成年後見制度の種類
成年後見制度の概要
成年後見制度とは、判断能力が不十分な方が財産侵害を受けたり、
人としての尊厳が損なわれたりしないように、
法律面および生活面で支援するための仕組みです。
民法第858条から第876条の10に規定されており、
家庭裁判所の監督のもとで、本人の意思を尊重しながら支援を行います。
成年後見制度には、以下の2つの制度があります。
- 任意後見制度
- 法定後見制度
(1)任意後見制度
任意後見制度とは、将来判断能力が低下した場合に備えて、
本人があらかじめ信頼できる支援者(任意後見人)を選んでおく制度です。
将来の財産管理や身の回りの生活支援について、
「誰に」「どのような支援を頼むか」を自分の意思で決め、
公正証書によって契約内容を明確にしておきます。
この制度の「任意」とは、「自分で決める」という意味を持ちます。
複数の任意後見人を選ぶことも可能であり、
法人(例:公益社団法人リーガルサポートなど)を選任することもできます。
任意後見契約は、本人の判断能力が十分なうちに締結する必要があります。
その後、判断能力が低下した際に、家庭裁判所が監督人を選任し、契約が発効します。
(2)法定後見制度
法定後見制度とは、すでに判断能力が不十分となっている方に対し、
家庭裁判所が後見人・保佐人・補助人などの支援者を選任する制度です。
選任された支援者は、本人の意思を尊重しながら、
財産管理や生活支援を行います。
判断能力の程度に応じて、次の3類型に分類されます。
- 補助:判断能力が不十分な方
- 保佐:判断能力が著しく不十分な方
- 後見:ほとんど判断できない方
家庭裁判所は、医師の診断書や親族の申立内容をもとに、
適切な類型を判断し、支援者を選任します。
成年後見制度の失敗事例(注意喚起)
成年後見制度や財産管理委任契約を、
家族間で安易に運用したことにより発生したトラブル事例もあります。
例えば、親族が財産管理を行う中で預金を私的に使用してしまい、
後に親族間で紛争に発展したケースがあります(具体的金額は不明)。
また、入院中の高齢者が、親族の指示により財産管理委任契約を結び、
不当な報酬設定や不利な遺言書を作成してしまった例も見られます。
このようなケースでは、家庭裁判所の監督が及ばないため、
第三者である司法書士・弁護士などの専門家を後見人に選任することで、
紛争防止につながります。
成年後見制度に関するQ&A
Q1. 家族を後見人にすることは可能ですか?
- 可能です。ただし、親族間では金銭管理をめぐるトラブルが起こりやすいため、
司法書士や弁護士など第三者専門家との併任や監督を推奨します。
Q2. 成年後見人は何をしますか?
- 財産管理(預貯金・不動産・年金など)や生活支援(契約・施設入所手続など)を行います。
本人の意思を最大限尊重し、定期的に家庭裁判所へ報告します。
Q3. 成年後見制度の申立て費用は?
- 家庭裁判所への申立手数料は800円前後、
鑑定費用を含めると約1〜10万円程度が一般的です(2025年11月時点・裁判所基準)。
Q4. 後見人を変更できますか?
- 不正や不適切な行為が認められた場合、
家庭裁判所が後見人を解任・変更することが可能です(民法第848条)。

資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。
登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。














































