相続放棄と限定承認
更新日:2025年11月12日
ここでは、相続放棄など、借金を相続しない方法に関して、ご説明いたします。
相続放棄とは、被相続人が財産よりも多くの借金を残して亡くなったような場合に、“財産も借金もどちらも引き継がないと宣言すること”です。
相続放棄を行う場合には、相続人は相続開始を知ってから3ヶ月以内に、管轄の家庭裁判所へ相続放棄の申述をしなければなりません。
よく「相続人間で相続の放棄を約束した」との話を聞きますが、それでは相続放棄したことにはなりません。
相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人が残した財産よりも負債が多い場合などに、
相続人が「財産も借金も一切引き継がない」と裁判所に申述する制度です。
民法第938条および第939条では、
相続の放棄は、相続開始を知ったときから3か月以内に
家庭裁判所へ申述しなければならないと定められています。
家庭内で「相続しない」と話し合っても、
それだけでは法的に相続放棄したことにはなりません。
正式な手続が必要です。
単純承認と限定承認
相続には次の2つの方法があります。
-
単純承認:財産・借金のすべてを承継する方法(民法第921条)。
-
限定承認:相続財産の範囲内でのみ債務を弁済する方法(民法第922条)。
限定承認は、相続人全員の同意が必要です。
債務総額が不明な場合などに選択されることがあります。
3か月経過後の相続放棄
相続放棄の申述期限(熟慮期間)は、
相続人が相続開始を知った日から3か月以内です(民法第915条)。
ただし、相続人が被相続人の保証債務などを後から知った場合は、
その事実を知った日から3か月以内に手続きすれば、
例外的に相続放棄が認められることもあります。
保証債務があった場合
相続を承認した後、あるいは放棄期限経過後に、
被相続人が他人の借金の保証人であったことが判明する場合があります。
この場合、例外的に「新たに債務の存在を知った時点」から
3か月以内であれば相続放棄を認められる可能性があります。
ただし、債権者と争いになる可能性が高いため、弁護士等の専門家への相談が必要です。
相続放棄の失敗事例(注意喚起)
父親が亡くなり、相続人が母と成人した子ども2人だった事例です。
子どもたちは「母にすべてを残したい」と考え、相続放棄を選択しました。
しかし、父親には兄弟が3人おり、
子どもが放棄したことで兄弟が新たな相続人となりました(民法第889条)。
その結果、母と兄弟の間で遺産分割が必要になり、
生命保険金の一部を兄弟へ支払う事態となりました。
このように、相続放棄は「次順位の相続人」に影響を及ぼすため、
自己判断ではなく専門家の助言を受けて行うことが重要です。
相続放棄Q&A(よくある質問)
Q1. 家族間の話し合いで「放棄する」と決めた場合も有効ですか?
A. 無効です。相続放棄は家庭裁判所への申述が必要であり、
家族間の合意や書面では法的効力を持ちません。
Q2. 相続放棄の申述先はどこですか?
A. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申述書の様式や必要書類は法務省サイトで確認できます。
Q3. 相続放棄の費用はいくらかかりますか?
A. 1件につき収入印紙800円分および郵便切手数百円分が必要です(2025年11月時点)。
Q4. 相続放棄をした後に財産を処分してしまった場合は?
A. 財産を処分すると「単純承認」とみなされ、放棄できなくなることがあります(民法第921条)。
遺品整理や口座引き出しも注意が必要です。
Q5. 放棄後に新たな債務が見つかった場合は?
A. 「新たな事実を知った時点」から3か月以内であれば、
再度家庭裁判所に申述できる可能性があります。
ただし、ケースによって判断が異なるため、弁護士に相談してください。

資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。
登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。














































