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成年後見人がいる遺産分割協議の流れと注意点|利益相反・特別代理人も解説

公開日:2026/07/16
更新日:2026/07/16
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目次

相続人の中に認知症などで判断能力が不十分な方がいる場合、その方を除いて遺産分割協議を進めることはできません。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要な手続きであり、意思能力がない相続人がいる場合は、成年後見人などの法定代理人を通じて協議に参加する必要があります。

また、成年後見人自身も同じ相続の相続人である場合は、利益相反により本人を代理できないことがあります。
この記事では、成年後見人がいる遺産分割協議の流れ、利益相反と特別代理人、法定相続分を下回る分割の注意点、相続税申告期限への影響まで解説します。

成年後見人がいる遺産分割協議でまず確認したいポイント
・判断能力が不十分な相続人を除いて遺産分割協議をすると、協議が無効になるおそれがあります
・成年後見人は本人の代理人として協議に参加しますが、本人の利益を守る内容で進める必要があります
・成年後見人も相続人である場合は、利益相反により特別代理人などの対応が必要です
・遺産分割が終わっても成年後見制度は原則として続くため、長期的な負担も確認しましょう

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相続人に判断能力が不十分な方がいると遺産分割協議はそのまま進められない

判断能力が不十分な相続人がいる遺産分割協議で確認すべきことの図解

遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、全員が合意することで成立します。
そのため、相続人の中に判断能力が不十分な方がいる場合、その方を参加させないまま協議をしたり、家族が代わりに署名したりしても、有効な協議とはいえません。

認知症、知的障害、精神障害などにより本人が協議内容を理解して判断できない場合は、成年後見制度の利用を検討します。成年後見制度の基本は、厚生労働省の成年後見制度利用促進ポータルサイトでも確認できます。

遺産分割協議は相続人全員の参加と合意が必要

遺産分割協議では、相続人の一部だけで遺産の分け方を決めることはできません。
相続人全員が協議に参加し、全員が内容に合意してはじめて、預貯金の解約、不動産の相続登記、株式の名義変更などの手続きに使える遺産分割協議書を作成できます。

遺産分割協議書の基本的な作成方法は、遺産分割協議書の書き方もあわせて確認してください。

意思能力がない相続人が参加した協議は無効になるおそれがある

意思能力とは、法律行為の意味や結果を理解して判断できる能力をいいます。
判断能力が不十分な相続人が協議内容を理解できない状態で署名・押印しても、協議の有効性が後から問題になることがあります。

また、本人を除いて他の相続人だけで協議した場合も、相続人全員の合意がない協議としてやり直しが必要になる可能性があります。

成年後見人が本人の代理人として協議に参加する

本人に判断能力がない場合、家庭裁判所に後見開始の申立てを行い、成年後見人を選任してもらいます。
成年後見人は本人の法定代理人として、本人に代わって遺産分割協議に参加し、本人の利益を守る内容かどうかを確認します。

ただし、成年後見人を誰にするかは家庭裁判所が判断します。親族を候補者にしても、事案によっては司法書士や弁護士などの専門職が選任されることがあります。

成年後見人を選任して遺産分割協議を進める流れ

成年後見人を選任して遺産分割協議を進める流れの図解

判断能力が不十分な相続人がいる場合は、後見開始の申立てから遺産分割協議、相続手続きまで順番に進めます。
相続税申告が必要なケースでは、申告期限との関係もあるため、早めに手続きを始めることが大切です。

裁判所の後見関係の書式や手続きは、裁判所「後見ポータルサイト」でも確認できます。

ステップ 内容 注意点
1 家庭裁判所へ後見開始を申し立てる 診断書、戸籍、財産資料などを準備する
2 成年後見人が選任される 候補者どおりに選ばれるとは限らない
3 財産目録・収支予定を整理する 本人の財産と相続財産を分けて確認する
4 成年後見人が遺産分割協議に参加する 利益相反がある場合は本人を代理できない
5 協議書に基づき相続手続きを進める 相続登記、預貯金解約、相続税申告を進める

ステップ1:家庭裁判所へ後見開始の審判を申し立てる

まず、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てます。
申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長などです。

申立書、本人の戸籍、住民票、医師の診断書、財産資料、親族関係図などを準備します。相続がすでに発生している場合は、被相続人の戸籍や相続財産の資料も並行して集めると、その後の協議が進めやすくなります。

ステップ2:成年後見人の選任後に本人の財産を整理する

家庭裁判所の審理を経て成年後見人が選任されると、成年後見人は本人の預貯金、不動産、収入、支出、負債などを調査します。
本人の財産を正確に把握することは、遺産分割協議で本人の利益を守るためにも重要です。

本人が相続で取得する財産だけでなく、もともと本人が持っている財産や生活費も踏まえて、無理のない分割案を検討します。

ステップ3:成年後見人が本人の法定相続分を意識して協議案を確認する

成年後見人は本人の財産を守る立場にあるため、本人が不当に不利になる遺産分割案に安易に同意することはできません。
原則として、本人の法定相続分を確保する方向で検討します。

もっとも、遺産の内容、本人の生活状況、負債の有無などによっては、法定相続分どおりの分割が現実的でない場合もあります。その場合でも、本人に不利益がない理由を説明できるようにしておくことが大切です。

ステップ4:成年後見人が本人を代理して遺産分割協議書に署名押印する

遺産分割協議の内容がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。
成年後見人は本人の代理人として、本人の欄に署名押印するのではなく、成年後見人としての立場を明記して署名押印します。

金融機関や法務局の手続きでは、成年後見登記事項証明書、印鑑証明書、相続関係を示す戸籍などが求められることがあります。

ステップ5:成立した協議書に基づき相続登記や預貯金手続きを進める

協議書が完成したら、不動産の相続登記、預貯金の解約・名義変更、有価証券の移管、相続税申告などを進めます。
本人が取得した財産は、成年後見人が本人の財産として管理し、必要に応じて家庭裁判所へ報告します。

相続税申告が必要な場合は、遺産分割の遅れが申告内容に影響します。期限までに協議がまとまらないときは、未分割での申告や後日の更正の請求なども検討が必要です。

成年後見人がいる遺産分割協議で最も注意すべき利益相反

成年後見人がいる遺産分割協議の利益相反の注意点を示す図解

成年後見人がいる遺産分割協議で特に問題になりやすいのが、利益相反です。
利益相反とは、成年後見人自身の利益と、本人の利益が対立する状態をいいます。

成年後見人は本人を守る立場にあるため、自分の相続分を増やすと本人の相続分が減るような場面では、本人を代理して協議に参加できません。

成年後見人自身も相続人である場合は利益相反になりやすい

典型例は、認知症の親の成年後見人に子が就任しており、もう一方の親が亡くなったケースです。
この場合、認知症の親と成年後見人である子がどちらも相続人になるため、遺産の分け方によって双方の取り分が変わります。

成年後見人が自分に有利な内容で協議を進めるおそれがあるため、本人を代理することが制限されます。

利益相反がある場合は特別代理人の選任を申し立てる

成年後見人と本人の利益が対立する場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます。
特別代理人は、その遺産分割協議など特定の手続きについて、本人を代理するために選ばれる人です。

候補者には、遺産分割について利害関係のない親族や、弁護士・司法書士などの専門家が考えられます。最終的には家庭裁判所が適任かどうかを判断します。

成年後見監督人がいる場合は特別代理人が不要なこともある

成年後見監督人が選任されている場合は、利益相反のある場面で監督人が本人を代理できることがあります。
そのため、すでに成年後見監督人がいるかどうかによって、特別代理人の申立てが必要かどうかが変わります。

利益相反の判断は事案ごとに異なるため、成年後見人が相続人でもある場合は、協議を始める前に家庭裁判所や専門家へ確認しましょう。

成年後見人がいる遺産分割協議の内容面の制約

成年後見人がいる遺産分割協議で内容面の制約を確認する図解

成年後見人が関わる遺産分割協議では、相続人同士が自由に分け方を決められるわけではありません。
成年後見人は本人の財産を守る義務を負っているため、本人に不利益な内容には同意しにくくなります。

特に、本人の取得分を少なくする協議、本人が相続放棄をする協議、本人の居住用不動産を処分する協議では慎重な判断が必要です。

原則として本人の法定相続分を確保する

成年後見人は、本人の法定相続分を確保する方向で遺産分割協議を進めるのが基本です。
本人が高齢で施設に入所している、他の相続人が介護してきた、家族内で話し合いがついているといった事情があっても、本人の財産を不当に減らす内容は問題になります。

法定相続分を下回る分割案にする場合は、本人にとって合理的な理由があるか、客観的な資料で説明できるかを確認しましょう。

相続放棄や限定承認は本人に有利か慎重に判断する

相続財産より借金が多い場合など、本人のために相続放棄や限定承認を検討することがあります。
ただし、成年後見人が本人に代わって相続放棄をする場合は、本人の利益を守る観点から、放棄が本人にとって有利である理由を明確にする必要があります。

相続放棄には原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月という期間制限があります。期限が迫っている場合は、早めに家庭裁判所や専門家へ相談しましょう。

居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要

成年後見人が本人の居住用不動産を売却、賃貸、抵当権設定する場合などは、家庭裁判所の許可が必要です。
遺産分割協議に参加すること自体は、利益相反がなければ原則として家庭裁判所の許可を要しません。

しかし、協議の結果として本人の住まいに関係する不動産を処分する場合は、別途許可が必要になることがあります。遺産の中に不動産がある場合は、協議案の段階から確認しておきましょう。

後見申立てや相続税資料をまとめて整理したい方へ

成年後見人が関わる遺産分割では、戸籍、財産資料、診断書、相続税申告資料、不動産資料など、多くの書類を同時に整理する必要があります。
相続アシストでは、相続税申告と周辺手続きに関する資料整理をまとめて相談できます。

相続アシストの詳細を見る

遺産分割のためだけに成年後見制度を使うときの注意点

遺産分割のために成年後見制度を使う場合の注意点の図解

遺産分割協議を進めるために成年後見制度を検討するケースは少なくありません。
ただし、成年後見制度は遺産分割のためだけの一時的な制度ではなく、本人の財産管理や身上保護を継続的に行う制度です。

申立て前に、制度が始まった後の負担や制約を確認しておきましょう。

遺産分割が終わっても後見人の職務は原則として続く

成年後見制度は、本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続くのが原則です。
遺産分割協議が終わったからといって、成年後見人の職務が自動的に終了するわけではありません。

成年後見人はその後も、本人の財産管理、契約手続き、家庭裁判所への報告などを続ける必要があります。

専門職後見人が選ばれると報酬が継続的に発生する

家庭裁判所が司法書士や弁護士などの専門職を成年後見人に選任した場合、本人の財産から報酬が支払われます。
報酬額は家庭裁判所が本人の財産や業務内容を踏まえて決定します。

専門職後見人の報酬は月額2万円から6万円程度が目安とされることがありますが、財産の内容や特別な業務の有無によって変わります。長期的な費用負担も確認しましょう。

家族が本人の財産を自由に使えなくなる

成年後見人が選任されると、本人の財産は本人の生活、医療、介護、福祉のために管理されます。
家族の都合や将来の相続税対策だけを目的として、本人の財産を自由に使うことはできません。

相続対策や不動産整理を柔軟に行いたい場合は、本人に判断能力があるうちに、任意後見、家族信託、遺言などの生前対策も検討しておくことが大切です。

成年後見制度を使わずに遺産分割を進められる場合

成年後見制度を使わずに遺産分割を進められる場合の図解

判断能力が不十分な相続人がいる場合、原則として成年後見制度の利用を検討します。
ただし、遺産分割協議そのものが不要な場合や、別の代理権が有効に機能する場合は、成年後見制度を使わずに進められることもあります。

もっとも、例外に当たるかどうかの判断を誤ると、相続手続きが後から止まる可能性があります。

有効な遺言書があり遺産分割協議が不要な場合

被相続人が有効な遺言書を残しており、遺言どおりに財産を承継できる場合は、遺産分割協議が不要になることがあります。
この場合、判断能力が不十分な相続人がいても、協議に参加する必要がないため、成年後見人の選任が不要なケースがあります。

ただし、遺言が本人の遺留分を侵害している場合や、遺言内容に争いがある場合は、成年後見人や特別代理人の関与が必要になることがあります。

法定相続分どおりに手続きする場合

遺産分割協議をせず、法定相続分どおりに財産を承継する場合は、成年後見人や特別代理人の必要性が問題になりにくいケースがあります。
たとえば、不動産を法定相続分どおりに共有登記する場合などです。

ただし、共有状態が残ると将来の売却や管理で問題が起きることがあります。目先の手続きを優先しすぎず、将来の管理まで考えて判断しましょう。

任意後見人に遺産分割協議の代理権がある場合

本人が判断能力のあるうちに任意後見契約を結んでいた場合、任意後見監督人が選任されることで任意後見人が活動できます。
ただし、任意後見人が遺産分割協議に参加できるかは、契約でどの代理権が与えられているかによります。

任意後見契約に遺産分割協議の代理権が含まれていない場合は、別途成年後見制度の利用が必要になる可能性があります。

成年後見人がいる相続では相続税申告期限にも注意する

成年後見人がいる相続で相続税申告期限に注意する図解

成年後見人の選任や特別代理人の選任が必要になると、通常の相続より手続きに時間がかかります。
相続税申告が必要な場合、申告期限は原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。

後見開始申立てや利益相反対応に時間がかかると、遺産分割協議が期限までに終わらないことがあります。

期限までに協議が終わらない場合は未分割で申告することがある

相続税申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合でも、申告期限が自動的に延びるわけではありません。
その場合は、いったん法定相続分などに基づいて未分割で申告し、協議成立後に更正の請求や修正申告を行うことがあります。

未分割のままでは、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの適用に制限が出ることもあります。税務面の影響を早めに確認しましょう。

後見・相続・税務の資料を同時に集める

成年後見制度の申立てには本人の財産資料が必要になり、相続税申告には被相続人と相続人双方の財産資料が必要です。
同じ預貯金通帳、不動産資料、保険資料、戸籍が複数の手続きで必要になることがあります。

後見申立て、遺産分割協議、相続税申告を別々に進めると、資料収集が重複しやすくなります。最初に必要書類を一覧化しておくと、手続き全体が進めやすくなります。

成年後見人がいる遺産分割協議に関するよくある質問

成年後見人がいる遺産分割協議に関するよくある質問の図解

成年後見人を選任せずに作った遺産分割協議書はどうなりますか?

判断能力が不十分な相続人がいるにもかかわらず、その方を除いて作成した遺産分割協議書や、本人が内容を理解できない状態で署名した協議書は、無効と判断されるおそれがあります。
この場合、成年後見人や特別代理人を選任したうえで、遺産分割協議をやり直す必要があります。

成年後見人が遺産分割協議に参加するには家庭裁判所の許可が必要ですか?

利益相反がない場合、成年後見人が本人を代理して遺産分割協議に参加すること自体について、原則として家庭裁判所の許可が常に必要になるわけではありません。
ただし、本人の法定相続分を下回る内容、本人の居住用不動産の処分、相続放棄、利益相反がある場合などは、別途慎重な対応が必要です。事前に家庭裁判所へ報告・相談しておくと安心です。

成年後見人が相続人でもある場合はどうすればよいですか?

成年後見人自身も同じ相続の相続人である場合は、本人と利益が対立するため、本人を代理できないことがあります。
この場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる、または成年後見監督人がいる場合は監督人が本人を代理できるか確認します。

特別代理人は必ず弁護士や司法書士でなければなりませんか?

法律上、必ず専門家でなければならないわけではありません。
ただし、遺産分割に利害関係がなく、本人の利益を適切に守れる人である必要があります。
親族を候補者にできる場合もありますが、相続人との関係や専門性を踏まえ、家庭裁判所が最終的に判断します。

遺産分割が終われば成年後見人をやめられますか?

遺産分割協議が終わっても、成年後見人の職務は原則として終了しません。
成年後見制度は、本人の財産管理と身上保護を継続する制度だからです。
本人の判断能力が回復する、本人が亡くなる、成年後見人の辞任や変更が家庭裁判所に認められるなどの事情がない限り、職務は続きます。

成年後見人がいる相続手続きに不安がある場合は早めに相談する

成年後見人がいる相続手続きを専門家に相談する図解

成年後見人がいる遺産分割協議では、後見開始申立て、利益相反、特別代理人、相続税申告、相続登記、不動産管理など、複数の手続きが重なります。
特に、相続税申告期限が迫っている、成年後見人自身も相続人である、本人の法定相続分を下回る分割を検討している、不動産を売却したいといった場合は、早めに専門家へ相談しましょう。

相続税申告や周辺手続きをまとめて相談したい場合は、相続アシストもあわせてご確認ください。

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まとめ

成年後見人がいる遺産分割協議のまとめ図解

相続人の中に判断能力が不十分な方がいる場合、その方を除いて遺産分割協議を進めることはできません。
有効な協議を行うには、成年後見人を選任し、本人の代理人として協議に参加してもらう必要があります。

ただし、成年後見人自身も相続人である場合は利益相反が問題になり、特別代理人や成年後見監督人による対応が必要になることがあります。
また、遺産分割が終わっても後見制度は原則として続き、相続税申告期限や不動産処分にも影響します。後から手続きが止まらないよう、早めに全体の流れを整理しておきましょう。

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