
著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
相続放棄した土地は、放棄した瞬間に自動で国のものになるわけではありません。
他に相続人がいればその人に相続権が移り、全員が放棄した場合は最終的に相続財産清算人の手続を経て国庫に帰属します。
また、2023年の民法改正後は、相続放棄後の管理義務が残る場面も変わっています。
この記事では、相続放棄した土地がどうなるのか、改正後の管理責任、手続き、放棄以外の対処法まで整理します。
・土地だけを選んで相続放棄することはできません
・相続放棄後の土地は、他の相続人か相続財産清算人の管理へ進みます
・2023年改正後は、現に占有している場合に限って管理義務が問題になります
・不要な土地だけ手放したいなら、相続土地国庫帰属制度など別の方法も検討が必要です
目次
【結論】特定の土地だけの相続放棄はできない

結論からいうと、遺産の中から特定の土地だけを選んで相続放棄することはできません。
相続放棄は、預貯金や不動産などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産を含めた相続全体を放棄する制度だからです。
そのため、「田舎の土地はいらないが預貯金は受け取りたい」という使い方はできません。
土地だけを手放したい場合は、相続放棄ではなく別の方法を検討する必要があります。
相続放棄はプラス・マイナス全ての財産を引き継がないための制度
裁判所によると、相続人は相続が始まったときに、単純承認・相続放棄・限定承認のいずれかを選びます。
このうち相続放棄は、被相続人の権利や義務を一切受け継がないための手続です。
家庭裁判所で正式に相続放棄が受理されると、その人はその相続について初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
詳しくは裁判所「相続の放棄の申述」をご確認ください。
相続放棄と財産放棄の違いについては「財産放棄と相続放棄の違い|手続き・期限・注意点」で詳しく紹介しています。
相続放棄された土地は最終的にどうなるのか

相続放棄をしても、土地が直ちに宙に浮くわけではありません。
他に相続人がいればその人へ相続権が移り、全員が放棄した場合は相続財産清算人の手続を経て整理されます。
この流れを知らないまま放棄を進めると、親族間の連絡や管理の引継ぎでトラブルになりやすいため注意が必要です。
他に相続人がいればその人が土地の相続権を得る
相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
その結果、子どもが全員放棄した場合は親、親もいなければ兄弟姉妹というように、次順位の相続人へ相続権が移ります。
自分だけ放棄しても問題が終わるとは限らず、後順位の親族に不要な土地や債務の検討が回る点は先に共有しておくのが安全です。
全員が放棄した場合は「相続財産清算人」が管理し国庫へ帰属する
相続人全員が相続放棄をすると、相続人がいない状態になります。
この場合は、利害関係人や検察官の申立てによって家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、土地の管理や換価、債務の支払いを進めます。
清算後に残った財産は最終的に国庫へ帰属します。
そのため、全員放棄のケースでは「最後は国へ行くが、その前に清算手続が必要」と理解しておくことが重要です。
【2023年民法改正】相続放棄後の土地の管理義務を正しく理解しよう

2023年4月1日に施行された民法改正で、相続放棄後の土地の管理義務の考え方は変わりました。
改正前よりも責任が残る範囲は限定されましたが、完全にゼロになったわけではありません。
特に、被相続人の家に住んでいた人や、土地を事実上管理していた人は、自分がどこまで責任を負うのかを確認しておく必要があります。
| ケース | 管理義務の考え方 |
|---|---|
| 遠方の山林で一度も管理していない | 現に占有していないため、管理義務は残りにくい |
| 被相続人の家に同居していた | 現に占有しているとして、一定の管理義務が問題になりやすい |
| 鍵を持ち、空き家や敷地を管理していた | 管理を引き継ぐ者や清算人が決まるまで注意が必要 |
新ルール:「現に占有」していなければ管理義務は負わない
改正後は、相続放棄をした人のうち、その時点で相続財産を現に占有している人だけが、次の管理者に引き継ぐまで保存義務を負う建て付けになりました。
遠方にある土地を実際には管理していなかった場合は、相続放棄後まで広く責任を負い続けるとは限りません。
もっとも、占有の有無は生活実態や管理状況で判断されるため、迷うときは個別確認が必要です。
管理義務が残ってしまう「現に占有」している状態の具体例
たとえば、被相続人の家に同居していた、空き家の鍵を預かって出入りしていた、草刈りや見回りを続けていたといったケースでは、現に占有していると判断される可能性があります。
一方で、一度も訪れていない山林や、管理の実態がない土地であれば、占有には当たりにくいです。
相続登記義務との関係も含めて整理したい場合は「相続登記の義務化とは?2024年4月開始の期限・罰則・相続放棄を解説」もあわせてご確認ください。
管理義務が残った場合の対処法:相続財産清算人の選任
相続放棄後も管理義務が残る場合は、相続財産清算人の選任によって管理を引き継いでもらう方法があります。
清算人が選任されると、土地の管理や処分は清算人側で進み、占有していた人の負担はそこで切り替わります。
ただし、申立てには時間と費用がかかるため、現実的な進め方は専門家と相談しながら決めるのが安全です。
土地を含む財産を相続放棄するための手続きと流れ

相続放棄は、相続人同士で「自分はいらない」と話すだけでは成立しません。
裁判所の案内どおり、家庭裁判所への申述が必要です。
まずは必要書類と費用を把握したうえで、3か月の期限内に進めることが重要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申述期間 | 自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内 |
| 申述先 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 基本費用 | 収入印紙800円と連絡用郵便切手 |
| 主な必要書類 | 相続放棄申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本など |
裁判所によると、相続放棄の申述は3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ行います。
費用は申述人1人につき収入印紙800円分と郵便切手で、必要書類は相続関係によって追加されることがあります。
詳しくは裁判所「相続の放棄の申述」をご確認ください。
ステップ1:戸籍謄本など必要書類を収集する
最初に、被相続人の住民票除票や戸籍附票、申述人の戸籍謄本などを集めます。
申述人が子なのか、親なのか、兄弟姉妹なのかによって、追加で必要になる戸籍が変わる点に注意が必要です。
戸籍収集が長引くことも多いため、放棄を考えた時点で早めに動き始めるのが安全です。
ステップ2:家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する
必要書類がそろったら、相続放棄申述書を作成して家庭裁判所へ提出します。
提出先は、土地の所在地ではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
郵送提出も可能ですが、書類不備があると時間を失いやすいため、内容確認は慎重に行いましょう。
ステップ3:照会書に回答し受理通知書を受け取る
申述後は、家庭裁判所から照会書が届くのが一般的です。
相続放棄の意思が本人の真意か、相続財産の処分をしていないかなどを確認されるため、事実に沿って回答します。
問題がなければ受理通知書が届き、正式に相続放棄の手続きが完了します。
相続放棄ができなくなる前に知っておきたい3つの注意点

相続放棄は有効な手段ですが、期限や行動を間違えると使えなくなることがあります。
特に、3か月の熟慮期間と、相続財産に手を付けないことは重要です。
後から「放棄できると思っていたのにできなかった」とならないよう、以下の3点は先に押さえておきましょう。
注意点1:相続を知った日から3か月の期限を守る
裁判所の案内でも、相続放棄の申述期間は自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内とされています。
戸籍収集や財産調査に時間がかかるため、迷っている間に期限が過ぎるケースも珍しくありません。
借金や管理困難な土地の有無が気になるときは、相続財産の調査と並行して手続準備を進めるのが安全です。
注意点2:相続財産を処分すると相続放棄が認められない
被相続人の預貯金を使ったり、不動産を売却したり、価値のある遺品を処分したりすると、単純承認と判断されるおそれがあります。
その場合、あとから相続放棄をしようとしても認められない可能性があります。
土地の管理で必要最小限の保存行為と、財産処分に当たる行為の区別は難しいことがあるため、自己判断で進めないほうが安全です。
注意点3:一度受理された相続放棄は原則撤回できない
相続放棄は、受理された後に「やはり預貯金は受け取りたい」と考え直しても、原則として撤回できません。
あとからプラスの財産が見つかっても戻せないため、放棄前の財産調査はできるだけ丁寧に行う必要があります。
相続全体の方針に迷う場合は「相続相談はどこにする?無料相談先と専門家の選び方」も参考になります。
相続放棄以外で不要な土地を手放す3つの代替案

預貯金などは相続したい一方で、不要な土地だけを手放したいケースでは、相続放棄は使えません。
その場合は、相続土地国庫帰属制度、売却、寄付といった別の方法を検討します。
それぞれ条件や費用がかなり違うため、先に比較しておくと判断しやすくなります。
| 方法 | 向いているケース | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 相続土地国庫帰属制度 | 他の財産は相続しつつ、条件を満たす土地だけ手放したい | 建物なし、担保なしなどの要件と審査手数料・負担金が必要 |
| 売却 | 少しでも市場価値や需要がある | 価格が低くなることや境界確認が必要 |
| 寄付・無償譲渡 | 近隣地権者や法人に活用余地がある | 受け手が見つかりにくく、個人への移転では税務確認も必要 |
代替案1:相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう
法務省によると、相続土地国庫帰属制度は、相続等によって土地を取得した人が一定の要件を満たした場合に、国へ帰属させるための制度です。
制度開始は2023年4月27日で、開始前に相続した土地も対象になります。
申請先は土地所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局です。
詳しくは法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」をご確認ください。
ただし、建物がある土地、担保権などが設定されている土地、境界争いがある土地などは対象外になりやすいです。
法務省の案内では、審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、承認後は負担金の納付も必要とされています。
「相続放棄はしたくないが、不要な土地だけ手放したい」というときの代表的な選択肢です。
代替案2:不動産会社や専門業者へ売却する
土地に需要があるなら、売却がもっとも現実的です。
通常の仲介だけでなく、山林や原野、地方の空き地を扱う専門業者へ相談すると、買い手が見つかることがあります。
売却額は高くなりにくいものの、固定資産税や管理の負担から離れられる点は大きなメリットです。
代替案3:自治体や近隣住民、法人などへ寄付する
売却が難しい土地は、近隣住民や法人への無償譲渡を検討できることがあります。
自治体への寄付は条件が厳しい一方で、隣地所有者や事業用地を探す法人なら受ける余地がある場合もあります。
ただし、受け手側の事情で断られることも多いため、活用目的を示しながら打診するのが現実的です。
相続放棄と土地の管理に関するよくある質問

相続放棄と土地では、期限、管理責任、国庫帰属制度の違いで迷う方が多くいます。
ここでは、特によくある疑問をまとめて整理します。
Q. 相続する財産の中から、不要な土地だけを選んで相続放棄できますか?
できません。
相続放棄は、土地だけではなく、預貯金や借金を含めた相続全体を放棄する制度です。
不要な土地だけを手放したい場合は、相続土地国庫帰属制度や売却などの代替案を検討する必要があります。
Q. 相続放棄したら、その土地の管理責任はすぐになくなりますか?
必ずしもすぐゼロになるとは限りません。
改正後は、相続放棄の時点でその土地を現に占有している場合に、次の管理者へ引き継ぐまで保存義務が問題になります。
同居や空き家管理などの事情がある場合は、早めに個別確認をしたほうが安全です。
Q. 相続放棄と相続土地国庫帰属制度は、どう使い分ければよいですか?
借金を含めて相続全体を受けたくないなら相続放棄、他の財産は相続しつつ土地だけ処分したいなら相続土地国庫帰属制度が候補です。
ただし、国庫帰属制度には要件と費用があるため、誰でも使えるわけではありません。
迷うときは、財産全体の状況を前提に比較することが大切です。
専門家におまかせ!相続アシストなら負担ゼロで相続放棄が可能

相続放棄は、期限管理、戸籍収集、家庭裁判所への申述など、一般の方が短期間で進めるには負担が大きい手続きです。
土地の管理義務や、相続土地国庫帰属制度との比較まで含めると、自己判断が難しい場面も多くあります。
相続アシストなら、相続放棄の進め方だけでなく、土地を残すべきか、別の処分方法を選ぶべきかまで含めて整理できます。
専門家による「相続アシスト」が選ばれる理由

理由1:書類収集から手続きまでまとめて任せられる
戸籍や必要資料の収集から、申述書作成、進め方の整理までまとめて進められます。
期限のある相続放棄手続きで迷いにくい点が大きなメリットです。
理由2:税理士・弁護士・司法書士の連携でワンストップ対応
土地の処分、相続税、親族間の連絡など、論点がまたがる案件でも窓口を分けずに相談しやすい体制です。
相続放棄だけでなく、別制度との比較も含めて進めやすくなります。
理由3:相続放棄以外の選択肢も含めて整理できる
不要な土地への対処は、国庫帰属制度、売却、寄付など選択肢が複数あります。
相続アシストでは、土地だけ手放したいのか、相続全体を放棄したいのかを整理しながら方針を決められます。
まとめ

相続放棄した土地は、他の相続人が引き継ぐか、全員放棄なら相続財産清算人の手続を経て最終的に国庫へ帰属します。
ただし、土地だけを選んで相続放棄することはできず、改正後も現に占有している場合には管理義務が問題になることがあります。
また、相続放棄には3か月の期限があり、一度受理されると原則撤回できません。
不要な土地だけ処分したいなら、相続土地国庫帰属制度や売却なども含めて、早めに比較検討することが大切です。

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