

著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
「相続人がいない場合、遺言で何をするのか」と考えたら、いきなり書き始めるのではなく、まず法定相続人の有無を確認します。そのうえで、誰に、どの財産を、どのように渡したいのかを整理し、遺言の方式と実行を担う人を検討します。
この記事の要点
- 子どもがいないだけで相続人がいないとは限らないため、配偶者、親、兄弟姉妹、代襲相続人まで確認します。
- 相続人以外へ財産を残すには、遺言による遺贈を検討します。遺言では、受取人、対象財産、遺言執行者を具体的に整理します。
- 遺言、任意後見、死後事務委任は役割が異なります。生前の財産管理や死後の連絡・事務まで含めて準備します。
目次
相続人がいない場合、遺言でまずすること

最初にすることは、法定相続人が本当にいないのかを確認することです。相続人がいないと思っていても、戸籍を確認すると、親や兄弟姉妹、兄弟姉妹の子が関係する場合があります。
確認後は、誰に、何を、どのように渡したいかを整理します。相続人以外の個人や団体へ財産を残す場合は、遺言で遺贈する方法が選択肢になります。
遺言がない場合の相続財産清算人や国庫帰属は、希望する相手へ確実に財産を渡すための生前準備とは別の仕組みです。相続財産の清算や特別縁故者への分与、残余財産の国庫帰属は、e-Gov法令検索の民法を根拠に個別の手続きとして確認します。希望があるなら、遺言の内容と実行方法を先に検討します。
まず「相続人がいない」状態を確認する

民法上の相続人の範囲は、家族の認識だけでは判断できません。国税庁の相続人の範囲と法定相続分も確認し、実際には戸籍などで身分関係を確かめます。
- 配偶者がいるか
- 子や、先に亡くなった子の子がいるか
- 子がいない場合に、親など直系尊属がいるか
- 親などもいない場合に、兄弟姉妹やその子がいるか
相続人の確認が不十分なまま遺言を作ると、遺留分など別の論点を見落とすことがあります。「相続人がいない」という前提を資料で確認することが出発点です。
遺言で決めたい3つのこと

相続人がいない場合の遺言では、次の3点を分けて整理すると、希望と実務上の作業がつながりやすくなります。
| 整理する項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 受取人 | 個人、団体など、誰に残したいか。氏名・名称や連絡先を確認する。 |
| 対象財産 | 預貯金、不動産、有価証券など、どの財産を対象にするか。 |
| 実行者 | 遺言の内容を実現する遺言執行者を誰に任せるか。 |
遺贈の対象に不動産や負債が含まれる場合、受け取る人の負担や手続きが変わることがあります。遺言の文言だけでなく、財産の一覧と連絡先を更新できる状態にしておくことが大切です。
裁判所には、遺言の内容を実現する「遺言執行者」の選任手続きがあります。指定の有無や、指定した人が就任できない場合の扱いは、裁判所の相続・遺産分割手続案内で確認できます。
遺言書の方式と保管方法を選ぶ

遺言書には方式ごとの要件があります。自筆証書遺言を法務局で保管する制度については、法務省の自筆証書遺言書保管制度で、申請方法や制度の概要を確認できます。
自筆証書遺言書保管制度は、遺言書を保管する制度です。保管されたことだけで、遺言の内容が必ず有効になるわけではありません。法務省も、遺言書の内容に関する相談には応じていないと案内しています。
公正証書遺言を検討する場合は、日本公証人連合会の遺言の案内も参考に、財産の特定、受取人の表示、遺言執行者の指定を準備します。方式を選ぶときは、作成のしやすさだけでなく、内容の確認や保管、後日の実行まで考えます。
遺言だけでは整理しきれないこと

遺言は、主に死亡後の財産の承継を決めるものです。判断能力が低下した後の財産管理や、死亡後の連絡・葬送・契約解約などは、遺言だけで全てを決められるとは限りません。
そのため、遺言と、任意後見・死後事務委任の役割を分けて確認します。任意後見は、本人の判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ任意後見人や委任する事務を決めておく制度です。詳しい手続きは、裁判所の任意後見契約に関する案内で確認できます。
死後事務についても、誰に何を頼むか、連絡先や保管場所をどこに残すかを整理します。遺言で決められることと、別の契約・準備が必要なことを混同しないことが重要です。
よくある質問
Q. 子どもがいなければ、相続人はいないのでしょうか?
子どもがいない場合でも、配偶者、親、兄弟姉妹などが相続人になる可能性があります。戸籍で相続人の範囲を確認してから、遺言の内容を考えます。
Q. 遺言がなければ、財産は必ず国に帰属しますか?
相続人が明らかでない場合は、家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、債務などを清算します。特別縁故者への分与が行われる場合もあり、残った財産の扱いは個別の手続きによります。詳しくは裁判所の相続財産清算人の選任案内を確認します。
Q. 友人や団体に財産を残せますか?
相続人以外の個人や団体に財産を残す方法として、遺贈を遺言に記載することが考えられます。受取人の表示や対象財産、負担の有無によって確認点が変わるため、作成前に内容を整理します。
Q. 遺言を作れば、死後の手続きも全て任せられますか?
遺言執行者の指定は、遺言の内容を実現するための準備です。生前の財産管理や死後の連絡・契約整理は別の検討が必要になることがあるため、役割を分けて確認します。
【実務のご相談】相続人がいない場合に、遺言で何を準備するか迷ったケース

8-1.お客様からのご相談内容
以下は、SWATSに寄せられた相談内容をもとに、個人を特定できないよう整理した内容です。
配偶者や子がおらず、相続人がいない場合に、財産を誰に残せるのか、遺言で何を決めればよいのか知りたいというご相談です。
不動産や預貯金の行き先だけでなく、死後の連絡や手続きも誰に任せるべきか不安があり、生前にできる準備を整理したいと考えられていました。
8-2.専門家の回答
相続人がいない場合は、財産を残したい相手、処分や管理を任せたいこと、連絡してほしい人を分けて整理することが大切です。
遺言で財産の行き先を定める場合でも、対象財産が特定できなければ実現しにくくなります。不動産、預貯金、証券、負債を一覧にして、変更があれば更新します。
遺言執行や死後の事務に関する準備には役割の違いがあるため、希望する内容に応じて専門家に確認し、必要な手続きを検討します。
相続人がいない場合の生前対策を整理したい方へ

相続人の有無、財産の行き先、遺言の方式、判断能力低下後や死亡後の事務を一人で整理しにくい場合は、論点を分けて確認することが大切です。生前対策では、遺言だけに限定せず、財産や家族・関係者の状況に応じて準備の順番を整理します。
資料が揃っていない段階でも、何を確認するかを整理するところから相談できます。具体的な制度の適用や税務・法律上の判断は、必要に応じて専門家への確認が必要です。
まとめ
相続人がいない場合に遺言で何をするか迷ったら、まず法定相続人の有無を確認し、次に受取人、対象財産、遺言執行者を整理します。遺言だけでなく、判断能力低下後の財産管理や死後事務も役割を分けて検討しましょう。
相続人の範囲や遺言の方式、相続財産清算人の手続きは、公的な一次情報を確認しながら、財産と関係者の状況に応じて準備することが大切です。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

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