名前に「贈与」とついていても、通常の生前贈与とは違い、死亡時に効力が発生する財産承継として考える必要があります。
死因贈与契約は「契約」なので受贈者の承諾が必要
遺言は、遺言者が単独で作成できます。
一方、死因贈与契約は契約であるため、財産を渡す人だけでなく、財産を受け取る人の承諾も必要です。
たとえば、内縁の配偶者、長年介護してくれた親族、事業を引き継ぐ後継者などに特定の財産を渡したい場合、相手と内容を共有したうえで契約できます。
受け取る側も内容を理解しているため、死亡後に「聞いていなかった」というズレを減らしやすい点が特徴です。
負担付死因贈与契約にすることもできる
死因贈与契約では、財産を渡す代わりに、受贈者へ一定の負担を求めることがあります。
これを負担付死因贈与契約といいます。
たとえば、「生前の介護をしてくれたら自宅を渡す」「死亡後にペットの世話をしてくれたら預貯金の一部を渡す」といった設計です。
ただし、負担の内容が曖昧だと後日の争いになりやすいため、何を、いつまで、どの程度行うのかを契約書に具体的に書く必要があります。
死因贈与契約・遺贈・生前贈与の違い

死因贈与契約を検討するときは、遺言による遺贈や生前贈与との違いを先に整理しておくことが大切です。
上位記事でも比較表が多く使われており、読者が最初に知りたいポイントになっています。
| 比較項目 | 死因贈与契約 | 遺贈 | 生前贈与 |
|---|---|---|---|
| 成立方法 | 双方の合意 | 遺言者の単独行為 | 双方の合意 |
| 効力発生時期 | 贈与者の死亡時 | 遺言者の死亡時 | 贈与実行時 |
| 相手の事前承諾 | 必要 | 不要 | 必要 |
| 主な税金 | 原則として相続税の検討 | 相続税の検討 | 贈与税の検討 |
| 向いている場面 | 相手と合意して確実に残したい | 内容を秘密にしたい | 生前に財産を移したい |
遺贈との違いは「事前合意があるか」
遺贈は遺言書で行うため、受け取る人の承諾がなくても作成できます。
そのため、財産を渡す相手に内容を知られたくない場合や、将来変更する可能性を残したい場合は遺言の方が使いやすいことがあります。
一方、死因贈与契約は受贈者が契約内容を知ったうえで合意します。
相手に一定の協力や負担を求めたい場合、または不動産の仮登記などを検討したい場合は、死因贈与契約の方が合うことがあります。
生前贈与との違いは「いつ効力が出るか」
生前贈与は、贈与者が生きている間に財産を移す方法です。
国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」では、1月1日から12月31日までの1年間に贈与でもらった財産を合計し、基礎控除額110万円を差し引いて贈与税を計算するとされています。
死因贈与契約は死亡によって効力が発生するため、通常の生前贈与とは課税関係が異なります。
税務判断を誤ると、贈与税ではなく相続税の検討が必要だった、ということもあるため注意しましょう。
死因贈与契約が向いているケース

法定相続人以外に渡したい / 特定財産を確実に残したい / 介護などの負担とセットにしたい / 不動産の権利保全を考えたい
死因贈与契約は、すべての相続対策で最優先になる方法ではありません。
ただし、遺言だけでは不安が残る場合や、受贈者と事前に合意しておきたい事情がある場合には有力な選択肢になります。
法定相続人以外の人に財産を渡したい場合
内縁の配偶者、長年支えてくれた友人、事業承継の後継者など、法定相続人ではない人へ財産を渡したい場合に死因贈与契約を検討できます。
法定相続人以外の人は、通常の相続では当然に財産を受け取れません。
そのため、遺言による遺贈か、死因贈与契約で財産承継の根拠を作っておく必要があります。
特定の財産を特定の人へ渡したい場合
自宅、事業用資産、車、バイク、株式など、分けにくい財産を特定の人へ渡したい場合にも検討できます。
SWATSの相談データでも、関係が悪い相続人との遺産分割対立を避けるため、希望する財産を確実に承継する手段として、生前贈与や死因贈与契約を検討する文脈がありました。
ただし、特定の人だけが大きな財産を取得すると、他の相続人の不満や遺留分侵害額請求につながる可能性があります。
介護や見守りなどの負担を契約に入れたい場合
「介護をしてくれた人に自宅を渡したい」「死亡後の供養やペットの世話をお願いしたい」という場合、負担付死因贈与契約が選択肢になります。
この場合は、単に感謝の気持ちを書くのではなく、負担内容を契約条項として具体化することが重要です。
負担が重すぎる、内容が曖昧、履行状況を確認できないといった契約は、後で紛争の原因になりやすいため慎重に設計しましょう。
死因贈与契約のメリット

死因贈与契約のメリットは、贈与者と受贈者の意思を事前にそろえられることです。
死亡後の財産承継について、生前のうちに話し合い、書面で残せる点に実務上の意味があります。
| メリット | 実務上の効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相手と事前合意できる | 死亡後の認識違いを減らせる | 内容を相手に秘密にはできない |
| 負担を付けられる | 介護・見守り・供養などを条件化できる | 負担内容は具体的に書く |
| 不動産の仮登記を検討できる | 将来の権利保全につながる | 登録免許税や書類準備が必要 |
受贈者が内容を理解したうえで準備できる
遺言による遺贈では、受贈者が死亡後に初めて内容を知ることがあります。
死因贈与契約では、受贈者があらかじめ内容を理解できるため、死亡後の手続きや納税資金の準備をしやすくなります。
特に不動産を受け取る場合は、登記、固定資産税、管理費、相続税などを事前に見込んでおくことが大切です。
契約書に執行者を定めると手続きが進めやすい
死因贈与契約では、死亡後に契約内容を実現する人を定めておくことが重要です。
不動産の名義変更などでは、相続人全員の協力が必要になる場面があります。
契約書で執行者を指定しておくと、死亡後の手続きを進めやすくなる可能性があります。
契約書作成や資料整理をまとめて進めたい方へ
死因贈与契約は、契約書だけを作れば終わりではありません。
相続税、遺留分、不動産登記、他の相続人との関係まで含めて確認する必要があります。
生前対策では、相続発生前の契約書作成、税務、登記、遺留分の確認をまとめて相談できます。
死因贈与契約の注意点とデメリット

撤回できるか / 遺留分を侵害しないか / 相続税がかかるか / 不動産取得時の税負担は重くないか
死因贈与契約にはメリットがある一方で、注意点も多くあります。
特に、他の相続人との関係、不動産の税金、契約の撤回可能性は、契約前に確認しておきたいポイントです。
遺留分侵害額請求の対象になる可能性がある
死因贈与契約で特定の人に多くの財産を渡すと、配偶者や子などの相続人が持つ遺留分を侵害することがあります。
遺留分を侵害された相続人は、受贈者に対して金銭の支払いを求める可能性があります。
契約自体を作る前に、財産全体の評価額、法定相続人、遺留分の目安を確認しておきましょう。
不動産では登録免許税や不動産取得税に注意する
不動産を死因贈与する場合、相続や遺贈と比べて登録免許税や不動産取得税の負担が重くなることがあります。
また、仮登記を行う場合にも費用や必要書類が発生します。
自宅や収益不動産を対象にする場合は、契約書の内容だけでなく、登記費用と税負担まで試算してから判断することが大切です。
負担付死因贈与は撤回しにくくなることがある
死因贈与は、遺贈の規定が準用されるため、撤回の可否が問題になります。
特に負担付死因贈与で、受贈者がすでに介護や見守りなどの負担を履行している場合、あとから一方的に撤回できるかが争点になりやすいです。
将来の事情変更に備えて、撤回、解除、負担不履行時の扱いを契約書に明記しておきましょう。
死因贈与契約書の作り方と必須項目

死因贈与契約は口約束でも成立し得ますが、死亡後に証明する必要があるため、実務では契約書を作成するのが基本です。
民法では、書面によらない贈与は解除できるとされているため、契約内容を安定させる意味でも書面化は重要です。
| 項目 | 書く内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 当事者 | 贈与者・受贈者の氏名、住所、生年月日 | 本人確認書類と一致させる |
| 対象財産 | 預貯金、不動産、株式などを具体的に特定 | 不動産は登記事項証明書どおりに書く |
| 効力発生 | 贈与者の死亡により効力が発生する旨 | 生前贈与と混同しない |
| 負担の有無 | 介護、見守り、供養などの条件 | 内容・期間・範囲を具体化する |
| 執行者 | 死亡後に手続きを進める人 | 不動産では特に重要 |
| 署名押印 | 当事者双方の署名・押印 | 実印と印鑑証明書も検討する |
契約書は公正証書にすると証明しやすい
死因贈与契約書は私文書でも作成できますが、高額な財産や不動産が関係する場合は公正証書化も検討しましょう。
公証人が関与することで、契約の存在や当事者の意思を後から説明しやすくなります。
また、不動産の仮登記や死亡後の本登記を見据える場合、公正証書で作成しておくことで手続きが進めやすくなることがあります。
未成年者が受贈者になる場合は法定代理人の関与が必要
受贈者が未成年者の場合、単独で契約を結ぶことは難しいため、親権者など法定代理人の同意や関与が必要になります。
未成年の子や孫に財産を渡したい場合は、受贈者本人の将来だけでなく、親権者との利益相反がないかも確認しましょう。
契約書には、受贈者本人と法定代理人の関係を明確に記載しておくことが大切です。
死因贈与契約にかかる税金と相続税申告の注意点

死因贈与は、死亡によって効力が発生するため、税務上は相続税の検討が中心になります。
国税庁「贈与者が贈与をした年に死亡した場合の贈与税及び相続税の取扱い」では、相続財産を取得する場合は贈与税ではなく相続税の課税対象になるケースが示されています。
死因贈与契約でも、相続財産全体、受贈者の立場、過去の贈与、相続時精算課税の有無などを整理する必要があります。
相続税の基礎控除を超えると申告が必要になる
相続税は、相続財産の総額が基礎控除額を超えるかどうかで申告要否を判断します。計算の全体像は、国税庁「相続税の計算」でも確認できます。
相続税の基礎控除額は、一般に「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
死因贈与で財産を受け取る人が法定相続人以外であっても、相続税の課税価格や申告要否に影響する可能性があります。
財産評価に不動産や非上場株式が含まれる場合は、早めに専門家へ確認しましょう。
生前贈与と組み合わせる場合は税制改正にも注意する
死因贈与契約だけでなく、生前贈与も併用する場合は、暦年課税や相続時精算課税の取扱いも確認が必要です。
2024年以降は生前贈与の相続財産への加算期間など、贈与と相続をまたぐ税務判断がより重要になっています。
「毎年の贈与は110万円以下だから問題ない」と単純に考えず、相続時にどの財産がどのように加算されるかを確認しましょう。
死因贈与契約後から死亡後までの流れ

1. 財産と相続人を確認する
2. 契約内容を設計する
3. 契約書または公正証書を作る
4. 必要に応じて仮登記をする
5. 死亡後に相続税申告・名義変更を進める
死因贈与契約は、作成した時点で安心して終わりではありません。
契約後も、財産内容や家族関係が変われば見直しが必要です。
死亡後には、契約内容に沿って財産移転、相続税申告、不動産登記などを進めます。
契約前に財産一覧と相続人関係を整理する
まずは、預貯金、不動産、有価証券、保険、借入金などを一覧化します。
そのうえで、法定相続人、遺留分、過去の贈与、相続税の見込みを確認します。
この整理をせずに特定の財産だけを契約で動かすと、後から他の相続人との公平性や納税資金で問題になることがあります。
死亡後は契約書と必要書類をもとに手続きを進める
贈与者が亡くなった後は、死亡の事実を証明する戸籍関係書類、死因贈与契約書、不動産資料、金融機関の書類などを準備します。
不動産が対象の場合は、所有権移転登記や仮登記から本登記への移行を検討します。
同時に、相続税申告が必要かどうかも確認しましょう。相続税申告については「相続税の基礎控除額の計算方法と適用ルール」でも詳しく紹介しています。
死因贈与契約に関するよくある質問

最後に、死因贈与契約でよくある質問を整理します。
契約前に疑問をつぶしておくことで、後日の相続トラブルを避けやすくなります。
死因贈与契約は口約束でも有効ですか?
口約束でも成立する可能性はあります。
ただし、死亡後に贈与者本人へ確認できないため、受贈者が契約の存在や内容を証明するのは非常に難しくなります。
実務では、契約書を作成し、公正証書化も検討するのが安全です。
死因贈与契約はあとから撤回できますか?
死因贈与には遺贈の規定が準用されるため、撤回できるかが問題になります。
通常の死因贈与では撤回が認められる余地がありますが、負担付死因贈与で受贈者がすでに負担を履行している場合は、撤回が争いになることがあります。
契約時に、撤回や解除の条件を明確にしておくことが大切です。
死因贈与契約で受け取った財産には贈与税がかかりますか?
死因贈与は死亡によって効力が発生するため、一般的な生前贈与のように贈与税だけで考えるものではありません。
相続税の課税対象として検討する必要があります。
ただし、過去の生前贈与や相続時精算課税の利用状況によって判断が変わるため、契約前後の税務整理が重要です。
遺言書と死因贈与契約はどちらを選ぶべきですか?
内容を相手に秘密にしたい、将来変更しやすくしたい場合は遺言が向くことがあります。
一方、受贈者と事前に合意したい、介護などの負担を契約に入れたい、不動産の仮登記を検討したい場合は死因贈与契約が候補になります。
どちらがよいかは、家族構成、財産内容、遺留分、税金によって変わります。
死因贈与契約と相続税・登記の判断に不安がある場合は早めに相談する

死因贈与契約は、契約書の文面だけでなく、相続税、遺留分、不動産登記、他の相続人との関係まで影響します。
法定相続人以外へ財産を渡す、介護の負担を条件にする、不動産を対象にする、相続税申告が必要になりそうといった場合は、早めに専門家へ相談すると安心です。
死因贈与契約を含む生前対策をまとめて相談したい場合は、生前対策もあわせてご確認ください。
まとめ

契約で残す必要があるか / 遺言で足りるか / 税金と登記費用を試算したか / 遺留分トラブルを避けられるか
死因贈与契約は、生前に贈与者と受贈者が合意し、贈与者の死亡によって財産を渡す契約です。
遺言による遺贈と違い、受贈者の事前承諾が必要で、負担付契約や不動産の権利保全を検討できる点に特徴があります。
一方で、遺留分、相続税、不動産取得時の税金、契約の撤回可能性など、注意すべき論点も少なくありません。
契約書を作る前に、財産全体と相続人関係を整理し、遺言や生前贈与と比較しながら最適な方法を選びましょう。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

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