
著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
成年後見の種類は、大きく分けると「任意後見」と「法定後見」の2つです。
さらに法定後見は、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類に分かれます。
どの制度を使うべきかは、本人の判断能力がどの程度あるか、どの法律行為を支援したいかによって変わります。
この記事では、成年後見制度の種類、後見・保佐・補助の違い、相続手続きで成年後見が必要になるケースまでわかりやすく解説します。
・成年後見制度は任意後見と法定後見に分かれます
・法定後見は、判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助を使い分けます
・任意後見は、本人に判断能力があるうちに契約して将来に備える制度です
・相続手続きでは、遺産分割協議や不動産売却のために成年後見が必要になることがあります
目次
成年後見の種類は大きく「任意後見」と「法定後見」に分かれる

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でない方を法律的に支援する制度です。
裁判所の案内でも、成年後見制度には補助・保佐・後見・任意後見があると整理されています。
まずは「将来に備える制度」なのか、「すでに判断能力が低下した後に使う制度」なのかで分けると理解しやすくなります。
制度の概要は裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」でも確認できます。
| 種類 | 利用するタイミング | 対象となる人 | 支援する人 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 任意後見 | 判断能力があるうち | 将来に備えたい人 | 任意後見人 | 本人が契約で選ぶ。任意後見監督人の選任後に効力が発生 |
| 後見 | 判断能力が低下した後 | 判断能力が欠けているのが通常の状態の人 | 成年後見人 | 広い代理権・取消権がある |
| 保佐 | 判断能力が低下した後 | 判断能力が著しく不十分な人 | 保佐人 | 重要な法律行為への同意権・取消権が中心 |
| 補助 | 判断能力が低下した後 | 判断能力が不十分な人 | 補助人 | 申立てで定めた範囲で支援する |
任意後見は判断能力があるうちに備える制度
任意後見は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来支援してくれる人と契約しておく制度です。
本人が信頼できる人を選び、どのような財産管理や契約手続きを任せたいかをあらかじめ決められる点が特徴です。
ただし、契約を結んだだけで直ちに任意後見が始まるわけではありません。
本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときに効力が生じます。
法定後見は判断能力が低下した後に利用する制度
法定後見は、本人の判断能力がすでに不十分になった後に、家庭裁判所へ申し立てて利用する制度です。
本人の状態に応じて、後見・保佐・補助のいずれかが選ばれます。
任意後見のように本人が自由に後見人を決める制度ではなく、家庭裁判所が事案に応じて成年後見人等を選任します。
関連する判断ポイントは、任意後見制度でも詳しく解説しています。
>生前対策や相続対策の全体像を確認したい場合は、生前対策・相続対策の全体ガイドも参考になります。
法定後見の3種類|後見・保佐・補助の違い

法定後見は、本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3種類に分かれます。
名称が似ているため混同しやすいですが、支援の範囲や権限は大きく異なります。
制度を選ぶときは、本人がどの程度自分で契約や財産管理を判断できるかを中心に考えます。
| 項目 | 後見 | 保佐 | 補助 |
|---|---|---|---|
| 判断能力 | 欠けているのが通常 | 著しく不十分 | 不十分 |
| 支援者 | 成年後見人 | 保佐人 | 補助人 |
| 主な権限 | 広い代理権・取消権 | 重要な法律行為への同意権・取消権 | 申立てで認められた範囲 |
| 向いているケース | 日常的な契約判断が難しい | 不動産売却や借入など重要行為が不安 | 一部の手続きだけ支援が必要 |
後見は判断能力を欠くのが通常の状態で利用する
後見は、本人が財産管理や契約内容を判断することが難しく、判断能力を欠くのが通常の状態にある場合に利用します。
成年後見人には、本人に代わって契約をしたり、本人が行った法律行為を取り消したりする広い権限があります。
本人の保護を強く図れる一方で、家庭裁判所の監督のもとで慎重に財産管理を行う必要があります。
保佐は判断能力が著しく不十分な場合に利用する
保佐は、本人が日常的な判断はある程度できるものの、重要な財産行為を一人で行うには不安が大きい場合に利用します。
保佐人には、民法13条1項に定められた重要な法律行為について同意権や取消権が認められます。
たとえば、不動産の売却、借入、保証、相続の承認・放棄、遺産分割などは重要な法律行為に含まれます。
民法13条の内容はe-Gov法令検索「民法」で確認できます。
補助は判断能力が不十分な場合に必要な範囲で利用する
補助は、本人の判断能力に不安はあるものの、後見や保佐ほど広い支援までは必要ない場合に利用します。
補助人の権限は、申立てで認められた特定の行為に限られます。
本人の自己決定をできるだけ尊重しながら、必要な範囲だけ支援を受けたいケースに向いています。
成年後見人・保佐人・補助人にできること

成年後見制度では、支援する人の名称だけでなく、できることの範囲も異なります。
特に相続手続きでは、誰にどの権限があるかを誤ると、遺産分割協議や不動産売却が進められないことがあります。
ここでは、成年後見人・保佐人・補助人の権限を整理します。
後見人は広い代理権と取消権を持つ
成年後見人は、本人に代わって財産管理や契約などの法律行為を行う広い代理権を持ちます。
また、本人が行った法律行為を取り消せる場合もあります。
ただし、結婚、離婚、養子縁組、遺言書の作成など、本人の意思が特に重視される行為を成年後見人が代わりに行うことはできません。
保佐人は重要な法律行為への同意権・取消権が中心
保佐人の基本的な役割は、重要な法律行為について本人を支援することです。
本人が不動産を売却する、借入をする、遺産分割協議をするなどの場面では、保佐人の同意が問題になることがあります。
必要に応じて、家庭裁判所の審判により、特定の法律行為について代理権を付与してもらうこともできます。
補助人は申立てで認められた範囲で支援する
補助人は、最初から広い代理権や同意権を持つわけではありません。
本人の状態や必要な支援内容に応じて、家庭裁判所が認めた範囲で支援します。
そのため、補助は柔軟な制度である一方、どの行為に支援が必要なのかを申立て時に整理しておくことが大切です。
任意後見でできることと注意点

任意後見は、将来の判断能力低下に備えたい方に向いた制度です。
法定後見と違い、本人が判断能力のあるうちに、誰に何を頼むかを契約で決められる点が特徴です。
ただし、任意後見にも開始時期や監督人の選任など、知っておきたい注意点があります。
本人が信頼できる人を選べる
任意後見では、本人が信頼できる家族、親族、専門家などを任意後見受任者として選べます。
財産管理、介護施設との契約、医療・福祉サービスの契約など、将来任せたい内容を契約で定めます。
「自分が元気なうちに、将来の支援者を決めておきたい」という方に向いています。
契約だけでは始まらず任意後見監督人の選任が必要
任意後見契約を結んでも、すぐに任意後見人が活動できるわけではありません。
裁判所の案内でも、任意後見は任意後見監督人が選任されたときから契約の効力が生じるとされています。
本人の判断能力が不十分になった段階で、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てる必要があります。
すでに判断能力が低下している場合は使いにくい
任意後見は、本人が契約内容を理解して契約できることが前提です。
そのため、すでに判断能力が大きく低下している場合は、法定後見を検討することになります。
家族信託や遺言とあわせて備えたい場合は、判断能力が十分なうちに比較検討しておくことが大切です。
家族信託との違いについては「家族信託とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説」も参考になります。
相続手続きで成年後見が必要になるケース

成年後見制度は、相続手続きでも重要になります。
相続人の中に判断能力が十分でない方がいる場合、その方を除いて遺産分割協議を進めることはできません。
相続財産に不動産や預貯金がある場合は、成年後見制度を利用しなければ手続きが止まることがあります。
遺産分割協議をする相続人に判断能力の不安がある
遺産分割協議は、相続人全員が内容を理解し、合意する必要があります。
相続人の中に認知症などで判断能力が十分でない方がいる場合は、成年後見人等の選任が必要になることがあります。
成年後見人を選任せずに進めた遺産分割協議は、後から有効性が問題になるおそれがあります。
遺産分割協議書の作成については「遺産分割協議書の書き方|不動産の記載例とひな形」もあわせてご確認ください。
不動産売却や預貯金解約が必要になる
相続した不動産を売却する、預貯金を解約する、保険金や有価証券の手続きをする場合も、本人の判断能力が問題になります。
本人が契約内容を理解して判断できない場合は、成年後見制度を使って代理権や同意権を整理する必要があります。
特に不動産売却は金額が大きく、本人の利益を守るためにも慎重な手続きが求められます。
相続放棄・限定承認など期限のある判断が必要になる
相続では、相続放棄や限定承認のように期限のある判断が必要になることもあります。
本人に判断能力の不安がある場合、誰がどのように判断し、申立てを進めるのかを早めに整理しなければなりません。
相続放棄などの期限が迫っている場合は、家庭裁判所の手続きと相続実務を同時に確認することが大切です。
成年後見と相続手続きをまとめて整理したい方へ
相続人の判断能力に不安がある場合、成年後見の申立て、遺産分割協議、相続税申告、不動産手続きが同時に関係することがあります。
相続アシストでは、相続手続きの全体像を整理しながら、必要な専門家につなぐ相談ができます。
成年後見制度を利用するときの注意点

成年後見制度は本人を守るための制度ですが、一度始めると自由にやめられる制度ではありません。
また、家族が希望した人が必ず成年後見人等に選ばれるとは限らず、家庭裁判所の判断が入ります。
申立て前に、制度の効果と注意点を整理しておくことが大切です。
申立て後は家庭裁判所の許可なしに取り下げできない
裁判所の案内では、後見・保佐・補助開始等の申立書を提出した後は、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げできないとされています。
「やはり家族だけで進めたい」と思っても、自由に取り下げられるとは限りません。
そのため、申立て前に目的、必要な権限、候補者、費用感を確認しておきましょう。
候補者が必ず選ばれるとは限らない
申立書に家族や親族を候補者として書いても、その人が必ず成年後見人等に選ばれるわけではありません。
裁判所は、本人の財産状況、親族関係、利益相反の有無などを踏まえて、専門職を選任することもあります。
特に遺産分割や不動産売却などで利害が絡む場合は、専門職後見人が選ばれる可能性もあります。
制度は原則として本人が亡くなるか能力が回復するまで続く
成年後見制度は、申立てのきっかけになった手続きが終われば自動で終了する制度ではありません。
裁判所の案内でも、後見等が開始されると、預貯金の解約や遺産分割などの目的が解決した後も、本人の能力が回復するか本人が亡くなるまで続くとされています。
相続手続きのためだけに一時的に使いたいと考えている場合は、制度が継続する点を必ず確認してください。
後見人等の報酬は本人の財産から支払われる
成年後見人等や監督人に報酬が発生する場合、その金額は家庭裁判所が決定し、本人の財産から支払われます。
専門職が選任されると、継続的に報酬が発生することがあります。
費用を含めて検討しないと、制度開始後に家族が負担感を覚えることもあるため、事前に確認しておくと安心です。
成年後見の種類に関するよくある質問

成年後見の種類は、名称が似ているため迷いやすい分野です。
ここでは、任意後見、法定後見、後見・保佐・補助に関するよくある質問を整理します。
後見・保佐・補助は本人や家族が自由に選べますか?
本人や家族が希望を伝えることはできますが、最終的には本人の判断能力の程度や必要な支援内容を踏まえて家庭裁判所が判断します。
希望だけで後見・保佐・補助を自由に選べるわけではありません。
医師の診断書や本人の生活状況、財産管理の必要性などをもとに検討されます。
任意後見と家族信託はどちらを選ぶべきですか?
任意後見は、本人の生活や契約手続きを含めた支援を想定しやすい制度です。
一方、家族信託は財産管理や資産承継を柔軟に設計しやすい制度です。
どちらが適しているかは、身上監護まで必要か、財産管理をどこまで柔軟にしたいかによって変わります。
両方を組み合わせるケースもあります。
成年後見人は遺産分割協議に参加できますか?
成年後見人は、本人に代わって遺産分割協議に関与することがあります。
ただし、成年後見人自身も同じ相続の相続人であるなど、本人との間に利益相反がある場合は、特別代理人など別の手続きが必要になることがあります。
相続人に判断能力の不安がある場合は、遺産分割協議を始める前に専門家へ確認しましょう。
成年後見制度を一度始めたら途中でやめられますか?
原則として、家族の希望だけで途中終了することはできません。
成年後見制度は、本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続くのが基本です。
相続手続きが終わった後も制度が続く点は、申立て前に必ず確認しておきたい重要な注意点です。
成年後見と相続手続きの判断に迷う場合は早めに相談する

成年後見制度は、本人を守るために重要な制度です。
一方で、相続手続き、不動産売却、預貯金解約、相続税申告などと重なると、どの順番で何を進めるべきか判断が難しくなります。
特に、相続人の中に判断能力が十分でない方がいる場合は、成年後見の申立てと相続手続きを同時に整理することが大切です。
相続手続き全体をまとめて確認したい場合は、相続アシストもあわせてご確認ください。
まとめ

成年後見の種類は、大きく任意後見と法定後見に分かれます。
任意後見は本人の判断能力があるうちに契約して将来に備える制度で、法定後見は判断能力が低下した後に家庭裁判所へ申し立てて利用する制度です。
法定後見には後見・保佐・補助があり、本人の判断能力の程度と必要な支援範囲によって使い分けます。
相続手続きでは、遺産分割協議、不動産売却、預貯金解約などで成年後見が必要になることがあるため、早めに状況を整理しましょう。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

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