
著者
税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
特定の相続人が不動産などの遺産を取得する代わりに、他の相続人へ金銭などを支払う遺産分割方法を代償分割といいます。
代償分割で支払われる金銭などは代償財産(代償金)と呼ばれ、相続税申告書では通常の遺産分割とは異なる記載が必要です。
この記事では、代償分割の基本、相続税申告書の書き方、第11表・第15表の記載ポイント、課税価格の計算方法、注意点をわかりやすく解説します。
・代償分割は、不動産など分けにくい財産を特定の相続人が取得する方法です
・代償金は、相続税申告書の第11表や第15表で取得財産に反映します
・遺産分割協議書に代償分割の内容を明記しないと、贈与税の問題が生じることがあります
・代償財産が不動産など現金以外の場合は、譲渡所得税にも注意が必要です
目次
まずは基本から|代償分割とはどんな遺産分割方法か

代償分割とは、共同相続人などのうち1人または数人が相続財産を現物で取得し、その代わりに他の相続人へ金銭などを支払う遺産分割方法です。
国税庁でも、現物分割が困難な場合に行われる方法として代償分割を説明しています。詳しくは国税庁「代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」をご確認ください。
不動産などを特定の相続人が取得し他の相続人にお金を渡す方法
代償分割は、土地や建物、自社株式など、物理的に分けにくい財産がある場合に使われます。
たとえば、長男が実家の土地建物を取得し、その代わりに次男へ代償金を支払うことで、相続人間の公平性を調整します。
現物分割・換価分割・共有分割との違い
遺産分割には、代償分割のほかに、財産をそのまま分ける現物分割、売却して現金で分ける換価分割、複数人で共有する共有分割があります。
代償分割は、財産を売却せずに残せる一方、財産を取得する人に代償金を支払う資力が必要です。
| 分割方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 財産をそのまま分ける | 財産価値が均等になりにくい |
| 換価分割 | 財産を売却して現金で分ける | 売却手続きや譲渡税に注意 |
| 共有分割 | 一つの財産を共有で持つ | 将来の売却や管理で揉めやすい |
| 代償分割 | 財産取得者が他の相続人へ代償金を払う | 代償金額と申告書記載に注意 |
代償分割で相続税申告書を作成する前の準備

代償分割で相続税申告書を作成する前に、遺産分割協議書、財産評価、代償金の金額、支払時期を整理します。
特に、代償金の支払いが遺産分割の一部であることを資料上も明確にしておくことが大切です。
遺産分割協議書に代償分割で合意した旨を明確に記載する
代償分割を行う場合は、遺産分割協議書に、誰がどの財産を取得し、その代償として誰にいくら支払うのかを明記します。
この記載が不十分だと、代償金が贈与とみなされるリスクがあるため注意が必要です。
代償金として支払う金額と支払時期を決定する
代償金は、対象財産の相続税評価額や時価、相続人間の合意内容をもとに決めます。
相続税評価額と時価のどちらを基準にするかで、相続税の課税価格が変わる場合があるため、評価額の基準を協議書にも残しておくと安心です。
相続税申告全体の流れや必要な準備を確認したい場合は、相続税申告の全体ガイドも参考になります。
【記載例つき】代償分割における相続税申告書の具体的な書き方

代償分割を行った場合、相続税申告書では主に第11表と第15表の記載が重要です。
代償金を支払う人は取得財産から控除し、代償金を受け取る人は取得財産に加算して、各人の課税価格を整理します。
| 申告書 | 確認する内容 | 代償分割の記載ポイント |
|---|---|---|
| 第11表 | 相続税がかかる財産の明細 | 代償金を支払う人はマイナス、受け取る人はプラスで整理 |
| 第15表 | 相続財産の種類別価額表 | 第11表の内容を各人の取得財産額へ反映 |
| 添付資料 | 遺産分割協議書など | 代償分割の合意内容と金額を確認できる状態にする |
STEP1:第11表で代償金の支払いと受け取りを記載する
第11表では、相続税の対象となる財産の明細を記載します。
代償金を支払う相続人は、取得財産から代償金を差し引く形で整理し、代償金を受け取る相続人は代償財産として加算します。
STEP2:第15表へ第11表の内容を転記する
第15表では、各相続人が取得した財産の種類別価額を整理します。
第11表で調整した代償財産の金額を、第15表にも正しく反映し、最終的な取得財産額を確認しましょう。
申告書の記載や資料収集をまとめて進めたい方へ
代償分割では、第11表・第15表だけでなく、遺産分割協議書、財産評価資料、代償金の支払予定などを整理する必要があります。
相続アシストでは、相続税申告と周辺手続きをまとめて相談できます。
具体例でわかる|代償分割を行った際の相続税課税価格の計算方法

国税庁によると、代償財産を交付した人の課税価格は、取得した現物財産の価額から交付した代償財産の価額を控除して計算します。
一方、代償財産を受け取った人は、取得した現物財産の価額と代償財産の価額を合計して計算します。
代償金を支払った人の課税価格計算シミュレーション
たとえば、兄が相続税評価額5,000万円の土地を取得し、弟へ代償金2,500万円を支払う場合、兄の課税価格は次のように計算します。
5,000万円-2,500万円=2,500万円
この場合、兄の相続税課税価格は2,500万円です。
代償金を受け取った人の課税価格計算シミュレーション
弟が土地などの現物財産を取得せず、兄から代償金2,500万円を受け取る場合、弟の課税価格は次のように整理します。
0円+2,500万円=2,500万円
このように、代償金は受け取った人の相続税課税価格に反映されます。
時価を基準に代償金を決めた場合は計算が複雑になる
代償分割の対象財産が特定され、代償金が分割時の時価をもとに決められている場合は、相続税評価額との調整が必要になることがあります。
相続税評価額と時価に差がある不動産では、課税価格の計算方法を慎重に確認しましょう。
このテーマの前提知識を整理したい場合は、相続税の基本|仕組み・計算方法・初心者が知るべきポイントもあわせて確認してください。
代償分割で相続税を申告する際に知っておきたい注意点

代償分割は便利な方法ですが、代償金額、支払能力、代償財産の種類によって税務上の注意点があります。
特に、過大な代償金や現金以外の代償財産は、贈与税や譲渡所得税につながる可能性があります。
遺産の評価額を大幅に超える代償金は贈与税の対象となる可能性がある
代償金が相続した財産の価額と比べて明らかに過大な場合、超過部分が贈与と判断される可能性があります。
贈与税リスクを避けるため、代償金は合理的な評価額をもとに設定しましょう。
代償金を支払う側に十分な資力がないと実行できない
代償分割は、財産を取得する相続人が自己資金から代償金を支払うことが前提です。
不動産を取得する人に現金預金が少ない場合は、代償金だけでなく相続税の納税資金も不足するおそれがあります。
代償財産が現金でなく不動産の場合は譲渡所得税が課されることがある
代償財産として相続人固有の不動産を渡す場合、国税庁は、その資産を時価で譲渡したものとして所得税が課税されると説明しています。
予期しない税負担を避けるため、現金以外で代償分割を行う場合は譲渡所得税の有無も確認しましょう。
代償分割の相続税申告に関するよくある質問

代償分割の相続税申告では、遺産分割協議書の書き方、代償金の支払い時期、評価額の基準について疑問が出やすいです。
遺産分割協議書にはどのように記載すれば贈与とみなされませんか?
遺産分割協議書には、遺産分割の方法として代償分割を行うことを明記します。
たとえば「相続人Aは不動産を取得し、その代償として相続人Bへ金〇〇円を支払う」といったように、取得財産・支払者・受取人・金額を具体的に記載します。
代償金の支払いが相続税の申告期限に間に合わない場合はどうしますか?
代償金の支払いが申告期限後になる場合でも、遺産分割協議書で支払義務が確定していれば、その内容をもとに申告書へ反映します。
ただし、未払いの事情や支払予定によって扱いが変わることがあるため、申告前の確認が重要です。
関連する判断ポイントは、相続税対策でも詳しく解説しています。
関連する判断ポイントは、相続税の納税資金の考慮でも詳しく解説しています。
代償金の金額は相続税評価額と時価のどちらで決めるべきですか?
法律上、必ずどちらか一方で決めなければならないわけではありません。
相続税の計算では相続税評価額を基準にすると整理しやすい一方、公平性を重視して時価を使うケースもあります。時価を使う場合は、相続税評価額との調整に注意しましょう。
代償分割の相続税申告に不安がある場合は早めに相談する
代償分割では、遺産分割協議書、相続税評価、代償金の支払い、申告書の記載がすべてつながっています。
不動産の評価額が大きい場合や、代償金の支払い方法に迷う場合は、早めに専門家へ相談すると安心です。
相続税申告や周辺手続きをまとめて相談したい場合は、相続アシストもあわせてご確認ください。
判断に迷う場合や手続きをまとめて相談したい場合は、相続アシストの詳細をご確認ください。
まとめ

代償分割は、不動産など分けにくい遺産がある場合に、相続人間の公平性を調整しやすい遺産分割方法です。
相続税申告書では、代償金を支払う人は取得財産から控除し、受け取る人は取得財産に加算して、第11表・第15表へ正しく反映します。
遺産分割協議書への記載が不十分な場合や、代償金が過大な場合、現金以外の財産を代償財産にする場合には、贈与税や譲渡所得税の問題が生じることがあります。
申告期限に間に合うよう早めに資料を整理し、不安がある場合は専門家に確認しながら進めましょう。
この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS
代表 柴田 潤
- 経歴
- 関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
- 一言
- 複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

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