相続放棄の失敗事例
更新日:2025年11月12日(最新法令・制度を反映)
家族の意向で相続放棄を選んだ結果、思わぬトラブルに発展
あるご家庭で、父親が亡くなり、相続人は妻と成人した子ども2人でした。
相続財産は、持ち家・預金500万円・生命保険金3,000万円(受取人:父)です。
家族の話し合いの結果、子どもたちは「母にすべての遺産を譲りたい」と考え、相続放棄の手続きを選びました。しかし、この判断が大きなトラブルの原因となりました。
相続放棄後に新たな相続人が現れる仕組み
民法の定めにより、相続が発生した際の法定相続人の順位は以下の通りです。
- 第1順位:子
- 第2順位:直系尊属(両親など)
- 第3順位:兄弟姉妹
また、配偶者は常に相続人となり、上記の順位に応じて分配割合が決まります(民法第890条~第889条)。今回のケースでは、子ども2人が相続を放棄したため、第2順位の親がいない場合には、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。
結果的に、母親とともに父の兄弟3人が新たに相続人となってしまったのです。
想定外の遺産分割請求
父の兄弟が自分たちが法定相続人になったことを知ると、遺産分割を要求しました。
法定相続分に基づくと、配偶者は2分の1、兄弟姉妹3人で残り2分の1を分ける形になります(民法第900条)。
その結果、母親は生命保険金のうち約2,000万円を兄弟の相続分として支払う必要が生じました。「母にすべて残すために相続放棄をした」という本来の意図とは、まったく異なる結果となったのです。
相続放棄を自己判断で行うリスク
相続放棄は、一見シンプルに思えても、次順位の相続人への影響を十分に理解せずに行うと、今回のようなトラブルにつながります。民法上の仕組みや法定相続分を踏まえたうえで、専門家(弁護士・司法書士・税理士など)に相談することが重要です。
「母にすべてを残したい」と思う場合でも、遺産分割協議書の作成や遺言書の活用など、他の安全な方法が存在します。
相続放棄を検討する際は、必ず専門家の助言を受けたうえで進めることをおすすめします。

資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。
登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。














































