

著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
親の実家や土地を複数の家族で相続するとき、「公平にするため共有名義にしよう」と考えることがあります。
ただし、不動産は現金のように分けにくく、相続後に売却・活用・費用負担を決める場面で意見が分かれることがあります。
不動産の共有を相続前に避けるには、誰が不動産を取得するかと、取得しない家族にどう調整するかを、親が判断できるうちに財産全体で整理することが大切です。
主な方法は、遺言で取得者を明らかにする、生前贈与を検討する、預貯金・保険・代償資金を準備して調整する、という3つです。どれか一つを急いで選ぶのではなく、不動産の利用方針と家族の希望を先に確認しましょう。
・実家や土地を、誰が住む・使う・管理する・取得するのか
・預貯金、保険、株式、債務を含めた財産全体を把握できているか
・不動産を取得しない家族への配分や代償資金を準備できるか
・遺言や生前贈与を選ぶ前に、税金・登記・遺留分を確認したか
目次
相続前に不動産の共有を避けるための考え方

不動産を共有にしないためには、相続が起きてから分け方を決めるのではなく、相続前から「不動産を単独で取得する人」と「他の家族との調整方法」を考えます。
例えば、実家を住み続ける人が取得し、他の家族には預貯金などの別の財産を配分する方法や、代償資金を用意して調整する方法があります。
共有が長く続くと、意思決定の場面が増える
一つの不動産を複数人で共有すると、利用・管理・処分の内容に応じて、共有者の合意が必要になることがあります。共有物に変更を加える行為や管理に関する事項については、e-Gov法令検索の民法で定めがあります。
そのため、売却や賃貸、修繕をする可能性がある不動産ほど、誰が判断を担うのかを相続前から整理しておくことが重要です。
公平さは持分を同じにすることだけでは決まらない
不動産を半分ずつ共有にしても、実際に住む人、管理する人、費用を負担する人が異なれば、負担と利益が一致しないことがあります。
不動産だけを同じ割合で分けるのではなく、他の財産、将来の利用、納税や維持のための資金まで含めて考えると、共有以外の選択肢を検討しやすくなります。
遺言・生前贈与・代償資金をどう使い分けるか

共有を避ける手段には、それぞれ役割と確認すべき点があります。不動産の価値だけで有利不利を決めず、名義を移す時期、家族の希望、税金、資金の準備を併せて確認しましょう。
| 方法 | 主な役割 | 先に確認したいこと |
|---|---|---|
| 遺言 | 相続時に不動産を取得する人を明らかにする | 不動産の特定、他の財産の配分、遺留分への配慮、遺言の方式 |
| 生前贈与 | 親が存命のうちに不動産などの名義を移すことを検討する | 贈与税・相続税、登記費用、贈与後の利用・管理、贈与者の生活資金 |
| 代償資金・他財産の配分 | 不動産を取得しない家族との調整を検討する | 預貯金・保険などの配分、資金を実際に用意できるか、相続税・納税資金 |
遺言で不動産の取得者を明らかにする
遺言では、特定の不動産を誰に取得させるかを記載することを検討できます。遺言による分割方法の指定や遺留分に関する制度は、民法で確認できます。
自筆証書遺言を作成・保管する場合は、方式や法務局の保管制度に関する法務省の案内を確認してください。対象不動産を曖昧にせず、遺言だけでなく他の財産をどう配分するかも一緒に整理します。
生前贈与は「早く名義を移せばよい」とは限らない
生前贈与を行うと、相続前に名義を移すことができます。一方で、贈与税、相続税、登録免許税、不動産取得税、親の生活資金や贈与後の管理など、確認する点が多くあります。
暦年課税による贈与財産の相続税課税価格への加算は、相続開始日などによって対象期間が異なります。詳しくは国税庁の贈与財産の加算に関する案内を確認しましょう。相続時精算課税を検討する場合も、選択後の扱いや届出期限を国税庁のQ&Aで確認したうえで、個別に試算することが必要です。
代償資金と他の財産で調整する
実家を一人が取得する場合、不動産を取得しない家族に預貯金・保険などを配分したり、代償金を支払ったりして調整する方法を検討できます。
このときは、不動産の評価だけでなく、実際に資金を用意できるか、相続税の納税資金を残せるか、家族が分け方に納得できるかを確認します。資金が不足するのに代償分割を前提にすると、共有を避けても別の負担が残るためです。
共有を避けるために相続前から確認したい4項目

遺言や贈与の書類を先に作るよりも、次の4項目を順に整理すると、家族に合う方法を比較しやすくなります。
1. 不動産の名義・資料・利用状況
固定資産税の通知書、登記事項証明書、賃貸借契約書などを確認し、誰の名義か、どの不動産が対象か、誰が住んでいるかを把握します。土地と建物で名義が異なる場合や、既に持分が分かれている場合もあるためです。
2. 不動産以外を含めた財産の棚卸し
預貯金、保険、株式、債務などを含めて財産を一覧にします。不動産を取得しない家族への配分や、代償金・納税資金を検討する土台になります。
3. 家族ごとの希望を分けて確認する
「不動産を欲しいか」だけでなく、「住み続けるか」「管理できるか」「売却に同意できるか」を分けて確認します。取得する人と管理する人が同じとは限らず、希望が整理できていない状態で共有を選ぶと、後の意思決定が難しくなることがあります。
4. 遺言・贈与・資金準備を比較する
上の3項目を整理してから、遺言で単独取得を指定するのか、生前贈与を行うのか、他財産や代償資金で調整するのかを比べます。遺言・贈与・不動産評価・税務の結論は個別事情で変わるため、必要に応じて専門家に確認しましょう。
不動産の共有と相続対策に関するよくある質問
Q. 遺言があれば、必ず不動産の共有を避けられますか?
遺言で不動産の取得者を明らかにすることは、共有を避けるための選択肢の一つです。ただし、遺言の方式、不動産の記載、他の財産の配分、遺留分などを個別に確認する必要があります。遺言に関する制度は民法、自筆証書遺言書保管制度の手続は法務省の案内で確認してください。
Q. 生前贈与をすれば、相続税より必ず有利ですか?
必ず有利とはいえません。贈与の時期や方法、財産の内容、相続開始日などで贈与税・相続税の扱いが変わります。暦年課税の加算対象期間や相続時精算課税の選択後の扱いは、国税庁の案内とQ&Aを確認し、財産全体で試算します。
Q. 代償金を準備できない場合はどう考えますか?
不動産以外の預貯金や保険を配分できるか、売却して代金を分ける選択肢があるか、共有を続ける場合に利用・費用・将来の売却について合意できるかを確認します。代償金を用意できないまま単独取得を決めるのではなく、実行できる分け方を家族の希望と資金状況で検討することが大切です。
Q. 相続後に遺産分割がまとまらない場合、登記はどうなりますか?
相続により不動産を取得したことを知った相続人には、原則として3年以内の相続登記申請義務があります。遺産分割が成立した場合には、その内容に基づく登記についても期限があります。詳しい要件や相続人申告登記は、法務省の相続登記の申請義務化案内で確認してください。
【実務のご相談】不動産の共有を避けるため、相続前の準備に迷ったケース

8-1.お客様からのご相談内容
以下は、SWATSに寄せられた相談内容をもとに、個人を特定できないよう整理した内容です。
親が所有する複数の不動産について、将来きょうだいで共有する状態は避けたいものの、誰に何を引き継ぐか決められないというご相談です。
不動産の利用・売却方針や他の財産との調整方法も決まっておらず、相続前にどこまで準備しておくべきかを知りたいと考えられていました。
8-2.専門家の回答
共有を避けるには、不動産ごとに誰が使うのか、管理・売却の予定があるのか、他の相続人と何で調整できるのかを先に整理します。
不動産の価額だけでなく、預貯金、保険、負債、納税資金も含めた財産一覧を作ることで、特定の不動産を誰が取得しても調整できるかを検討しやすくなります。
家族の希望を確認し、遺言などの準備を検討する際は、登記情報や固定資産税の資料を基に具体的な分け方を確認します。
不動産の共有を相続前に相談したい方へ

実家や土地を誰が引き継ぐか、共有にしないために他の家族とどう調整するかは、遺言だけ、贈与だけでは決めにくいことがあります。
生前対策では、財産の名義、家族の希望、相続税・贈与税、代償資金を含めて、状況に応じた準備を相談できます。資料がそろっていない段階でも、何を確認するかの整理から始められます。
まとめ
不動産の共有を相続前に避けるには、誰が不動産を取得するかだけでなく、他の家族への配分、代償資金、将来の利用方針を一緒に整理することが大切です。
遺言、生前贈与、他財産や代償資金による調整にはそれぞれ確認事項があります。まずは名義と財産全体、家族の希望を把握し、公的一次情報を確認したうえで、必要に応じて専門家へ相談しましょう。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

相続の概要や今後の流れをわかりやすくご説明します。相談は15分程度で全国どこからでもご参加可能です。
まずはお気軽に、お電話またはWebフォームにてお申し込みください。









