

著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
実家などの不動産を公正証書遺言で残したいときは、登記事項証明書などの不動産資料だけを先に集めても、遺言原案を固めきれないことがあります。
預貯金や証券も含めて財産の全体像を整理し、誰に何を承継させたいかを確認してから、公証役場との打合せや原案作成に進むことが大切です。
・不動産は登記事項証明書と固定資産税の課税明細などで特定する
・預貯金、証券、保険、負債も同じ財産目録にまとめる
・家族の希望と、誰に何を承継させるかを整理してから原案を作る
・証人、手数料、当日の流れは公証役場へ事前に確認する
目次
公正証書遺言で不動産を残すとき、必要書類は財産別に集める

公正証書遺言の必要書類は、遺言者本人の確認、相続人との続柄、誰に渡すか、どの財産を渡すかを確認できる資料に分けて考えると整理しやすくなります。
不動産がある場合は物件の特定資料が必要ですが、預貯金や証券があるなら、それらも遺言の対象として漏れなく洗い出します。
日本公証人連合会は、遺言者本人の印鑑登録証明書または一定の顔写真付き身分証明書、遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本・除籍謄本を案内しています。
相続人以外へ遺贈する場合は、受け取る人の住所が分かる資料も必要です。詳しい条件は日本公証人連合会「公正証書遺言をするには、どのような資料を準備すればよいでしょうか?」で確認してください。
不動産は登記事項証明書と評価資料で確認する
不動産を相続させる場合、公証人との打合せでは、登記事項証明書と固定資産評価証明書、または固定資産税・都市計画税納税通知書の課税明細書が必要資料として案内されています。
これらは、土地・建物を遺言原案で取り違えずに特定するための基礎資料です。
登記事項証明書の請求では、住居表示ではなく地番・家屋番号が必要になることがあります。
住居表示と一致しない場合もあるため、権利証などで確認する点は法務局の不動産登記に関するQ&Aも参考になります。
預貯金・証券は金融機関や証券会社が分かる資料を残す
預貯金については、通帳または通帳のコピーが必要資料として示されています。通帳がない場合でも、金融機関名・支店名・口座の手がかりになる郵送物や取引画面の控えを、財産目録を作るための資料として集めます。
証券については、証券会社名、口座、保有商品を確認できる取引残高報告書や取引画面の控えなどを整理しておくと、原案を検討しやすくなります。
相続税の対象となり得る財産には、預貯金、有価証券、土地、家屋などが含まれます。
遺言の対象を考える段階でも、不動産だけで終えず、財産全体を確認する理由は国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」で確認できます。
不動産・預貯金・証券を財産目録にまとめる
資料を集めたら、次は財産目録にまとめます。ここでの財産目録は、公正証書遺言の原案を検討するための一覧です。
税額や法的な結論を自分で確定するためのものではなく、見落としを減らし、家族や専門家との確認をしやすくするために使います。
| 財産の種類 | 目録に記録したい事項 | 主な確認資料 |
|---|---|---|
| 土地・建物 | 所在地、地番・家屋番号、名義、共有の有無 | 登記事項証明書、固定資産評価証明書、課税明細書 |
| 預貯金 | 金融機関名、支店名、口座の種類、名義 | 通帳、取引明細、郵送物などの手がかり |
| 証券 | 証券会社名、口座、保有商品の概要 | 取引残高報告書、配当通知、取引画面の控え |
| その他 | 保険、貸付金、借入金、未確認の財産 | 保険証券、契約書、返済予定表など |
不動産は「住所」だけで書かず、資料と照合する
不動産を「実家の土地」「自宅」のように呼ぶだけでは、遺言原案で対象を特定しにくくなります。
登記事項証明書や課税明細に記載された情報を照合し、土地と建物がある場合はそれぞれを確認します。
未確認の財産は空欄にせず、確認中として残す
古い通帳、証券会社からの郵送物、保険の案内などが見つかった場合は、すぐに結論を出せなくても目録の確認中欄に残します。
後から見つかった財産をどう扱うかも原案の論点になるため、分かっている財産と確認中の財産を分けて可視化することが重要です。
財産目録から遺言原案までを固める4ステップ

公正証書遺言の原案は、書類を集めた直後に文章を書き始めるより、財産と希望を整理してから作る方が、確認事項を減らしやすくなります。
次の順番で進めると、不動産・預貯金・証券を一つの承継方針として考えられます。
1. 財産を特定する資料を集める
まず不動産の登記事項証明書と課税明細、預貯金の通帳、証券の取引資料などを集めます。
公証役場へ提出する資料は事案により追加されるため、早い段階で最寄りの公証役場に確認することも大切です。
2. 財産目録を作り、全体像を確認する
集めた資料を一覧にし、不動産以外の金融資産、保険、負債も含めます。
この段階で、何を誰に承継させるか、他の財産で調整できるか、相続税の概算確認が必要かを検討する土台ができます。
3. 誰に何を承継させたいかを整理する
不動産については、住み続ける人、管理する人、売却する可能性、共有を避けたいかなどを整理します。
預貯金や証券も含めて考えることで、不動産だけでは調整しにくい家族間の配分を検討しやすくなります。
4. 原案と公証役場への相談事項を固める
財産の特定資料と承継方針を基に、遺言原案で決めたい内容、未確認の財産、証人の手配、必要書類を整理します。
公正証書遺言は、法定の方式に従い、公証人と証人二人以上の立会いなどのもとで作成する遺言です。方式の詳細はe-Gov法令検索「民法」第969条で確認できます。
証人・公証役場・手数料で確認したいこと

原案を検討したら、証人と公証役場での手続を確認します。
公正証書遺言では、遺言者本人が公証人と証人2名の前で内容を確認する流れが案内されています。
証人になれない人を先に確認する
証人は2名必要です。ただし、未成年者、推定相続人、遺贈を受ける人、これらの人の配偶者や直系血族などは証人になれません。
適切な証人が見つからない場合は、公証役場での紹介について相談できるとされています。詳しくは日本公証人連合会の証人に関する案内を確認しましょう。
手数料は受け取る人ごとの財産価額を基に確認する
公正証書遺言の手数料は、受け取る人ごとに、その人が受け取る財産の価額を基に算定して合算する仕組みです。
全体の財産が1億円以下の場合の遺言加算、交付物や枚数による手数料、出張時の費用などもあるため、財産目録を作ってから公証役場に見積りを確認すると見通しを持ちやすくなります。
手数料の具体的な表と追加費用の扱いは、日本公証人連合会「公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか?」で確認できます。
専門家への原案作成依頼など、公証人手数料以外の費用は依頼内容により異なるため、見積りの対象範囲を分けて確認しましょう。
公正証書遺言と不動産の必要書類に関するよくある質問
Q. 不動産が1件だけなら、預貯金や証券の資料は不要ですか?
遺言で何を対象にするかによりますが、不動産以外に預貯金・証券などがあるなら、先に全体を確認することをおすすめします。
不動産だけを先に決めると、後から見つかった財産を含めた家族間の配分や、相続税の確認がしにくくなることがあるためです。
Q. 登記事項証明書は住所だけで取得できますか?
住居表示と地番・家屋番号は一致しないことがあります。
登記事項証明書を請求する際は、権利証や固定資産税の資料で地番・家屋番号を確認し、分からない場合は法務局へ相談してください。
Q. 家族を証人にしてもよいですか?
誰でも証人になれるわけではありません。推定相続人や遺贈を受ける人などは証人になれないため、候補者を決める前に公証役場へ確認します。
家族が同席できるかを含む当日の運用は、公証役場ごとに事前確認しましょう。
Q. 財産目録が未完成でも公証役場に相談できますか?
未確認の財産があっても、分かっている資料と確認中の項目を分けて整理しておくと、相談時に不足資料を確認しやすくなります。
ただし、実際に必要な資料や原案の内容は事案により異なるため、最寄りの公証役場へ確認してください。
【実務のご相談】公正証書遺言を検討し、不動産の資料整理に迷ったケース

8-1.お客様からのご相談内容
以下は、SWATSに寄せられた相談内容をもとに、個人を特定できないよう整理した内容です。
自宅不動産と預貯金などを誰に残すか決めたいものの、公正証書遺言の作成に必要な資料や、財産をどこまで洗い出すべきか分からないというご相談です。
不動産以外の財産の全体像も十分には把握できておらず、費用や証人のことを含めて、何から準備するべきか迷われていました。
8-2.専門家の回答
公正証書遺言の原案を考える前に、誰に何を残したいかという希望と、対象になる財産を整理します。
不動産は登記事項証明書や固定資産税評価に関する資料、金融資産は通帳や残高資料などを確認し、財産の名称・所在地・内容を一覧にまとめます。
必要資料や手続きの詳細は公証役場への確認が必要です。家族関係、財産、遺言で実現したい内容を整理してから相談すると、原案の検討を進めやすくなります。
不動産を含む生前対策を整理したい方へ

公正証書遺言を検討するときは、書類をそろえるだけでなく、不動産・預貯金・証券を含む財産の全体像と、家族に残したい方針を整理することが重要です。
生前対策では、遺言を含め、財産の棚卸し、相続税の確認、実家不動産の承継方針などを状況に応じて相談できます。
資料が完全にそろっていない段階でも、何を確認するかの整理から始められます。
公正証書遺言だけを先に決めず、家族に合う準備の順番を確認したい方は、生前対策をご覧ください。
まとめ
公正証書遺言で不動産を残すには、登記事項証明書や固定資産税の課税明細だけでなく、預貯金・証券を含む財産目録を作ることが出発点です。
財産を特定し、誰に何を承継させたいかを整理してから、遺言原案、証人、公証役場への相談を進めましょう。
必要書類や方式、手数料は公的一次情報と利用する公証役場で確認し、財産や家族の状況で判断が分かれる点は専門家へ相談することが大切です。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

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