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相続税の申告書は、書き方の手順やルールが複雑で、専門知識がないと作成が難しいと感じるかもしれません。
しかし、正しい手順を理解し、相続税の申告書の記載例を参考にすれば、税理士に依頼せずに自分自身で作成することも可能です。
この記事では、相続税申告書を自分で作成するための具体的な書き方や手順、注意点をステップごとに詳しく解説します。
相続税申告書は第1表から書かない!正しい作成手順の全体像

相続税申告書を作成する際、最も重要なのは「第1表から書き始めない」ことです。
申告書は複数の様式で構成されており、財産や債務の明細書など、末尾の表から作成していくのが正しい手順です。
大まかな流れは、相続財産と債務を確定させ明細書を作成、課税遺産総額と相続税の総額を計算、各相続人の最終的な納税額を確定、という3つのステップで進めます。
この順番を守ることで、必要な数字をスムーズに転記しながら、効率的に申告書全体を完成させられます。
【3ステップで解説】相続税申告書の具体的な書き方と流れ

相続税申告書の作成は、大きく分けて3つのステップで進めます。
最初のステップで相続財産や債務の詳細を各明細書に記入し、財産評価を確定させます。
次のステップでは、それらの集計結果をもとに相続税の総額を算出します。
最後のステップで、算出した総額を実際の相続割合で按分し、各種控除を適用して、相続人一人ひとりの最終的な納税額を確定させるという流れです。
この手順に沿って作業を進めることで、複雑な計算も順を追って整理できます。
ステップ1:相続財産と債務を確定させ明細書を作成する(第9表~第15表)
相続税申告書作成の第一歩は、被相続人の全財産と債務を正確に把握し、評価額を計算することから始まります。
具体的には、預貯金、不動産、有価証券、生命保険金といったプラスの財産と、借入金や未払金などのマイナスの財産(債務)をリストアップします。
そして、それぞれの内容を定められた様式である第9表から第15表までの各明細書に記入していきます。
どの表から手をつけても構いませんが、まずは相続財産の全体像を明らかにすることが重要です。
【第11・11の2表の付表1】小規模宅地等の特例を適用する場合の計算明細
被相続人が居住していた土地や事業用の土地を相続した場合、「小規模宅地等の特例」を適用することで、土地の評価額を最大80%減額できます。
この特例を利用するためには、「第11・11の2表の付表1」を作成し、特例の対象となる宅地の情報、取得者、減額される評価額の計算過程などを詳細に記入する必要があります。
また、相続時精算課税制度の適用を受けている財産がある場合は、その内容も別途申告に含めなければなりません。
【第9表】生命保険金や死亡退職金の受け取りがある場合の明細
被相続人の死亡によって生命保険金や死亡退職金を受け取った場合、第9表にその詳細を記入します。
これらの財産は「みなし相続財産」とされ、相続税の課税対象となりますが、一定額までは非課税枠が設けられています。
「500万円×法定相続人の数」で計算される非課税限度額を差し引いた後の金額が課税対象となるため、保険金の受取人や支払われた金額、非課税額の計算過程を正確に記載します。
【第11表と付表】土地・家屋・預貯金など財産ごとの明細を記入する
相続財産の中で、土地、家屋、有価証券、預貯金など、生命保険金や死亡退職金以外の財産については、第11表に詳細を記入します。
土地であれば所在地や面積、評価額を、預貯金であれば金融機関名や残高を記載します。
特に不動産の評価は専門的な知識を要する場合が多く、路線価方式や倍率方式を用いて正しく計算する必要があります。
財産の種類によっては、評価の根拠を示す付表の提出も求められます。
【第13表】借入金や未払金などの債務・葬式費用を記入する
被相続人に借入金や未払いの医療費、税金などの債務があった場合、その内容を第13表に記入します。
また、相続人が負担した葬式費用もこの表に記載が可能です。
これらの債務や葬式費用は、相続財産の総額から差し引くことができるため、課税対象額を減らす効果があります。
漏れなく計上することで、相続税の負担を適正に抑えられます。
なお、相続時精算課税の適用者が葬式費用を負担した場合は、第14表に記入するので注意が必要です。
【第15表】すべての財産を種類別に集計しまとめる
第15表は、ステップ1の総まとめとなる重要な書類です。
これまで作成した第9表から第14表までの各明細書に記載した財産や債務の金額を、財産の種類別に集計し、転記します。
この表を作成することで、相続財産の全体像が一目で把握できるようになり、後のステップで必要となる課税価格の合計額を正確に算出するための基礎となります。
ステップ2:課税遺産総額と相続税の総額を計算する(第1表・第2表)
ステップ1で財産と債務の明細が確定したら、次は相続税の総額を計算する段階に進みます。
このステップでは、主に第1表と第2表を使用します。
まず、各相続人が取得した財産の価額から債務などを差し引いて「課税価格」を算出します。
次に、その課税価格の合計額をもとに、法律で定められた相続分(法定相続分)で分割したと仮定して、相続税の総額を計算します。
この段階では、まだ個人の納税額は確定しません。
【第1表 課税価格の計算】各相続人の課税価格を算出する
第1表の作成は複数のステップに分かれますが、ここではまず各相続人の課税価格を算出する部分までを記入します。
ステップ1で作成した第15表の「財産の価額の合計額」と「債務及び葬式費用の合計額」をもとに、各相続人が実際に取得した財産の割合に応じて金額を按分します。
そこから、各人が引き継ぐ債務や負担した葬式費用を差し引いて、一人ひとりの「課税価格」を計算し、第1表の所定の欄に記入します。
【第2表 相続税の総額の計算】法定相続分で按分し税額総額を求める
第2表では、相続税の総額を算出します。
この計算は、実際の遺産分割の内容とは関係なく、民法で定められた「法定相続分」に基づいて行われるのが特徴です。
まず、第1表で計算した各相続人の課税価格の合計額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引きます。
その残額を法定相続分で按分し、各法定相続人ごとの税額を計算した上で、それらをすべて合算して「相続税の総額」を求めます。
この結果は、再度1表へ転記します。
ステップ3:各相続人の最終的な納税額を確定させる(第4表~第8表、第1表)
最後のステップでは、ステップ2で算出した「相続税の総額」を、実際に財産を取得した割合に応じて各相続人に割り振ります。
そして、配偶者の税額軽減や未成年者控除といった各種税額控除を適用し、一人ひとりが最終的に納めるべき税額を確定させます。
この計算には、第4表、第5表、第6表、第7表、第8表などを使用し、最終的な結果を再び第1表に集約して申告書を完成させます。
【第5表】配偶者の税額軽減を適用する場合の計算方法
配偶者が遺産を相続する場合、「配偶者の税額軽減」という制度を適用することで、相続税の負担を大幅に軽減できます。
この特例を受けるためには、第5表の提出が必須です。
具体的には、配偶者が取得した財産額が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
第5表には、税額軽減額の計算過程や、配偶者が取得した財産の詳細を記入します。
【第6表・第7表】未成年者控除や相次相続控除などを適用する
相続人の中に未成年者や障害者がいる場合、あるいは10年以内に続けて相続が発生した場合(相次相続)など、特定の条件に該当するときは税額控除が適用され、納税額が軽減されます。
未成年者控除や障害者控除は第6表、相次相続控除は第7表に必要事項を記入して計算します。
その他、外国で相続税に相当する税金を納めた場合には、外国税額控除(第8表)の適用も可能です。
これらの控除は納税者の権利であるため、適用要件を確認し、忘れずに申告することが重要です。
【第1表 納付税額の計算】税額控除を反映し最終的な納付額を記入する
すべての計算の最終段階として、再び第1表に戻ります。
ステップ2で算出した各相続人の按分後の税額から、第5表や第6表などで計算した各種税額控除額を差し引きます。
これにより、各相続人が最終的に納めるべき「納付税額」が確定します。
この金額を第1表の最下部にある「差引税額又は納付すべき税額」の欄に記入し、すべての計算が完了します。
第4表で計算した相続時精算課税分の控除もここで行います。
相続税申告書を作成する際の基本的な注意点

相続税申告書を自分自身で作成する際には、計算や手順の正確性に加えて、書類作成上の基本的なルールを守ることも重要です。
記入に使う筆記用具や訂正の方法、書類の取り扱いなど、税務署への提出をスムーズに行うための注意点が存在します。
これらのポイントを押さえておくことで、書類の不備による再提出などの手間を未然に防ぐことができます。
黒のボールペンを使い楷書で丁寧に記入する
相続税申告書を手書きで作成する場合、必ず黒のボールペンを使用してください。
鉛筆やシャープペンシル、フリクションボールペンのような消せるタイプの筆記用具は認められていません。
文字は、税務署の職員が正確に読み取れるよう、楷書で丁寧に記入することを心がけます。
数字や漢字が判読しにくいと、内容の確認に時間がかかったり、問い合わせの原因になったりする可能性があります。
訂正箇所は二重線と訂正印でおこなう
申告書の記入中に書き間違えてしまった場合、修正液や修正テープは使用できません。
正しい訂正方法は、間違えた箇所に定規などを使って二重線を引き、その上や近くの余白に正しい内容を記入します。
そして、二重線の上かその付近に訂正印を押します。
この訂正印は、申告書に押印する印鑑と同じものを使用する必要があります。
OCR様式は折り曲げずに提出する
相続税申告書の第1表や第2表など、一部の様式はOCRで処理されます。
そのため、これらのOCR様式は機械での読み取りに支障が出ないよう、折り曲げたり、ホチキスで留めたり、汚したりしないように注意が必要です。
税務署へ提出する際は、クリアファイルに入れるなどして、きれいな状態を保ったまま持参または郵送することが推奨されます。
完成した相続税申告書の提出方法

相続税申告書が完成したら、税務署へ提出します。
提出にあたっては、申告書本体だけでなく、添付書類が必要になります。
また、提出先や提出期限も法律で厳密に定められています。
国税庁のウェブサイトなどで最新の情報を確認し、不備なく手続きを完了させることが重要です。
期限内に申告と納税を済ませないと、ペナルティが課される場合があるため注意が必要です。
申告書と一緒に提出が必要な添付書類一覧
相続税申告書を提出する際には、申告書本体に加えて、記載内容の根拠を示すための様々な書類を添付する必要があります。
必ず提出が必要なのは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本、遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写しなどです。
加えて、預貯金の残高証明書、不動産の登記事項証明書、生命保険の支払通知書など、申告する財産に応じた資料も求められます。
配偶者の税額軽減など特例を適用する場合は、さらに追加の書類が必要になることがあります。
提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署
完成した相続税申告書の提出先は、申告を行う相続人の住所地を管轄する税務署ではありません。
正しくは、亡くなった方(被相続人)の死亡時における住所地を管轄する税務署です。
例えば、被相続人が東京都に住んでいて、相続人が大阪府に住んでいる場合でも、提出先は東京都の管轄税務署となります。
管轄の税務署がどこになるかは、国税庁のウェブサイトで確認できます。
申告と納税の期限は相続開始後10ヶ月以内
相続税の申告と納税には期限が定められており、原則として「相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内」に行う必要があります。
例えば、1月15日に亡くなった場合、その年の11月15日が申告・納税期限です。
この期限は厳守する必要があり、1日でも遅れると延滞税や無申告加算税といったペナルティが課される可能性があります。
相続開始年月日を正確に把握し、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが大切です。
相続税申告書の書き方に関するよくある質問

相続税申告書の作成に関して、多くの方が抱く共通の疑問があります。
ここでは、申告書の様式の入手方法や、納税額が0円になる場合の申告の要否など、特によくある質問とその回答をまとめました。
相続税申告書の様式はどこで入手できますか?
相続税申告書の様式は、国税庁のホームページからダウンロードして印刷することができます。
また、最寄りの税務署の窓口でも直接受け取ることが可能です。
税制改正によって様式が変更されることがあるため、申告する年の最新のものを利用するようにしてください。
国税庁のサイトからの入手が最も確実な方法です。
相続税が0円になる場合でも申告は必要ですか?
「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を適用した結果として納税額が0円になった場合は、申告が必要です。
これらの特例は、相続税の申告書を期限内に提出することが適用要件となっているためです。
申告をしなければ特例は適用されず、本来納めるべき税額に加えて加算税や延滞税が発生する恐れがあります。
申告書と第3表などの添付書類を忘れずに提出してください。
パソコンで作成して印刷しても問題ありませんか?
はい、問題ありません。
国税庁のウェブサイトで提供されている「確定申告書等作成コーナー」や、市販の相続税申告ソフトを利用してパソコンで作成し、それを印刷して提出することが認められています。
手書きに比べて計算ミスを防ぎやすく、見やすい申告書を作成できるメリットがあります。
第3表などの付表も同様にパソコンで作成可能です。
まとめ

相続税申告書の作成は、決められた手順に沿って、各様式の役割を理解しながら進めることで、専門家でなくても自分自身で完成させることが可能です。
まずは財産と債務を正確に把握して明細書を作成し、次に税額の総額を計算、最後に各人の納税額を確定させるという流れを意識することが重要です。
特に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用する場合は、申告が必須となる点に注意してください。
令和6年以降の申告においても、基本的な作成フローは同様ですが、常に最新の税制情報を確認しながら、期限内に手続きを終えることが求められます。

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