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生前贈与を受けても相続放棄はできる?遺産と税金の注意点

公開日:2026/07/19
更新日:2026/07/19

著者

税理士法人SWATS

代表 柴田 潤

関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。

被相続人に借金がある場合など、特定の事情から相続を放棄したいと考えることがあります。
その際、「生前に贈与された財産はどうなるのか」と疑問に思う方も少なくありません。
結論から言うと、生前贈与を受けていても相続放棄はできます

しかし、税金の支払い法的なリスクなど、いくつかの注意点が存在します。
この組み合わせを検討する際は、遺産と借金のバランスを正しく理解し、適切な手続きを踏むことが重要です。

生前贈与と相続放棄でまず確認したいポイント
・生前贈与を受けていても、相続放棄は原則として可能
・相続放棄は相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する
借金を知りながら財産を移すと詐害行為取消権のリスクがある
・相続放棄をしても贈与税や相続税の確認が必要になる場合がある

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生前贈与を受けていても相続放棄は原則として可能

生前贈与を受けていても相続放棄できる理由を示す図解

生前贈与と相続放棄は、それぞれ独立した別の法制度です。
生前贈与は、贈与者と受贈者の合意に基づく契約であるのに対し、相続は被相続人の死亡によって開始される財産の包括的な承継です。
したがって、過去に生前贈与を受けたという事実があったとしても、相続人として相続を放棄する権利が失われることはありません。

そのため、生前贈与を受けていても相続放棄をすることは原則としてできます。

まずは基本をおさえよう!「生前贈与」と「相続放棄」の制度概要

生前贈与と相続放棄の制度概要を比較する図解

「生前贈与」と「相続放棄」の組み合わせを正しく理解するためには、まずそれぞれの制度の基本的な内容をおさえておくことが重要です。
これらは被相続人の財産、つまり遺産の承継に関わる手続きですが、その目的と効果は大きく異なります。
相続と贈与の違いについては「相続と贈与の違いや税金の比較」で詳しく紹介しています。

両者の違いを明確にすることで、どのような状況でこの組み合わせが有効になるのかが見えてきます。

生前贈与とは?被相続人が生きている間に財産を渡すこと

生前贈与とは、被相続人が生存中に自らの意思で、特定の相手に無償で財産を譲り渡す契約のことです。
相続が被相続人の死亡によって開始するのに対し、生前贈与は当事者間の合意があればいつでも実行できます。

渡す財産の種類や金額、渡す相手を自由に決められるため、特定の人物に確実に遺産を渡したい場合や、将来の相続税対策として計画的に財産を移転させる目的で利用されます。

相続放棄とは?プラスもマイナスの財産も一切相続しないこと

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産を一切相続しないことを選択する法的な手続きです。
これには、預貯金や不動産といったプラスの遺産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も含まれます。
相続放棄をすると、その相続人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。

手続きは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述書を提出して行います。

生前贈与後に相続放棄するときのリスク・税金・手続き比較表

生前贈与と相続放棄を判断する一次情報と比較表の図解

上位記事では、まず「生前贈与を受けていても相続放棄はできる」と結論を示したうえで、3か月期限、詐害行為取消権、相続税・贈与税、遺留分、限定承認などを分けて解説しています。
ここでも同じように、相続放棄できるかどうかだけでなく、あとから問題になりやすいリスクを一覧で整理します。

論点 結論 注意点・リスク 確認すべき一次情報
生前贈与後の相続放棄 原則として可能 生前贈与と相続放棄は別制度ですが、相続財産を処分すると相続放棄に影響するおそれがあります。 民法915条・939条
相続放棄の期限 原則3か月以内 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述します。 裁判所|相続の放棄の申述
詐害行為取消権 贈与が取り消される可能性あり 借金を知りながら財産を移した場合、債権者から贈与の取消しを求められるリスクがあります。 民法424条
贈与税 相続放棄とは別に確認が必要 年間110万円を超える贈与を受けた場合、相続放棄をしても贈与税の申告・納税が必要になることがあります。 国税庁|贈与税の計算と税率
相続税 課税対象になる場合あり 相続時精算課税や生前贈与加算の対象になる贈与は、相続放棄後も相続税の申告要否に影響することがあります。 国税庁|相続時精算課税の選択
相続放棄以外の方法 限定承認・債務整理も候補 プラス財産と借金の両方がある場合は、相続放棄だけでなく限定承認や生前の債務整理も比較します。 裁判所|相続の限定承認の申述

相続放棄の期限や税金の確認をまとめて進めたい方へ

生前贈与と相続放棄が関係するケースでは、家庭裁判所の手続き、贈与税・相続税、債権者対応を並行して確認する必要があります。
相続アシストでは、相続税申告や周辺手続きとあわせて、相続放棄に関する判断材料の整理も相談できます。

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どのような場合に「生前贈与」と「相続放棄」の組み合わせを検討するのか

生前贈与と相続放棄の組み合わせを検討するケースの図解

生前贈与と相続放棄を組み合わせる方法は、特定の状況下で考慮されることがあります。この方法を検討する主な目的は、被相続人が遺した負債を引き継がずに、特定の財産を確保することです。例えば、故人に多額の借金がある場合や、管理が困難な不動産など、特定の遺産を避けたいと考えるケースがこれに該当します。ただし、このような方法は、後に詐害行為取消権や信義則違反として取り消される可能性もあるため、法的な有効性については慎重な検討が必要です。

故人に多額の借金が発覚したケース

最も典型的なのは、被相続人に資産を上回る多額の借金があるケースです。
相続はプラスの財産だけでなく、借金というマイナスの財産も引き継ぐため、そのまま相続すると相続人が返済義務を負うことになります。
そこで、被相続人の生前に価値のある財産を生前贈与で受け取っておき、亡くなった後に相続放棄をすることで、多額の借金を引き継がずに済むという方法が検討されます。

特定の不動産など、管理が難しい遺産を相続したくないケース

借金のような金銭的な負債だけでなく、管理が難しい遺産を相続したくないという理由も考えられます。
例えば、固定資産税の負担が大きい割に買い手が見つからない土地、管理に手間と費用がかかる古い空き家や山林といった「負の不動産」が挙げられます。
このような場合、預貯金などプラスになる財産だけを生前贈与で受け取り、相続放棄によって管理が困難な不動産の承継を避ける、という活用方法があります。

生前贈与を受けてから相続放棄するときの3つの注意点

生前贈与後に相続放棄するときの注意点を示す図解

生前贈与と相続放棄の組み合わせは有効な手段ですが、実行する際にはいくつかの重要な注意点があります。
特に、債権者を害する行為とみなされる「詐害行為」のリスク、相続放棄をしても発生しうる税金の問題、そして他の相続人との間での「遺留分」をめぐるトラブルの可能性には十分な配慮が必要です。
これらの点を軽視すると、予期せぬ法的な問題や金銭的な負担を招く恐れがあります。

注意点1:債権者から贈与の取消を求められる可能性(詐害行為取消権)

被相続人に借金があることを知りながら、返済に充てるべき財産を意図的に生前贈与し、その後相続放棄をした場合、その贈与は「詐害行為」と見なされる可能性があります。
詐害行為とは、債権者の権利を害することを知りながら行う財産減少行為のことです。
この場合、債権者は民法で定められた「詐害行為取消権」を行使し、裁判所に対してその贈与の取り消しを求めることができます

認められれば、贈与された財産は取り戻されてしまいます。

注意点2:相続放棄をしても相続税の支払い義務が生じるケース

相続放棄をすると相続人ではなくなるため、原則として相続税の納税義務はありません。
しかし、例外的に相続税が課されるケースが存在します。
一つは、相続開始前3〜7年以内に行われた贈与です。

もう一つは、「相続時精算課税制度」を利用して贈与を受けた場合です。
これらのケースでは、生前贈与によって受け取った財産が相続税の課税対象とみなされ、相続放棄をした後でも税金の支払い義務が生じることがあります。

相続開始前の一定期間内(3年~7年)に行われた贈与

相続または遺贈により財産を取得した人が、被相続人が亡くなる前の一定期間内に受けた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算するルールがあります。
この期間は、2023年12月31日までの贈与では3年以内ですが、2024年1月1日以降の贈与からは段階的に延長され、最終的に7年となります。
この生前贈与加算のルールでは、相続開始前3年(または7年)以内の贈与は、相続財産へ持ち戻しして相続税を計算します。
この持ち 戻しの対象となる贈与は、相続放棄をした場合でも相続税の課税対象となる可能性があります。

相続時精算課税制度を利用して受け取った贈与

相続時精算課税制度は、原則60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与を行う際に選択できる制度です。
この制度を利用して受け取った贈与財産は、贈与者の相続時に相続財産に加算され、一括して相続税が計算されます。
このルールは、受贈者が相続放棄をした場合でも適用が免除されません。

したがって、相続時精算課税制度を利用して贈与を受けている場合、相続放棄をしてもその財産に対して相続税が課される可能性があります。

注意点3:他の相続人から遺留分を請求されるリスク

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保証された、最低限の遺産取得分です。
特定の相続人だけが多額の生前贈与を受けていると、他の相続人の遺留分を侵害している可能性があります。

相続放棄をした人は遺留分を主張する権利を失いますが、他の共同相続人から「遺留分侵害額請求」をされるリスクは残ります。
特に、相続人への贈与で相続開始前10年以内に行われたものは遺留分の計算対象となるため、注意が必要です。

相続放棄をしても生前贈与で受け取った財産は返さなくてよい?

相続放棄後の生前贈与財産の扱いを示す図解

原則として、有効に成立した生前贈与によって受け取った財産は、その後に相続放棄をしても返す必要はありません。
贈与は契約であり、相続とは別の法律行為だからです。
ただし、この原則には例外があります。
債権者を害する目的で行われた贈与が「詐害行為」と判断され、債権者から取り消しを求められた場合は、財産を返還しなければなりません。

また、他の相続人の「遺留分」を侵害している場合は、その侵害額に相当する金銭の支払いを求められる可能性があります。

生前の相続放棄は不可能!借金を相続させないための他の方法

生前の相続放棄ができない場合の代替方法を示す図解

「将来の借金を避けるために、親が元気なうちに相続放棄をしておきたい」と考える方がいますが、生前の相続放棄は法的にできません。
相続に関する権利や義務は、被相続人の死後に初めて発生するため、事前に放棄することは認められていません。
しかし、借金を次世代に引き継がせないための方法は相続放棄以外にも存在します。

被相続人が亡くなる前の相続放棄は法的に認められない

民法上、相続は被相続人の死亡によって開始されます。
そのため、相続権や相続放棄をする権利も、被相続人の死後にはじめて発生します。
まだ発生していない権利を事前に放棄することはできないため、被相続人が生きている間に相続放棄の手続きを行うことは不可能です。

たとえ「相続を放棄します」という内容の念書を作成したとしても、法的な効力は一切ありません。
相続放棄は、必ず被相続人が亡くなった後に行う必要があります。

プラスの財産の範囲内で借金を返済する「限定承認」という選択肢

限定承認は、相続したプラスの遺産の範囲内でのみ借金などのマイナスの財産を返済し、もし財産が残ればそれを引き継ぐことができる手続きです。
借金の総額が不明確で、資産を上回るかどうか分からない場合に有効な選択肢となります。
ただし、相続放棄と異なり、限定承認は相続人全員が共同で行わなければならず、手続きも複雑です。

また、家庭裁判所への申述は相続の開始を知った時から3ヶ月以内という期限があります。

被相続人自身が生前に借金を整理する「債務整理」

最も根本的な解決策は、被相続人自身が生前に借金を整理することです。
弁護士や司法書士などの専門家に相談し、任意整理、個人再生、自己破産といった債務整理の手続きを進めることで、借金問題を解決できます。

これにより、将来相続人となる家族が借金の返済義務を負う心配がなくなります。
被相続人の生活再建にもつながるため、家族で話し合い、検討することが望ましい方法です。

生前贈与と相続放棄に関するよくある質問

生前贈与と相続放棄に関するFAQの図解

生前贈与と相続放棄に関しては、その可否や税金の問題、手続きのタイミングなど、多くの方が疑問を抱いています。
ここでは、特に多く寄せられる質問について、簡潔に解説します。
借金と財産の取り扱いや、税金の支払い義務、生前の手続きの可否といった基本的なポイントを確認しましょう。

生前贈与で財産だけもらい、借金は相続放棄で引き継がないことは可能ですか?

はい、原則として可能です。
生前贈与と相続は別の制度であるため、事前に贈与で遺産の一部を受け取り、被相続人の死後に相続放棄をして借金の承継を免れることはできます。
ただし、債権者を害する目的が明らかな場合は、贈与が取り消されるリスクがあるため注意が必要です。

相続放棄をすれば、相続税の支払いは一切なくなりますか?

いいえ、なくならない場合があります。
相続開始前3年〜7年以内に行われた暦年贈与や、相続時精算課税制度を利用して受けた贈与は、相続放棄をしても相続税の課税対象となります。
そのため、生前贈与の時期や方法によっては、相続放棄後も税金の支払い義務が残ることは否定できません。

被相続人が亡くなる前に、将来のために相続放棄の手続きをすることはできますか?

いいえ、できません。
相続放棄の手続きは、被相続人の死後、相続の開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で行う必要があります。
相続権は被相続人の死亡によって初めて発生するため、生前に将来の相続を放棄する手続きを行うことは法的に認められていません。

複雑な生前対策は専門家の「生前対策診断」で解決の糸口を

生前対策診断で解決の糸口を整理する図解

生前贈与と相続放棄の組み合わせは、法的なリスクや税金の問題が複雑に絡み合うため、個人で最適な判断を下すのは非常に困難です。
手続きの順序やタイミングを間違えると、思わぬ不利益を被る可能性もあります。
このような複雑な生前対策については、税務と法務の両面に精通した専門家に相談するのが賢明です。
ご自身の状況に合わせた生前対策については「生前対策診断」で詳しく紹介しています。

専門家による「生前対策診断」などを利用することで、ご自身の状況を客観的に整理し、最適な解決策の糸口を見つけることができます。

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生前対策の相談で専門家が選ばれる3つの理由

生前対策の相談で専門家が選ばれる理由を示す図解

生前対策を検討する際、多くの方が専門家への相談を選択します。
その理由は、単に手続きを代行してもらうためだけではありません。
専門家は、税金や法律に関する深い知識と豊富な経験に基づき、個々の状況に合わせた最適なプランを設計します。

複雑な遺産の問題を抱えている場合でも、中立的な立場から客観的なアドバイスを得られる点が、専門家が選ばれる大きな理由です。

税金と法律の両面から最適な解決策を提案できる

生前贈与や相続には、相続税や贈与税といった税金の問題と、民法上の遺留分や詐害行為といった法律の問題が密接に関わっています。
そのため、税理士や司法書士、弁護士などの専門家が連携し、税負担の軽減と法的なトラブル回避という両方の視点から、個々の状況に最も適したバランスの取れた解決策を提案することが可能です。

遺言や家族信託など特定の制度に偏らない中立的な助言

生前対策の方法は、生前贈与や相続放棄に限りません。
遺言書の作成、家族信託の活用、任意後見制度など、様々な選択肢が存在します。
専門家は、相談者の財産状況や家族構成、将来の希望などを丁寧にヒアリングした上で、特定の制度に偏ることなく、中立的な立場で最も効果的な遺産の承継プランを設計します。

複数の選択肢を比較検討し、メリット・デメリットを分かりやすく説明することで、納得のいく意思決定をサポートします。

相続発生後の手続きまで見据えた長期的なサポート体制

生前対策は、計画を立てて終わりではありません。
実際に相続が発生した際には、遺産分割協議、相続放棄の申述、相続税申告といった様々な手続きが必要になります。
専門家は、被相続人の死後までを見据えて生前の対策を設計します。

また、相続発生後も一貫してサポートを提供できるため、生前に立てた計画がスムーズに実行され、遺された家族の負担を大幅に軽減することが可能です。

まとめ

生前贈与と相続放棄の注意点のまとめ図解

生前贈与を受けた後でも相続放棄をすることは、原則としてできます。
これにより、被相続人の借金を引き継がずに、必要な遺産だけを確保できる可能性があります。
しかし、債権者を害する目的とみなされれば贈与が取り消されるリスクがあるほか、相続放棄後の税金の支払い義務が残るケースも存在します。

こうした法務・税務のリスクを避け、安全に手続きを進めるためには、専門家への相談が不可欠です。

この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS

代表 柴田 潤

経歴
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
一言
複雑な相続税申告や手続きは、専門知識と経験が不可欠です。税理士法人SWATSは法律事務所と連携し、安心のワンストップ対応を実現しています。

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