
著者
税理士法人SWATS
代表
柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
死亡保険金の非課税枠は、被相続人が保険料を負担し、かつ受取人が相続人である場合にのみ適用されます。具体的な計算式は「500万円×法定相続人の数」となっており、この限度額を超えた部分が相続税の課税対象です。法定相続人の数え方には税法上のルールがあり、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして人数に含めます。
一方で、養子を法定相続人に含める場合は数に制限が設けられている点に注意が必要です。非課税枠を正確に算定するには、まず戸籍等に基づいて法定相続人を確定させなければなりません。算出された限度額と受け取る保険金額を比較し、課税対象となる金額を把握することが申告準備の第一歩となります。
・死亡保険金は、契約形態によって相続税・所得税・贈与税の扱いが変わります
・相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります
・孫が受取人の場合は、相続人に該当するかどうかで非課税枠の扱いが変わります
・非課税枠内でも、他の財産を含めて申告が必要になる場合があります
目次
死亡保険金の相続税の基本 — 課税の有無と非課税限度額の仕組み

死亡保険金は、被相続人の死亡により支払われ、かつ被相続人が保険料を負担していた場合、原則として相続税の課税対象になります。ただし、受取人が相続人である場合は「500万円×法定相続人の数」まで非課税となる特例があります。これは、死亡保険金が被相続人の死亡を原因として支払われる財産とみなされ、「みなし相続財産」として扱われるためです。
一方で、遺族の生活保障という性質を考慮し、一定額までは相続税を課さない制度が設けられています。生命保険金の相続税については「生命保険金の相続税|基本の考え方と注意点」で詳しく紹介しています。
国税庁によると、相続人が取得した死亡保険金には500万円×法定相続人の数の非課税限度額があります。
ただし、相続人以外が取得した死亡保険金には、この非課税限度額は適用されません。
詳しくは国税庁「相続税の課税対象になる死亡保険金」をご確認ください。
みなし相続財産とは何か
みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではないものの、税法上は相続によって取得したものとみなされる財産を指します。
生命保険の死亡保険金はその代表例で、受取人が指定されていても相続税の計算上は課税対象に含まれます。
課税対象財産については「課税対象財産」で詳しく紹介しています。
非課税限度額の基本構造
非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で計算します。この金額を超えた部分のみが相続税の課税対象となります。ただし、この非課税枠が使えるのは、死亡保険金を受け取った人が相続人である場合です。
また、法定相続人の数の算定には、相続放棄をした人も含めるなど特有のルールがあるため注意が必要です。死亡保険金の相続税は「かからない」のではなく、「一定額までは非課税」と理解することが重要です。制度の適用条件を誤ると過少申告や申告漏れにつながる可能性があるため、計算前提を必ず確認してください。
非課税限度額の計算方法 — 法定相続人の数別(500万円×人数)と実例

死亡保険金の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で計算します。ただし、この非課税枠は、被相続人が保険料を負担し、かつ受取人が相続人である場合に限り適用されます。相続税では、死亡保険金はみなし相続財産として扱われます。
そのうえで、法定相続人の人数を基準に一定額まで課税価格に算入しない特例が設けられています。
| 法定相続人の数 | 非課税限度額 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 1人 | 500万円 | 受取人が相続人か確認 |
| 2人 | 1,000万円 | 相続放棄があっても放棄前の人数で計算 |
| 3人 | 1,500万円 | 養子の算入制限にも注意 |
法定相続人の数え方
法定相続人とは、民法で定められた相続順位に基づく相続人を指します。配偶者は常に相続人となり、子、直系尊属、兄弟姉妹の順で人数が確定します。死亡保険金の非課税限度額の計算では、相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして法定相続人の数に含めます。
一方で、養子の数には制限があるなど、人数算定には税法上の特有ルールがあります。
計算例(配偶者+子2人の場合)
配偶者と子2人の計3人が法定相続人である場合、非課税限度額は「500万円×3人=1,500万円」です。死亡保険金が2,000万円であれば、1,500万円は非課税となり、残り500万円のみが相続税の課税対象になります。この計算は、あくまで受取人が相続人であることを前提としています。
たとえば、死亡保険金が800万円の場合でも、法定相続人の数によって税金がかかるかどうかは変わります。検索上では「800万 税金」と調べられることもありますが、死亡保険金の800万・800万円がすべて課税されるわけではなく、まずは非課税限度額を差し引いて考えることが重要です。
死亡保険金が相続対策として有効な理由

死亡保険金は、残された家族の生活を守る保障という本来の役割だけでなく、相続を円滑に進めるための対策としても非常に有効です。
ここでは、相続税の負担軽減以外にどのようなメリットがあるのか、具体的な理由を解説します。
遺産分割前の資金としてすぐに手元で受け取れる
家族が亡くなった際、銀行などの金融機関がその事実を確認すると預貯金の口座は凍結されてしまいます。遺産分割協議が終わるまで、原則として預貯金を自由に引き出すことはできません。一方、死亡保険金は受取人固有の財産として扱われるため、比較的スムーズな手続きで現金を受け取ることができます。
そのため、当面の生活費や葬儀費用、あるいは相続する遺産にかかる税金の納税資金として、すぐに手元に現金を用意できるという大きなメリットを持っています。
契約形態による税の区分 — 相続税・贈与税・所得税の違い

死亡保険金にかかる税金は、被保険者・保険料負担者・受取人の関係によって異なります。特に、被保険者と保険料負担者が同一でその人が死亡した場合は相続税となります。税法上は、この三者の関係に基づいて相続税・所得税・贈与税のいずれが適用されるかを判断します。
また、死亡保険金を一括ではなく年金形式で受け取る契約の場合も、課税関係の確認が必要です。たとえば700万円の死亡保険金や年金形式の受取について税金が気になる場合は、契約者・被保険者・受取人の関係を整理したうえで判断します。
| 保険料負担者 | 被保険者 | 受取人 | 主な税区分 |
|---|---|---|---|
| 被相続人 | 被相続人 | 相続人など | 相続税 |
| 受取人 | 別の人 | 保険料負担者 | 所得税 |
| 受取人以外 | 別の人 | 保険料負担者以外 | 贈与税 |
相続税となるケース
被保険者と保険料負担者が同一で、その人の死亡により保険金が支払われた場合は相続税の対象になります。
受取人が相続人でない場合でも、相続税(遺贈により取得したものとみなされる)として取り扱われます。
所得税となるケース
保険料負担者と受取人が同一で、被保険者のみが別人である場合は、原則として所得税(一時所得)となります。
この場合、相続税の非課税限度額は適用されません。
贈与税となるケース
保険料負担者と被保険者が異なり、かつ受取人が保険料負担者でもない場合は、贈与税の対象となることがあります。このように、三者の関係により課税区分は変わります。死亡保険金の税区分は、三者の関係全体で判断されます。
個別の契約内容を確認せずに税目を決めつけないよう注意が必要です。
孫・法定順位別の死亡保険金と相続税計算

死亡保険金が相続税の対象となるのは、被保険者と保険料負担者が同一で、その人の死亡により支払われた場合です。そのうえで、受取人が相続人に該当するかどうかによって、非課税限度額の適用可否が変わります。孫が受取人となっている場合でも、常に非課税枠が使えるわけではありません。
孫が相続人に該当するかどうかは、相続順位や代襲相続の有無によって判断されます。
孫が相続人に該当しない場合
孫が単に受取人として指定されているだけでは、通常は相続人に該当しません。
この場合、死亡保険金は相続税の課税対象となり、非課税限度額は適用されません。
孫が代襲相続人となる場合
本来相続人となる子が被相続人より先に死亡している場合、その子の子である孫が代わって相続人となります。この場合、孫は相続人として扱われるため、非課税限度額の対象に含まれます。法定相続人の人数に含められるかどうかで、非課税限度額の総額が変わります。
相続関係を確定させたうえで計算することが重要です。
基礎控除と相続税の具体的な計算手順

非課税枠を差し引いた後の死亡保険金が、どのように相続税の計算に組み込まれるのかを理解しておくことも大切です。
ここでは、基礎控除額の算出から、最終的な税額を求めるまでの基本的なステップを解説します。
課税価格から基礎控除額を差し引く
相続税を計算する際、まずはすべての相続財産の合計から基礎控除額を差し引きます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式によって求められます。たとえば、法定相続人が配偶者と子の2人であれば、基礎控除額は4,200万円となります。
死亡保険金を含む全体の財産額がこの基礎控除の範囲内に収まれば、相続税は課税されません。たとえば、死亡保険金を含めた相続財産の合計が1億円を超えるような場合でも、非課税枠や基礎控除、小規模宅地等の特例などを適用することで、実際の課税対象額は変わります。相続税の基礎控除については「相続税の基礎控除|計算方法と適用のルール」で詳しく紹介しています。
法定相続分に応じて税率をかける
基礎控除を差し引いて課税対象となる金額が残った場合、それをいったん民法で定められた法定相続分に従って各相続人に割り振ったと仮定します。たとえば、夫が亡くなり妻と子1人が相続する場合、それぞれの法定相続分は2分の1ずつとなります。この割り振られた金額に対して、規定の税率(10%から55%の累進税率)をかけて基準となる相続税の総額を算出します。
最後に、実際に財産を取得した割合に応じて、各自が納付すべき税額を計算するという流れになります。相続税の仕組みについては「相続税の仕組みと申告」で詳しく紹介しています。
申告・注意点とよくある間違い

死亡保険金が相続税の対象となるのは、被保険者と保険料負担者が同一である場合です。そのうえで、相続税の申告が必要かどうかは、他の相続財産と合算した課税価格により判断されます。非課税限度額以内であっても、相続税の申告が必要な場合には、死亡保険金に関する事項の記載が求められます。
非課税だから申告不要とは限りません。
非課税=申告不要と誤解するケース
非課税限度額内の死亡保険金であっても、他の財産を含めた課税価格が基礎控除を超える場合は申告が必要です。その際、非課税枠を適用した計算内容を申告書に反映させます。相続税の申告が不要なケースについては「相続税の申告が不要なケースとは?
」で詳しく紹介しています。
法定相続人の数の誤認
相続放棄をした人も、非課税限度額の計算上は法定相続人の数に含めます。
人数を誤ると、非課税限度額の計算を誤ることになります。
相続放棄がある場合の相続税申告書の書き方については「相続放棄がある場合の相続税申告書の書き方」で詳しく紹介しています。
契約内容を確認しないまま計算するケース
死亡保険金の税区分は、被保険者・保険料負担者・受取人の関係で判断します。相続税以外の税目となる場合もあるため、契約内容を確認せずに申告計算を行うのは危険です。死亡保険金は金額が大きくなることが多く、計算の影響も小さくありません。
不明点がある場合は、申告時点の法令を確認することが重要です。
FAQ

死亡保険金の相続税や生前対策に関して、よくある質問をまとめました。死亡保険金には、受取人が相続人であれば「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用されますが、契約形態によっては所得税や贈与税の対象となる場合があります。また、非課税枠に収まっていても、他の財産を含めた合計額が基礎控除を超える場合は申告が必要です。
孫が受取人の場合は、代襲相続人であるなどの例外を除き、原則として非課税枠は使えません。このように、受取人の立場や契約者との関係によって税務上の扱いは大きく異なります。個別の状況に応じた判断が必要な際は、専門家への相談を検討してください。
Q1:死亡保険金には必ず相続税がかかりますか?
原則として、被保険者と保険料負担者が同一である場合は相続税の対象になります。
ただし、受取人が相続人であれば「500万円×法定相続人の数」まで非課税です。
Q2:死亡保険金が非課税枠内なら申告は不要ですか?
非課税限度額以内であっても、他の相続財産を含めた課税価格が基礎控除を超える場合は申告が必要です。
その場合、死亡保険金についても申告書に記載します。
Q3:孫が死亡保険金を受け取ると非課税になりますか?
孫が相続人とならない場合、相続税の非課税限度額が適用されないことがあります。
ただし、孫が代襲相続人となる場合は、相続人として非課税枠の対象に含まれます。
遺言書による遺贈や養子縁組によって孫が相続人となるケースもありますが、それぞれ非課税枠の適用に関する取り扱いが異なります。
Q4:死亡保険金の税区分はどう判断しますか?
被保険者・保険料負担者・受取人の三者の関係により判断します。
契約内容を確認せずに税目を決めることはできません。
死亡保険金は、契約形態や受取人によって相続税・所得税・贈与税の扱いが変わります。
保険金を含めた相続税申告や生前対策をまとめて相談したい場合は、相続アシストもあわせてご確認ください。
まとめ

死亡保険金にまつわる税金の仕組みを正しく理解することは、円滑な相続準備の第一歩です。受取人が相続人であれば非課税枠を活用できますが、契約形態や受取人の立場によって適用される税目は変わります。まずはご自身の契約内容と家族状況を照らし合わせ、将来の負担を正確に把握することが重要です。
もし「今の契約で税金がいくらかかるか不安」「何から手を付けるべきか分からない」と感じているなら、専門家による現状整理が有効です。SWATSでは、税務と法務の両面から個別の状況を診断し、最適な対策を提案しています。早めに現状を把握することで、ご家族に負担を残さないための確かな準備を進めることができます。

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