
著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
相続税の制度改正は、基礎控除や税率だけでなく、生前贈与、不動産評価、事業承継、教育資金贈与などにも影響します。
特に近年は、相続開始前の贈与を相続財産に加算する期間の延長や、相続時精算課税制度の使い勝手の見直しなど、生前対策に直結する改正が続いています。
この記事では、相続税制度改正の全体像、2024年以降に押さえるべき贈与税改正、2026年度税制改正大綱で確認したい資産課税のポイントを整理します。
上位記事で扱われている論点と、財務省・国税庁の公的情報をもとに、今後の相続税対策で見直すべき点まで解説します。
・2024年から暦年贈与の相続財産への加算期間が段階的に3年から7年へ延長されています
・2024年から相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が設けられました
・2026年度税制改正大綱では教育資金一括贈与の非課税措置終了や納税猶予制度の延長が示されています
・不動産や高額資産を使った相続税対策は、評価方法の見直しで効果が変わる可能性があります
目次
相続税制度改正で押さえるべき全体像

相続税の制度改正は、毎年の税制改正大綱や法令改正によって見直されます。
相続税だけを単独で見るのではなく、贈与税、不動産評価、登録免許税、事業承継税制など、相続に関連する制度全体を確認することが重要です。
上位記事でも、過去の相続税改正を年度別に整理し、直近の改正では生前贈与と不動産評価に重点を置いて解説する構成が多く見られます。
相続税の負担を正しく把握するには、現時点の制度だけでなく、適用開始時期や経過措置も確認しましょう。
| 確認する制度 | 主な改正テーマ | 相続対策への影響 |
|---|---|---|
| 相続税 | 基礎控除、税率、特例、評価方法 | 申告要否や税額が変わる |
| 贈与税 | 暦年贈与、相続時精算課税、非課税制度 | 生前贈与の設計が変わる |
| 不動産評価 | マンション、貸付用不動産、小口化商品 | 節税効果や評価額が変わる |
| 事業承継税制 | 納税猶予、計画提出期限、要件緩和 | 会社・個人事業の承継計画に影響する |
制度改正は「いつから適用されるか」が重要
相続税制度改正では、改正内容そのものだけでなく、いつ以後の相続や贈与に適用されるかが重要です。
たとえば、2024年の贈与税改正は令和6年1月1日以後の贈与から適用されるものがあり、相続開始日によって加算対象期間も段階的に変わります。
「改正された」と聞いても、すぐに全員へ同じ影響が出るとは限らないため、適用開始日と経過措置を必ず確認しましょう。
上位記事で共通する構成と本記事での整理

上位記事では、単に最新改正だけを紹介するのではなく、過去の大きな改正から直近の制度変更までを時系列で整理しています。
そのうえで、読者が実際に影響を受けやすい「生前贈与」「不動産評価」「納税猶予」の論点を詳しく解説しています。
本記事でも同じ流れを踏まえ、まず制度改正の全体像を示し、次に2024年改正と2026年度大綱のポイントを比較表で整理します。
| 上位記事の主な扱い | 本記事で補強する内容 | 読者が確認すべきこと |
|---|---|---|
| 過去改正を年度別に整理 | 2024年以降の実務影響に絞って整理 | 自分の相続・贈与時期に適用されるか |
| 贈与加算期間と精算課税を解説 | 暦年課税と精算課税の違いを表で比較 | どちらの制度を選ぶべきか |
| 2026年度大綱の不動産評価を解説 | 貸付用不動産と不動産小口化商品を分けて整理 | 保有資産に該当するか |
| 専門家相談への導線 | 制度改正後に見直す手順を提示 | 早めに試算・資料整理を始めること |
公的情報は財務省・国税庁で確認する
税制改正の正式な内容は、財務省の「税制改正の大綱」や国税庁のタックスアンサーで確認できます。
2026年度の資産課税については、財務省「令和8年度税制改正の大綱(資産課税)」に、教育資金贈与の非課税措置終了や納税猶予制度の延長が示されています。
また、贈与加算期間や相続時精算課税制度は、国税庁「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」や「相続時精算課税の選択」も確認しましょう。
2024年改正:生前贈与のルール変更を確認

2024年以降の相続税対策で特に重要なのが、生前贈与に関する改正です。
暦年贈与では、相続開始前の贈与を相続財産に加算する期間が段階的に3年から7年へ延長されます。
一方、相続時精算課税制度には年間110万円の基礎控除が新設され、制度の使い勝手が改善されました。
ただし、相続時精算課税制度は一度選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻れません。制度選択は慎重に行う必要があります。
| 制度 | 改正前の主な扱い | 2024年以降の主な扱い | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 暦年贈与 | 相続開始前3年以内の贈与を加算 | 段階的に相続開始前7年以内へ延長 | 延長された4年間分は総額100万円まで加算対象外 |
| 相続時精算課税 | 2,500万円の特別控除が中心 | 年間110万円の基礎控除を新設 | 一度選択すると暦年課税へ戻れない |
| 贈与税申告 | 制度ごとの条件に従う | 精算課税の特別控除を使うには期限内申告が必要 | 初回選択時の届出漏れに注意 |
暦年贈与は「早めに始める」重要性が高まった
国税庁の説明では、令和6年1月1日以後の暦年課税による贈与について、加算対象期間が相続開始前7年以内になります。
ただし、相続開始日によって段階的に期間が変わるため、すぐに全員が7年加算になるわけではありません。
加算期間が伸びたことで、亡くなる直前の贈与だけで相続税を下げる対策は効果が弱まり、長期的な贈与計画がより重要になりました。
相続時精算課税は使いやすくなったが選択に注意
国税庁「相続時精算課税の選択」では、令和6年1月1日以後の贈与について、相続時精算課税に係る基礎控除額110万円を控除できることが示されています。
毎年110万円の基礎控除があるため、一定のケースでは活用しやすくなりました。
一方で、同じ贈与者からの贈与は一度選択すると暦年課税に戻れません。将来の財産額、贈与予定、相続人構成を踏まえて判断しましょう。
2026年度税制改正大綱で確認したい資産課税のポイント

2026年度税制改正大綱では、資産課税として教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置、事業承継に関する納税猶予制度、登録免許税の軽減措置などが扱われています。
財務省の大綱では、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、令和8年3月31日までの期限を延長しないことが示されています。
教育資金や事業承継に関する制度を使う場合は、現在利用できる制度、経過措置、提出期限を必ず確認しましょう。
| 項目 | 2026年度大綱での方向性 | 確認すべき人 |
|---|---|---|
| 教育資金一括贈与 | 令和8年3月31日までの期限は延長されない | 過去に制度を利用した人、教育資金贈与を検討していた人 |
| 個人版事業承継税制 | 個人事業承継計画の提出期限を2年6か月延長 | 個人事業用資産を後継者へ承継したい人 |
| 法人版事業承継税制 | 特例承継計画の提出期限を1年6か月延長 | 非上場株式を後継者へ承継したい経営者 |
| 医業・農地等の納税猶予 | 期限延長や所要の見直し | 医療法人・農地等の承継を検討する人 |
教育資金の一括贈与は期限経過後の扱いに注意
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、一定の条件のもとで教育資金をまとめて非課税贈与できる制度です。
2026年度税制改正大綱では、令和8年3月31日までとされている信託等可能期間を延長せず、同日までに拠出された金銭等については引き続き適用できることとされています。
2026年8月時点では、すでに期限が経過しています。過去に制度を利用している場合は、管理残額や終了時の課税関係も含めて確認しましょう。
不動産評価の見直しで相続税対策はどう変わる?

上位記事で大きく扱われているのが、2026年度税制改正大綱に関連する貸付用不動産や不動産小口化商品の評価見直しです。
財務省のHTML概要では詳細が簡略化されていますが、上位記事では、令和9年1月1日以後の相続等を見据えた不動産評価の見直しとして整理されています。
収益物件や不動産小口化商品を使った相続税対策は、従来の評価差に依存しすぎると、改正後に想定どおりの効果が出ない可能性があります。
| 対象 | 見直しの方向性 | 対策上の注意点 |
|---|---|---|
| 貸付用不動産 | 相続開始前等5年以内に取得した一定の物件は通常の取引価額に近い評価へ | 直前対策としての効果が弱まる可能性 |
| 不動産小口化商品 | 取得時期にかかわらず通常の取引価額に近い評価へ | 節税目的だけで購入すると期待外れになりやすい |
| 既存の収益物件 | 取得時期や経過措置の確認が必要 | 保有資産ごとに適用有無を確認する |
不動産対策は節税だけで判断しない
不動産は相続税評価額だけでなく、収益性、空室リスク、修繕費、遺産分割のしやすさも考える必要があります。
制度改正によって評価差が縮小する場合、節税目的だけで取得した不動産は、期待した効果を得にくくなる可能性があります。
不動産を使った相続対策は、評価・分割・納税資金の3点をセットで確認しましょう。
相続税制度改正の影響を受けやすい人・財産

相続税制度改正の影響は、すべての家庭に同じように出るわけではありません。
財産の種類、贈与の有無、相続人の数、事業承継の予定によって、確認すべき改正点は変わります。
特に、相続税の基礎控除を超える財産がある人、不動産や非上場株式を持つ人、子や孫へ継続的に贈与している人は、早めに制度改正の影響を確認しましょう。
| 該当しやすい人 | 影響を受ける改正 | 早めに行うこと |
|---|---|---|
| 毎年贈与をしている人 | 暦年贈与の加算期間延長 | 贈与履歴と相続開始時期のリスクを整理 |
| 相続時精算課税を検討している人 | 110万円基礎控除の新設 | 暦年課税と比較して選択する |
| 収益物件を購入予定の人 | 貸付用不動産の評価見直し | 取得時期と評価方法を確認 |
| 自社株・事業用資産がある人 | 納税猶予制度の期限延長 | 承継計画の提出期限を確認 |
基礎控除を超える家庭は制度改正の影響が大きい
相続税は、遺産総額が基礎控除額を超える場合に申告・納税が問題になります。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
不動産評価や生前贈与の扱いが変わると、課税価格が変わる可能性があります。基礎控除に近い家庭ほど、制度改正による申告要否の変化にも注意が必要です。
制度改正後に見直したい相続税対策

制度改正後の相続税対策では、以前と同じ方法を続けるだけでは不十分な場合があります。
特に、暦年贈与、相続時精算課税、不動産購入、事業承継税制は、改正内容によって有利不利が変わります。
まずは現時点の財産を棚卸しし、相続税の概算額を確認したうえで、どの制度を使うかを検討しましょう。
- 財産一覧を作成し、不動産・預貯金・有価証券・保険・借入金を整理する
- 相続税の基礎控除額と概算税額を試算する
- 過去の生前贈与の金額・日付・相手を確認する
- 暦年贈与と相続時精算課税のどちらが適しているか比較する
- 不動産や事業承継がある場合は、専門家に評価・期限を確認する
生前贈与は記録と長期計画が重要
贈与加算期間が延長されたことで、生前贈与は「とりあえず毎年110万円を渡す」だけでは不十分になっています。
誰に、いつ、いくら、どの財産を贈与したのかを記録し、贈与契約書や振込記録などの証拠を残すことが重要です。
相続税の節税だけでなく、家族間の公平性や遺産分割のしやすさも考慮しましょう。
制度改正のたびに試算を更新する
相続税対策は一度決めたら終わりではありません。
財産額、家族構成、税制、評価方法が変われば、最適な対策も変わります。
特に高額な不動産や自社株がある場合は、年1回程度の見直しを行い、制度改正に合わせて計画を修正することをおすすめします。
相続税制度改正に関するよくある質問

相続税の制度改正は毎年ありますか?
税制改正は毎年検討されますが、相続税や贈与税に大きな影響がある改正が毎年必ず行われるわけではありません。
ただし、資産課税の項目には、贈与税、不動産評価、事業承継税制、登録免許税などが含まれるため、毎年確認する価値があります。
2024年改正で生前贈与は使えなくなりましたか?
生前贈与が使えなくなったわけではありません。
ただし、暦年贈与の加算期間が段階的に7年へ延長されるため、相続直前の贈与だけで相続税を下げる効果は弱まりました。
今後は早めに計画し、相続時精算課税制度との比較も行うことが重要です。
制度改正で相続税額は必ず増えますか?
必ず増えるとは限りません。
相続税額への影響は、財産の種類、贈与の有無、相続人の数、特例の適用可否によって変わります。
たとえば、相続時精算課税制度の110万円基礎控除は、使い方によっては有利に働く場合があります。
どのタイミングで専門家に相談すべきですか?
財産が基礎控除を超えそうな場合、不動産や自社株がある場合、すでに生前贈与をしている場合は、早めの相談がおすすめです。
相続発生後よりも、生前に相談したほうが選べる対策が多くなります。
相続税制度改正への対応に不安がある場合は早めに相談する

相続税制度改正は、条文や大綱を読むだけでは、自分の家庭にどの程度影響するか判断しにくいことがあります。
特に、生前贈与、不動産評価、事業承継、納税資金の準備は、家族構成や財産内容によって結論が変わります。
制度改正を踏まえた相続対策では、まず現状の財産を整理し、相続税の概算額を試算したうえで、実行する対策を選ぶことが大切です。
生前対策は早いほど選択肢が多い
相続発生後にできることは限られます。
一方、生前であれば、贈与、遺言、生命保険、不動産の整理、納税資金の準備など、複数の対策を組み合わせられます。
制度改正でルールが変わる前に、自分の財産にどの制度が関係するかを確認しておきましょう。
まとめ

相続税制度改正では、相続税だけでなく、贈与税、不動産評価、事業承継税制など、複数の制度が影響します。
2024年改正では、暦年贈与の加算期間延長と相続時精算課税制度の110万円基礎控除が重要なポイントです。
2026年度税制改正大綱では、教育資金の一括贈与に係る非課税措置の期限を延長しないことや、納税猶予制度の期限延長などが示されています。
また、貸付用不動産や不動産小口化商品を使った相続税対策は、今後の評価見直しに注意が必要です。
制度改正への対応は、早めの財産整理と試算から始まります。相続税の負担や生前対策に不安がある場合は、専門家に相談しながら、家族に合った対策を検討しましょう。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

相続の概要や今後の流れをわかりやすくご説明します。相談は15分程度で全国どこからでもご参加可能です。
まずはお気軽に、お電話またはWebフォームにてお申し込みください。







