
目次
被相続人の財産にJA(農協)や信用金庫などの出資金が含まれている場合、相続税申告書への正確な記載が必要です。

出資金は預貯金とは性質が異なるため、どの書類にどのように書けばよいか迷う方も少なくありません。
この記事では、国税庁が定める様式に基づき、相続税申告書「第11表」への出資金の具体的な書き方、評価方法、および記入例を解説します。
そもそも相続財産となる「出資金」とは?預貯金との違いを解説
出資金とは、協同組合(JA・生協)や信用金庫、合同会社などに対して、組合員や社員がその事業資金として拠出した金銭のことです。
出資者はその団体の構成員としての地位を得て、事業から得られた利益の配当を受け取る権利などを持ちます。
一方、預金は金融機関にお金を預けているだけであり、元本と利息の支払いが約束されている債権です。
出資金は元本が保証されない場合がある点で、預金とは根本的に性質が異なります。
そのため、被相続人名義の出資金は、名義預金とは異なり明確に本人の財産として相続税の課税対象となります。
【結論】相続税申告書で出資金を記入するのは第11表の付表

相続税申告において、出資金に関する情報を記入するのは「第11表相続税がかかる財産の明細書」です。
この明細書は相続財産の内訳を詳細に記すためのもので、出資金の種類によって、さらにその付表である「付表2(有価証券用)」または「付表4(その他の財産用)」に記載をします。
他の書類、例えば第2表や第9表は、相続税額の計算や債務・葬式費用などをまとめるものであり、個別の財産明細を記入する場所ではありません。
JA・信用金庫の出資金は「付表2(有価証券用)」へ記載
JA(農協)、信用金庫、信用組合、生活協同組合(コープ)などの組合員としての出資金は、相続税法上有価証券に分類されます。
そのため、申告書への記載は「第11表の付表2(有価証券の種類、銘柄及び所在場所等)」に行います。
この書式は上場株式や公社債などを記載する用紙ですが、出資金も同様にここに記入します。
出資金の種類を「出資金」、銘柄を「〇〇農業協同組合」のように具体的に記載し、評価額などを転記します。
同族会社などの出資持分は「付表4(その他の財産用)」へ記載
合名会社、合資会社、合同会社(LLC)といった持分会社への出資や、医療法人の出資持分は、JAなどの出資金とは扱いが異なります。
これらは「その他の財産」として分類されるため、「第11表の付表4(その他の財産の種類、細目及び所在場所等)」に記載が必要です。
これらの出資持分は、取引相場のない株式(非上場株式)に準じた複雑な評価が必要となるため、第4表にその評価額を記載します。
このため、一般的に「4表」と呼ばれるこの書類を使用します。
出資金の評価方法|相続税申告書に記載する金額の計算手順

出資金を相続税申告書に記載する際の評価額は、相続開始日時点の価額で計算するのが原則です。
出資金の種類によって評価方法が大きく異なるため、それぞれの手順を正しく理解しておく必要があります。
令和6年以降の申告様式においても、この基本的な評価の考え方に変更はありません。
貸付金など他の財産とは異なる、出資金特有の評価ルールに従って金額を算出します。
JA(農協)や信用金庫の出資金の評価額を算出する方法
JAや信用金庫、生協などの出資金の評価は比較的シンプルです。
これらの出資金は、原則として相続開始日時点での「払込済出資額」をもって評価額とします。
これは、被相続人が実際に出資した金額(額面金額)と同じであることがほとんどです。
したがって、金融機関や組合から発行される「出資残高証明書」に記載された金額を、そのまま申告書の評価額として転記すれば問題ありません。
特別な計算は不要です。
同族会社など非上場の出資持分の評価額を算出する方法
同族会社や医療法人などの出資持分の評価は非常に複雑です。
これらは市場で売買されていないため、国税庁の通達に基づき「取引相場のない株式」の評価方法に準じて評価額を算出します。
会社の規模や状況に応じて、類似業種比準価額方式、純資産価額方式、またはこれらの併用方式、配当還元方式などを用いて計算します。
この評価計算を行うために「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」という別の書類を作成し、その結果を申告書に転記します。
【記入例】相続税申告書第11表への出資金の書き方
相続税申告書第11表の付表へ出資金の内容を記入する際は、国税庁が定める様式に従って正確に記載する必要があります。
出資金の種類、銘柄、所在場所(金融機関や会社の本店住所)、数量、評価額などを、必要書類を参照しながら間違いのないように転記することが重要です。
ここでは、出資金の種類別に具体的な記入例を紹介します。
第11表 付表2(有価証券用)への記入項目と記載例
JAや信用金庫の出資金を付表2に記載する場合、各項目を以下のように記入します。
種類:「出資金」と記載します。
細目:空欄で問題ありません。
銘柄:「〇〇農業協同組合」「△△信用金庫」など、出資先の正式名称を記載します。
所在場所等:出資先の本店所在地を記載します。
数量:出資口数を記載します。
単価:1口あたりの価額を記載します。
金額:数量と単価を乗じた総額を記載します。
この評価額は、財産を取得した人の取得財産価額として第5表などの作成の基礎となります。
第11表 付表4(その他の財産用)への記入項目と記載例
同族会社の出資持分を付表4に記載する場合、各項目を以下のように記入します。
種類:「出資」と記載します。
細目:「〇〇合同会社への出資持分」のように、どの会社の出資であるか具体的に記載します。
所在場所等:会社の本店所在地を記載します。
数量:原則として「1」と記載します。
金額:事前に作成した「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」で算出した評価額を転記します。
この評価明細書(第6表に相当する添付書類群の一部)は、申告書に添付して提出する必要があります。
出資金の相続手続きと申告前の準備

相続税申告書の作成を始める前に、出資金に関する情報を正確に把握し、必要な手続きを進めておく必要があります。
預金通帳などには記載されていないことも多く、存在そのものを見落としがちです。
ここでは、申告準備として行うべき3つのステップを解説します。
第7表で扱うような債務とは異なり、プラスの財産として正確な把握が求められます。
ステップ1:被相続人の出資金の有無を確認する方法
まず、被相続人が出資金を持っていたかどうかを確認します。
自宅に残された書類の中から、JAや信用金庫、生協などからの「出資配当金計算書」や「総代会招集通知」といった郵便物を探すのが有効な方法です。
また、預金通帳の取引履歴に配当金の入金記録が残っている場合もあります。
心当たりがある団体には、被相続人名義の出資金がないか直接問い合わせて確認することも重要です。
ステップ2:残高証明書など必要書類を取り寄せる
出資金の存在が確認できたら、出資先の団体(JA、信用金庫、会社など)に連絡を取り、相続手続きに必要な書類を確認します。
相続税申告には、相続開始日(被相続人が亡くなった日)時点の価額を証明する「出資残高証明書」が必須です。
この書類の発行を依頼しましょう。
請求の際には、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本や、請求者が相続人であることを示す書類などの提出が求められます。
ステップ3:名義変更または解約・払い戻しの手続きを進める
相続人間で遺産分割協議がまとまったら、出資金の相続手続きを行います。
手続きには、相続人が組合員資格を引き継いで名義変更する方法と、組合を脱退して出資金の払い戻しを受ける方法の2つがあります。
どちらの手続きを選択するかは、各団体の定款や相続人の意向によって決まります。
手続きには、金融機関所定の申請書、遺産分割協議書の写し、相続人全員의印鑑証明書などが必要となるのが一般的です。
出資金を相続税申告する際の3つの注意点

出資金の相続税申告には、預貯金や不動産とは異なる特有の注意点が存在します。
申告漏れによるペナルティや、資金化のタイミング、評価の複雑さなどを事前に理解しておくことが大切です。
特に、過去に生前贈与で出資金を受け取っており、相続時精算課税制度を選択している場合は、その価額も相続財産に加算して申告する必要があるため注意しましょう。
申告漏れはペナルティ(加算税・延滞税)の対象になる
出資金は預金通帳に記載されないため、相続財産の調査で見落とされやすい財産の一つです。
しかし、故意でなくても申告から漏れてしまうと、税務調査で指摘された場合にペナルティが課されます。
具体的には、本来納めるべき税額に加えて「過少申告加算税」や、納付が遅れたことに対する利息である「延滞税」を追加で支払わなければなりません。
財産調査の際は、出資金の有無を念入りに確認することが重要です。
出資金の種類によっては払い戻し時期に制限がある
JAや生協などの出資金は、組合を脱退してもすぐに払い戻しが受けられない場合があります。
多くの組合では、定款により払い戻し時期が「事業年度の終了後」などと定められているため、手続きから現金化までに数か月から1年近くかかることもあります。
令和6年現在もこの扱いは変わっていません。
相続税の納税資金として出資金の払い戻し金を充てにしている場合は、払い戻しのスケジュールを事前に組合へ確認しておく必要があります。
自分で申告するのが難しい場合は税理士への相談も検討する
JAや信用金庫の出資金の評価と申告は比較的単純ですが、同族会社の出資持分などが含まれる場合は、その評価が極めて専門的かつ複雑になります。
「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の作成には高度な知識が要求されるため、相続人自身で正確に評価額を算出するのは困難なケースが少なくありません。
評価や申告書の作成に少しでも不安を感じる場合は、相続を専門とする税理士に相談することを推奨します。
相続税申告書の出資金に関するよくある質問

対象の文章が提示されていないようですが、最初にご提示いただいた「ここでは、出資金の相続税申告に関して、多くの方が疑問に思う点について解説します。」を処理対象としてよろしいでしょうか。
もし、他に処理したい文章がある場合は、そちらを入力してください。
ご提示いただいた1文のみを処理する場合は、以下の通りとなります。
ここでは、出資金の相続税申告に関して、多くの方が疑問に思う点について解説します。
亡くなった父が生協(コープ)の組合員でした。この出資金も申告が必要ですか?
はい、申告が必要です。
生協(コープ)の出資金も相続財産に該当するため、相続税の課税対象となります。
JAや信用金庫の出資金と同様に、相続開始日時点の払込済出資額で評価し、申告書第11表の付表2(有価証券用)に記載しなければなりません。
見落としやすい財産のため、申告漏れがないように注意してください。
出資金の評価額に配当金は含める必要がありますか?
いいえ、出資金自体の評価額に配当金を含める必要はありません。
出資金の評価額は、あくまで相続開始日時点の払込済出資額(額面)です。
ただし、相続開始日時点ですでに受け取る権利が確定しているにもかかわらず、まだ支払われていない「未収配当金」がある場合は、出資金とは別の財産として申告が必要です。
出資金の申告漏れは税務署に気づかれますか?
はい、税務署に気づかれる可能性は非常に高いです。
税務署は、法律に基づき金融機関や会社に対して強力な調査権限を持っています。
そのため、税務調査の過程で被相続人名義の出資金の存在を把握することが可能です。
意図的でなくても申告漏れはペナルティの対象となるため、正確に申告することが重要です。
まとめ

相続財産に出資金が含まれる場合、その種類によって相続税申告書への記載方法と評価方法が異なります。
JAや信用金庫の出資金は「有価証券」として扱い、第11表の付表2に額面金額で記載します。
一方、同族会社の出資持分は「その他の財産」として、複雑な評価計算を行った上で第11表の付表4に記載が必要です。
申告漏れはペナルティの対象となるため、財産調査の段階で出資金の有無をしっかり確認し、本記事を参考に正確な申告書作成を進めてください。

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