

著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
相続人の一人に認知症がある場合、遺産分割協議をどう進めるかは、診断名だけで一律に決まるわけではありません。本人が協議の内容を理解して意思を示せるか、必要な支援や代理があるかを個別に確認します。
本人の意思を確かめないまま家族が署名を代筆したり、本人に無断で協議を成立させたりすることは避けてください。本人の判断能力が不十分で法的な代理が必要な場合には、成年後見制度等の利用や利益相反への対応を検討します。相続税の申告期限は遺産分割の進行とは別に進むため、税務対応も並行して確認しましょう。
成年後見制度の改正: 成年後見制度の見直しを含む民法等改正法は2026年6月に公布されました。法務省によると、成年後見制度の見直しに関する規定は、公布日(2026年6月24日)から2年6か月を超えない範囲内で政令が定める日に施行される予定です。施行日や具体的な手続は、最新の法務省情報をご確認ください。
- 本人が遺産分割の内容を理解し、希望を表明できるか
- すでに成年後見人・保佐人・補助人等が選任されているか、その権限は何か
- 代理人自身も相続人となるなど、利益相反が生じないか
- 遺産分割と相続税申告の期限、納税資金
- 本人の利益・意思をどう確認し、記録するか
目次
認知症の診断だけで協議への参加方法は決まらない

認知症と診断されていても、遺産分割協議の内容を理解し、自分の希望を伝えられる方もいます。一方で、判断能力が不十分で、自分だけで法律上の手続を進めることが難しい場合もあります。診断名のみで結論を出さず、本人の状況と協議内容に即して専門家に確認してください。
本人の意思を尊重し、分かりやすい説明や環境を整えたうえで意思を確かめます。本人の意向を確認できない、協議内容の理解が難しいなどの懸念があるときは、協議書への署名を先に求めず、弁護士等へ相談しましょう。
成年後見人等が選任されている場合

家庭裁判所が成年後見人・保佐人・補助人を選任している場合でも、遺産分割の代理や同意に必要な権限は、本人の状況と選任された類型・審判内容によって異なります。成年後見人等がいるというだけで、どのような分割案でもそのまま成立するわけではありません。
成年後見人等は本人の利益を守る立場です。本人が取得する財産や分割内容、本人の希望、他の相続人との関係を踏まえて対応する必要があります。協議書案を作成する前に、選任審判書等で権限を確認し、必要な手続を後見人や弁護士に相談してください。
後見人自身も相続人なら利益相反を確認

たとえば、後見人と本人が同じ遺産の相続人である場合、後見人は自分の相続人としての立場と、本人を代理する立場の両方に立つことがあります。このような利益相反がある場合、本人のために特別代理人等の選任を家庭裁判所へ申し立てる必要が生じることがあります。
必要な手続は、後見監督人の有無、後見人と本人の関係、具体的な分割協議などによって異なります。特別代理人を選任すれば分割内容が自動的に認められるということではなく、本人の利益を守る内容かどうかを確認します。
相続税の申告期限は別に確認する

相続人の判断能力や後見手続のために遺産分割が遅れていても、相続税の申告期限が自動的に延長されるわけではありません。申告が必要な場合、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します。分割が未了なら、未分割での申告が必要か、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例をどう扱うかを税理士に確認してください。
本人の保護に必要な手続と税務申告の準備は並行して進めます。相続人、財産、申告期限、後見等の状況を一覧にし、弁護士・税理士の担当範囲を明確にしましょう。
相続人に認知症がある場合の進め方

- 本人の状況と希望を確かめる:診断名だけで判断せず、本人の意思と協議内容への理解を確認する。
- 選任済みの支援者・書類を確認する:後見等の審判書、登記事項証明書、代理権の範囲を確認する。
- 利益相反を点検する:後見人等も相続人か、本人と利害が対立しないかを専門家に相談する。
- 分割協議案を作る:本人の意思・利益を考慮し、財産評価や分け方を整理する。
- 税務期限を管理する:申告要否と10か月の期限、未分割申告の必要性を税理士に確認する。
相続の状況に応じて、手続や担当範囲を確認したい方へ
相続税申告や関連手続の進め方を整理したい場合は、相続アシストの案内をご確認ください。法律上の代理や個別業務の範囲、費用は相談時にご確認ください。
相続人が認知症の場合のよくある質問

家族が本人に代わって遺産分割協議書へ署名できますか?
家族であることだけを理由に代理署名できるとは限りません。本人の判断能力や代理権、利益相反を確認せずに署名を進めず、弁護士や家庭裁判所に確認してください。
成年後見人がいれば法定相続分で分ける必要がありますか?
成年後見人が選任されていることだけで、分割方法が一律に法定相続分になるわけではありません。本人の利益や事情に即した分割案と、必要な手続を確認します。
後見の申立て中は相続税申告を待てますか?
後見等の申立て中であることだけで申告期限が延長されるわけではありません。相続税の申告要否と期限を別に確認し、未分割での申告が必要か税理士に相談してください。
本人の意思を守りながら、法律手続と税務期限を整理しましょう

相続人に認知症がある場合は、本人の意思と利益を守る手続、利益相反への対応、相続税の期限を同時に見ていく必要があります。協議書への署名を急がず、後見等の書類、財産資料、申告期限を揃えて専門家へ相談してください。
相続発生後の財産調査や相続税申告などは、税務と法務の担当を分けて進める必要があります。相続アシストの公開案内では、税理士法人SWATSとSWATS法律事務所が共同運営し、司法書士等と連携する窓口を案内しています。成年後見の申立てや遺産分割の代理を依頼できるか、費用がどの範囲にかかるかは個別の相談で確認してください。
参考資料
- 法務省「成年後見制度について」
- 裁判所「成年後見制度」
- 東京家庭裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)」
- 国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」
- 法務省「成年後見及び遺言の制度の見直し」(2026年6月公布、成年後見部分の施行日は政令で指定)
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

相続の概要や今後の流れをわかりやすくご説明します。相談は15分程度で全国どこからでもご参加可能です。
まずはお気軽に、お電話またはWebフォームにてお申し込みください。






