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相続放棄がある場合の相続税申告書の書き方|記載例で注意点を解説

公開日:2026/04/28
更新日:2026/08/07

著者

税理士法人SWATS

代表 柴田 潤

関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。

相続人の中に相続放棄をした人がいる場合、相続税申告書では通常の相続と異なる確認が必要です。
特に、基礎控除の人数計算、生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産、相続放棄を証明する添付書類は、申告内容や税額に影響します。

この記事では、相続放棄がある場合に相続税申告が必要になるケース、申告書の主な記載ポイント、添付書類、よくある注意点をわかりやすく解説します。

相続放棄と相続税申告でまず確認したいポイント
・相続放棄をしても、生命保険金や死亡退職金を受け取ると申告が必要になることがあります
・基礎控除の計算では、相続放棄をした人も法定相続人の数に含めます
・相続放棄をした人は、生命保険金や死亡退職金の非課税枠を使えません
・申告書には、相続放棄申述受理証明書などの証明資料を添付します
・相続税申告の期限は原則10か月以内です。書き方や必要書類に迷う場合は、期限から逆算して早めに確認しましょう

期限内に申告が必要か確認する

目次

相続放棄がある場合の申告について税理士に相談する

相続放棄をしても相続税の申告が必要になるケース

相続放棄をしても相続税の申告が必要になるケースの図解

相続放棄をすると、民法上は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
ただし、相続税の申告では「相続放棄をしたから何も関係ない」とは限りません。

相続放棄をした本人が財産を取得する場合や、他の相続人が申告書を作成する場合には、相続放棄者の情報や証明書類が必要になることがあります。

生命保険金や死亡退職金を受け取った場合

相続放棄をしても、受取人に指定されている生命保険金や死亡退職金を受け取れる場合があります。これらは民法上の相続財産とは別に扱われることがありますが、税法上は相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税対象になることがあります。国税庁によると、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続等により取得したものとみなされます。

詳しくは国税庁「相続税の課税対象になる死亡保険金」をご確認ください。

遺贈などで財産を取得した場合

相続放棄をしていても、遺言によって財産を受け取る遺贈がある場合は、相続税の申告が必要になることがあります。
相続放棄は「相続人として財産を承継する立場」を放棄する手続きであり、遺贈や保険金など、取得原因が異なる財産まで常に消えるわけではありません。

財産を受け取る予定がある場合は、相続放棄の手続きと相続税申告を別々に考えず、取得する財産の種類ごとに確認しましょう。

他の相続人が相続税申告をする場合

相続放棄をした本人に納税額が出ない場合でも、他の相続人が相続税申告をする際には、放棄者の情報が必要になることがあります。
たとえば、法定相続人の人数、続柄、相続放棄の事実を確認するために、氏名や証明書類の提出を求められる場合があります。

申告書作成をスムーズに進めるため、相続放棄申述受理通知書や受理証明書は手元で保管しておきましょう。

相続放棄しても申告が必要か迷う方へ
生命保険金、死亡退職金、遺贈、不動産評価などが絡むと、申告要否や申告書の書き方を自己判断しにくくなります。相続税申告の期限は原則10か月以内のため、必要書類と記載内容を早めに整理しておくことが大切です。

期限内に申告が必要か確認する

関連する判断ポイントは、相続税対策でも詳しく解説しています。

関連する判断ポイントは、相続税の納税資金の考慮でも詳しく解説しています。

相続放棄が相続税の計算に与える影響

相続放棄が相続税の計算に与える影響の図解

相続放棄がある場合、相続税の計算では「放棄した人を人数に含める場面」と「放棄した人を相続人として扱わない場面」があります。
ここを混同すると、基礎控除や非課税枠、各人の課税価格を誤って計算するおそれがあります。

基礎控除の計算では法定相続人の数に含める

相続税の基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。この法定相続人の数は、相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして数えます。国税庁の相続税計算の説明でも、法定相続人の数は相続放棄がなかったものとした場合の人数とされています。

詳しくは国税庁「相続税の計算」をご確認ください。

生命保険金・死亡退職金の非課税枠は相続放棄者には適用できない

生命保険金や死亡退職金には、一定の非課税枠があります。死亡保険金の非課税限度額は、原則として500万円×法定相続人の数です。ただし、この非課税枠を使えるのは相続人が受け取った場合です。

相続放棄をした人は、この非課税枠の適用対象に含まれないため、受け取った保険金や退職金の課税関係を慎重に確認する必要があります。

債務控除は原則として利用できない

相続放棄をすると、被相続人の借金や未払金などの債務を承継しません。
そのため、相続放棄者が生命保険金などのみなし相続財産を受け取った場合でも、被相続人の借金を差し引く債務控除は原則として利用できません。

プラスの財産を相続しない代わりに債務も引き継がない、という相続放棄の効果とあわせて整理しておきましょう。

2割加算は相続放棄の有無だけでなく被相続人との続柄で判断する

相続税額の2割加算は、相続放棄をしたかどうかだけで一律に決まるものではありません。国税庁によると、被相続人の配偶者や一親等の血族などに該当しない人が財産を取得した場合に、相続税額へ2割相当額が加算されます。たとえば、兄弟姉妹やおい・めいが財産を取得する場合は2割加算の対象になり得ます。

一方で、子や父母など一親等の血族に当たる人については、相続放棄をしたという理由だけで直ちに2割加算と判断しないよう注意が必要です。被相続人との続柄を確認したうえで、詳しくは国税庁「相続税額の2割加算」をご確認ください。

このテーマの前提知識を整理したい場合は、相続税の基本|仕組み・計算方法・初心者が知るべきポイントもあわせて確認してください。

相続放棄がある場合の相続税申告書の書き方

相続放棄がある場合の相続税申告書の書き方の図解

相続放棄がある場合の相続税申告書では、誰がどの財産を取得したかだけでなく、相続放棄者をどの欄で確認するかも重要です。
まずは、主な申告書と記載ポイントを一覧で確認しましょう。

申告書 確認する内容 相続放棄がある場合の記載ポイント
第1表 相続税の申告書 財産取得がなくても、必要に応じて放棄者の氏名・住所などを確認する
第2表 相続税の総額の計算書 基礎控除・税額計算では、放棄者も法定相続人の数に含める
第9表・第10表 生命保険金・退職手当金 放棄者が受け取った分は、非課税枠を使わず課税対象を整理する
第11表 相続税がかかる財産 保険金などのみなし相続財産を、取得者ごとに漏れなく記載する
添付書類 相続放棄の証明 家庭裁判所の受理証明書または受理通知書の写しを準備する

相続税申告書の様式や記載例は、国税庁が公開しています。
相続放棄がある場合も、使用する帳票や記載欄を確認しながら作成することが重要です。
詳しくは国税庁「相続税の申告書等の様式一覧(令和6年分用)」をご確認ください。

申告書の記載や資料収集をまとめて進めたい方へ

相続放棄者がいる場合は、申告書だけでなく、戸籍、受理証明書、生命保険金の支払通知書、不動産資料などの整理も必要です。
期限内に提出するには、書き方で迷いやすい帳票と添付書類を早めに確認しておくことが大切です。相続アシストでは、相続税申告と周辺手続きをまとめて相談できます。

申告書の書き方を相談する

自分のケースで迷いやすい項目チェック
・相続放棄者が生命保険金や死亡退職金を受け取っている
・基礎控除の人数計算に相続放棄者を含めるか迷っている
・第9表、第10表、第11表のどこに何を書くか不安がある
・受理証明書、戸籍、保険金資料など添付書類の不足が心配
・申告期限までに財産評価や資料収集が終わるか不安がある

第1表では財産を取得した人と相続放棄者の関係を整理する

第1表は、相続税申告書の中心となる書類です。財産を取得した人の氏名、住所、続柄、取得財産の価額、税額などを記載します。相続放棄者が生命保険金や死亡退職金などを受け取っている場合は、その取得内容を申告書全体で整合させる必要があります。

財産を取得していない放棄者についても、法定相続人の確認や添付書類との整合性を確認しておきましょう。

第2表では相続放棄者を含めて法定相続人の数を計算する

第2表では、相続税の総額を計算します。ここで重要なのは、基礎控除額を計算する際の法定相続人の数です。相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして人数に含めます。

人数を少なく数えてしまうと、基礎控除額や相続税の総額を誤る原因になります。

第9表・第10表では非課税枠を使える人と使えない人を分ける

第9表は生命保険金、第10表は退職手当金等を整理する明細書です。
相続放棄者がこれらを受け取った場合、非課税枠を使える相続人の取得分と、非課税枠を使えない相続放棄者の取得分を分けて確認します。

死亡保険金や死亡退職金は金額が大きくなりやすいため、受取人、契約者、保険料負担者、支払金額の資料をそろえてから記載しましょう。

第11表ではみなし相続財産を取得者ごとに記載する

第11表は、相続税がかかる財産を明細として記載する書類です。
相続放棄者が生命保険金などを受け取った場合は、取得した人、財産の種類、価額などを整理して記載します。

相続放棄者が遺産分割協議に参加していない場合でも、税法上の課税対象となる財産を取得していれば、申告書上の記載が必要になる点に注意してください。

相続税申告全体の流れや必要な準備を確認したい場合は、相続税申告の全体ガイドも参考になります。

自分のケースの書き方を専門家に確認する

相続放棄がある場合の申告で必要な添付書類

相続放棄がある場合の申告で必要な添付書類の図解

相続放棄がある場合は、通常の相続税申告で必要な戸籍関係書類や財産資料に加えて、相続放棄の事実を示す資料を準備します。
相続放棄者が遺産分割協議に参加していない理由を、税務署に説明できる状態にしておくことが大切です。

相続放棄申述受理証明書または受理通知書の写し

相続放棄をしたことを証明する代表的な書類が、相続放棄申述受理証明書です。
家庭裁判所で相続放棄が受理されたことを示す書類で、相続税申告の添付資料として使われます。

手続き完了時に届く相続放棄申述受理通知書の写しで確認できる場合もありますが、提出先や案件によって扱いが異なることがあるため、事前に確認しておくと安心です。

戸籍謄本などの相続関係書類

相続税申告では、被相続人と相続人の関係を確認するため、戸籍謄本などの相続関係書類を準備します。相続放棄がある場合も、誰が本来の法定相続人で、誰が相続放棄をしたのかを確認できるように整理します。裁判所によると、相続放棄の申述では、申述人の戸籍謄本や被相続人の住民票除票・戸籍附票などが必要です。

詳しくは裁判所「相続の放棄の申述」をご確認ください。

生命保険金・死亡退職金・債務に関する資料

相続放棄者が生命保険金や死亡退職金を受け取った場合は、支払通知書、保険証券、退職金の支払明細などを準備します。
債務控除の可否や課税価格の整理にも関わるため、借入金、未払金、葬式費用などの資料もあわせて確認しておきましょう。

相続放棄者が債務を承継しない場合でも、他の相続人の申告では債務や葬式費用の資料が必要になることがあります。

相続放棄と相続税申告で間違いやすい注意点

相続放棄と相続税申告で間違いやすい注意点の図解

相続放棄がある申告では、法律上の相続放棄と、相続税法上の計算ルールが混ざりやすい点に注意が必要です。
特に、期限、非課税枠、遺産分割協議、申告義務の有無は誤解が起きやすいところです。

相続放棄の期限は原則3か月以内

相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
相続税の申告期限である10か月より短いため、借金が多い可能性がある場合や財産内容が不明な場合は、早めに確認を始めましょう。

3か月以内に判断資料がそろわない場合は、家庭裁判所に期間伸長を申し立てられることがあります。

相続放棄者は遺産分割協議に参加しない

相続放棄が受理されると、その人は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、通常は遺産分割協議に参加せず、遺産分割協議書にも署名・押印しません。

相続税申告では、遺産分割協議書に相続放棄者の署名がない理由を説明できるよう、相続放棄の証明書類を添付します。

相続放棄しても申告期限は延長されない

相続放棄の手続きがある場合でも、相続税申告の期限が自動的に延びるわけではありません。相続税の申告と納税は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。国税庁の説明でも、相続税の申告書は期限までに提出し、納税も期限までに行う必要があるとされています。

詳しくは国税庁「相続税の申告と納税」をご確認ください。

相続放棄と相続税申告に関するよくある質問

相続放棄と相続税申告に関するよくある質問の図解

相続放棄者も相続税申告書に記載しますか?

相続放棄者が生命保険金や死亡退職金などを受け取っている場合は、申告書上で取得内容を整理する必要があります。
また、本人に納税額がない場合でも、基礎控除や法定相続人の確認のために、相続放棄者の情報や証明書類が必要になることがあります。

「財産を取得していないから何も記載しない」と決めつけず、申告書全体の整合性を確認しましょう。

相続放棄したのに生命保険金を受け取れるのはなぜですか?

生命保険金は、保険契約で指定された受取人が受け取る財産であり、民法上の相続財産とは別に扱われることがあるためです。
ただし、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税ではみなし相続財産として課税対象になることがあります。

さらに、相続放棄者は死亡保険金の非課税枠を使えない点にも注意が必要です。

兄弟全員が相続放棄した場合、誰が相続税申告をしますか?

先順位の相続人が全員相続放棄すると、次順位の相続人が相続人になります。たとえば、子が全員相続放棄した場合は、父母などの直系尊属、さらに該当者がいなければ兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。最終的に財産を取得する人がいる場合は、その人が相続税申告の要否を確認します。

誰が相続人になるかは家族関係によって変わるため、戸籍をもとに慎重に判断しましょう。

相続放棄の手続きと相続税申告はどちらを優先すべきですか?

期限の短さだけで見ると、相続放棄の手続きを先に確認する必要があります。相続放棄は原則3か月以内、相続税申告は原則10か月以内です。ただし、相続税申告の準備も財産調査や資料収集に時間がかかります。

相続放棄を検討しながら、生命保険金、預貯金、不動産、借金の有無を早めに整理しましょう。

相続税申告と相続放棄の判断に不安がある場合は早めに相談する

相続税申告と相続放棄の判断に不安がある場合は早めに相談するの図解

相続放棄がある相続税申告では、税務だけでなく、家庭裁判所の手続きや相続人関係の整理も関係します。
生命保険金の受取人がいる、借金の有無が不明、不動産評価が必要、相続人同士で方針が分かれているといった場合は、早めに専門家へ相談すると安心です。

相続税申告や周辺手続きをまとめて相談したい場合は、相続アシストもあわせてご確認ください。

期限内に申告が必要か確認する

判断に迷う場合や手続きをまとめて相談したい場合は、相続アシストの詳細をご確認ください。

相続放棄と相続税申告をまとめて相談する

まとめ

まとめの図解

相続放棄をした人がいる場合でも、相続税申告が不要になるとは限りません。生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産を受け取った場合や、他の相続人が申告書を作成する場合には、相続放棄者の情報や証明書類が必要になることがあります。特に重要なのは、基礎控除の計算では相続放棄者も法定相続人の数に含める一方で、相続放棄者本人は生命保険金などの非課税枠を使えない点です。

相続放棄申述受理証明書などの添付書類を準備し、申告期限に間に合うよう早めに進めましょう。

この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS

代表 柴田 潤

経歴
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
一言
複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

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