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相続税の基礎控除|計算方法と適用のルールをやさしく解説

公開日:2026/01/09
更新日:2026/01/09
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著者

税理士法人SWATS

代表 柴田 潤

関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。

目次

「相続税の基礎控除って何?」

「自分は相続税がかかるのか知りたい…!」

こんな悩みに答えます。

結論から言うと、相続税の基礎控除は相続税がかかるかを判断する基準となる非課税枠です。

この記事では、相続税の基礎控除の仕組みや計算方法、注意点について詳しく解説します。

相続税が心配な方は、ぜひ最後まで読んでください。

相続税の基礎控除とは

相続税の基礎控除は、相続税がかかるかどうかを最初に判断するための基準です。相続が発生すると、多くの人が「自分は相続税の申告が必要なのか」「税金が発生するのか」で迷いますが、その判断は基礎控除額を超えるかどうかで決まります。

この章を読むことで、相続税が課税される仕組みの全体像が整理され、不要な申告や見落としを防ぐ判断軸を持てるようになります。

制度の仕組みと基礎控除の役割

相続税の基礎控除とは、相続税を計算する際に必ず差し引くことができる非課税枠です。被相続人が亡くなった時点の遺産総額から基礎控除額を差し引き、その残額がある場合にのみ相続税が課税されます。

この仕組みにより、一定額までの財産については相続税がかからない設計になっています。
相続税の基礎控除は相続税法第15条に基づく制度で、国税庁の公式資料でも明確に位置づけられています。制度上の役割は、相続税の課税対象を限定し、すべての相続に一律で課税しない点にあります。

基礎控除が設けられた背景と目的

相続税の基礎控除が設けられている最大の理由は、遺族の生活基盤を守るためです。少額の財産にまで課税すると、配偶者や家族の生活に直接的な影響が生じるおそれがあります。

また、税務行政の観点からも、一定額以下の相続を非課税とすることで、申告や調査の対象を絞り、制度運営を効率化しています。この考え方は、国税庁が公表している制度解説資料にも示されています。ただし、基礎控除額は固定ではなく、社会状況や税制改正により変更される点を理解しておく必要があります。

課税される人・されない人の分かれ目

相続税がかかるかどうかは、遺産総額が基礎控除額を超えるかどうかで判断します。基礎控除額以下であれば、原則として相続税の申告や納税は不要です。

例えば、法定相続人が1人で、遺産総額が3,000万円以内であれば、相続税は課税されません。一方で、不動産を多く保有している場合や、都市部に自宅がある場合は、現金が少なくても評価額が基礎控除を超えることがあります。

ここで注意すべきなのは、判断基準となる金額が時価ではなく、相続税法上の評価額である点です。この違いを理解していないと、「相続税はかからないと思っていたのに申告が必要だった」という判断ミスにつながります。

基礎控除の計算方法と具体例

相続税の基礎控除は、計算式自体は単純ですが、前提となる人数や財産評価を誤ると結論が大きく変わる点が実務上の落とし穴です。
この章を読むことで、自分のケースで相続税がかかるかどうかを、数字で判断できるようになります。

控除額の計算式(3,000万円+600万円×法定相続人)

相続税の基礎控除額は、相続税法で次の計算式が定められています。

3,000万円+600万円 × 法定相続人の数

この計算式は国税庁が公表している「相続税の計算のあらまし」に基づくものです。
例えば、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円になります。重要なのは、人数として数えるのが「実際に財産を相続する人」ではなく、法定相続人である点です。
相続人の数え方を誤ると、基礎控除額そのものが変わり、課税・非課税の判断を間違える原因になります。

ケース別シミュレーション

相続税の基礎控除は、具体的な数値で確認すると判断しやすくなります。
次のケースを想定します。

  • 法定相続人:3人
  • 遺産総額:5,000万円
  • 基礎控除額:4,800万円(3,000万円+600万円×3人)

この場合、基礎控除を差し引いた課税対象額は200万円です。この200万円をもとに、法定相続分で按分し、相続税率を適用して税額を計算します。

ただし、不動産の評価額が変われば、遺産総額そのものが増減します。相続税の基礎控除を使った判断は、正確な財産評価を前提に行う必要があります。

法定相続人の数え方と注意点

相続税の基礎控除では、相続放棄の有無にかかわらず、法定相続人の数で計算します。この点は、民法上の相続人の考え方と、相続税法上の取り扱いを正しく理解していないと誤解しやすい部分です。

法定相続人を数える際の主な注意点は次のとおりです。

  • 相続放棄をしても、基礎控除の計算上は人数に含める
  • 養子は人数に制限があり、無制限には加算できない
  • 内縁関係の配偶者や事実婚の相手は法定相続人に含まれない

これらのルールは、民法および国税庁の取り扱いに基づいています。家族構成が複雑な場合は、自己判断で人数を確定させず、専門家に確認することで計算ミスを防げます。

基礎控除と税額控除の違いと関係性

相続税の計算では、「基礎控除」と「税額控除」という二つの控除が登場します。名前が似ているため混同されがちですが、適用される段階と効果はまったく異なります

この違いを整理しておくことで、本来使える控除を見落とさず、税額計算の流れを正しく理解できます。

基礎控除と税額控除の根本的な違い

相続税の基礎控除は、課税対象となる遺産総額を計算する前段階で差し引く控除です。一方、相続税額控除は、相続税額を計算した後に差し引く控除です。

両者の違いは、次の点で明確に分かれます。

  • 適用タイミング
    基礎控除は課税前、税額控除は税額算出後に適用する
  • 役割
    基礎控除は「相続税がかかるかどうか」を判断する基準
    税額控除は「最終的な納税額」を減らすための制度
  • 影響範囲
    基礎控除は相続全体に影響し、税額控除は各相続人ごとに影響する

この違いを理解せずに計算すると、控除の適用順を誤り、税額がずれてしまいます。

基礎控除後に使える主要な税額控除

相続税の基礎控除で課税対象額が確定した後、要件を満たせば税額控除を適用できます。実務でよく使われる主な税額控除は、次の6つです。

  • 贈与税額控除(生前贈与で納めた贈与税を調整する制度)
  • 配偶者に対する相続税額の軽減(配偶者控除)
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除

これらの控除は、国税庁が適用要件や計算方法を明確に定めています。要件を満たしているにもかかわらず適用しないと、本来より高い税額を納めることになります。

配偶者控除・未成年者控除の併用関係

相続税の基礎控除と税額控除は、併用が可能です。実務では、まず基礎控除で課税対象額を減らし、その後に配偶者控除や未成年者控除を適用します。

この流れにより、相続税の申告は必要でも、最終的な税額がゼロになるケースも少なくありません。ただし、配偶者控除を適用する場合は、税額がゼロでも申告が必須です。

「税金がかからない=申告不要」と誤解すると、申告漏れになります。控除の種類ごとに、申告義務の有無を切り分けて判断することが重要です。

近年の改正と実務上の注意点

相続税の基礎控除は、過去の税制改正によって大きく内容が変わっています。とくに近年は、「以前は相続税がかからなかった家庭」が課税対象になるケースが増えています。制度の前提を古いまま理解していると、申告漏れや資金準備不足につながるため注意が必要です。

平成27年改正の内容と影響

相続税の基礎控除は、平成27年(2015年)1月1日以後の相続から引き下げられました。改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人」でしたが、現在は
「3,000万円+600万円×法定相続人」となっています。

この改正により、基礎控除額は全体的に4割程度縮小しました。結果として、都市部を中心に、一般的な自宅と預貯金だけでも相続税がかかるケースが現実的になっています。「昔は相続税がかからなかったから今回も大丈夫」という判断は、現在の制度では通用しません。

控除縮小で課税対象になりやすいケース

相続税の基礎控除の縮小によって、次のようなケースは相続税がかかりやすくなっています。

  • 都市部や地価の高いエリアに自宅を所有している
  • 現金は多くないが、土地の評価額が高い
  • 不動産を複数所有している

特に注意が必要なのは、「自宅しか財産がない」と思っている場合です。税務上の土地評価額が高ければ、現金がほとんどなくても課税対象になることがあります。この場合、納税資金をどう確保するかが実務上の大きな課題になります。

基礎控除だけで安心できない代表的な例

相続税の基礎控除において、遺産総額が基礎控除内に収まりそうでも、実際には課税対象になる例があります。

  • 被相続人名義ではないが、実質的に管理していた名義預金
  • 相続開始前の一定期間内に行った生前贈与
  • 死亡保険金のうち、非課税限度額を超える部分

これらは、条件を満たすと相続財産に含めて計算します。「見えている財産」だけで判断すると、基礎控除を超えていることに後から気づくケースも少なくありません。相続税の基礎控除を正しく判断するためには、財産を網羅的に洗い出すことが前提になります。

基礎控除を超えるかの事前チェックリスト

相続税の基礎控除を超えるかどうかは、単純に「財産の合計額」だけで判断できません。どのような資産を持っているか、どの評価方法が使われるかによって、結果は大きく変わります。相続が発生してから慌てないためにも、生前の段階で一度整理しておくことが重要です。

超過リスクが高い資産の特徴

相続税の基礎控除において、次のような資産を持っている場合、基礎控除を超える可能性が高くなります。

  • 都市部や駅近にある土地・建物
  • 賃貸アパートや貸家などの収益不動産
  • 非上場株式や持分会社の出資持分

これらの資産は、評価方法が複雑で、想定より高い評価額になることが少なくありません。「売ったらこのくらい」という感覚ではなく、税務上の評価額で確認することが重要です。

見落としやすい財産と評価ポイント

相続税の基礎控除を判断する際、次のような財産は見落とされやすい傾向があります。

  • 家族名義でも、被相続人が管理していた預金(名義預金)
  • 死亡保険金のうち、非課税枠を超える部分
  • 自宅に保管していた現金(いわゆるタンス預金)
  • 相続開始前の一定期間内に行われた生前贈与

相続税では、名義ではなく実質的な所有者で判断します。形式だけで「これは対象外」と決めつけると、申告漏れにつながるおそれがあります。

簡易セルフチェックの進め方

相続税の基礎控除を超えるかどうかは、次の流れで大まかに確認できます。

  • 被相続人の財産をできる限りすべて書き出す
  • 法定相続人の数をもとに基礎控除額を計算する
  • 財産評価額の合計が基礎控除額を超えるかを確認する

この時点で少しでも超えそうな場合や、評価が難しい資産がある場合は、自己判断で結論を出さないことが重要です。早い段階で専門家に相談することで、後から修正が必要になるリスクを減らせます。

FAQ

相続税の基礎控除については、制度自体はシンプルでも、実務では誤解されやすい点が多くあります。ここでは、実際の相談現場でも特に質問が多いポイントを整理し、判断を誤りやすい部分を明確にします。

基礎控除内でも申告が必要になるケースはある?

相続税の基礎控除額の範囲内であっても、相続税の申告が必要になるケースはあります。代表的なのが、配偶者に対する相続税額の軽減などの特例を適用する場合です。

これらの特例は、税額が最終的にゼロになる場合でも、申告書の提出を要件としています。「相続税がかからない=申告も不要」と判断してしまうと、申告漏れとして扱われる可能性があるため注意が必要です。

基礎控除は遺産分割前でも判断できる?

相続税の基礎控除を超えるかどうかの判断は、遺産分割が終わっていなくても可能です。基準になるのは、分割方法ではなく、被相続人が残した財産の総額です。

遺産分割の内容は、その後の税額配分には影響しますが、基礎控除の適用可否自体には影響しません。「分け方が決まらないから判断できない」と考える必要はなく、まずは総額で確認することが重要です。

基礎控除と生前贈与はどのように関係する?

相続税の基礎控除の判断において、生前贈与は直接影響する場合があります。相続開始前の一定期間内に行われた贈与は、相続税の計算上、相続財産に加算される仕組みになっているためです。

その結果、贈与によって財産を減らしたつもりでも、相続税の基礎控除を超えるケースがあります。短期的な節税目的での贈与は、かえって税負担や手続きリスクを高めることがある点を理解しておく必要があります。

基礎控除で迷ったときの判断基準と相談目安

相続税の基礎控除は明確な計算式がありますが、実際の相続では判断に迷う場面が少なくありません。ここでは、実務で使える判断の流れと、自己判断を避けるべきケースを整理します。

相続税がかかるか判断する3ステップ

相続税がかかるかどうかは、順序を守って確認することで判断しやすくなります。最初に行うべきなのは、被相続人の財産を漏れなく把握することです。

次に、法定相続人の数を確定させ、相続税の基礎控除額を正確に計算します。そのうえで、財産総額が基礎控除額を超えるかを確認すれば、課税の有無を大枠で判断できます。

基礎控除だけでは判断できない複雑なケース

相続税の基礎控除の計算自体は単純でも、財産内容によっては判断が難しくなります。不動産が含まれる場合は、路線価や評価減の適用可否によって評価額が大きく変わります。

非上場株式や特例の適用判断が必要なケースでは、税務上の専門知識が前提になります。こうした場合に自己判断をすると、申告漏れや過少申告につながるリスクがあります。

専門家に相談すべきタイミング

財産総額が相続税の基礎控除を超えそうだと分かった時点で、専門家への相談を検討すべきです。特に、不動産や評価が難しい資産が含まれている場合は、早めの相談が重要になります。

税理士に相談することで、評価と申告を一体で整理でき、結果的に手続きや税負担を抑えられることがあります。判断に迷ったまま放置せず、早期に確認する姿勢が安心につながります。

生前対策のポイント

相続税の基礎控除は、相続発生後の判断基準であると同時に、生前対策を考える際の出発点でもあります。ただし、基礎控除があることを前提にした対策は、考え方を誤ると逆効果になる点に注意が必要です。

基礎控除を踏まえた生前贈与の考え方

生前贈与を行う際は、相続税の基礎控除と贈与税のルールをセットで理解する必要があります。贈与には年間非課税枠がある一方で、相続開始前の一定期間内の贈与は相続財産に加算されます。

そのため、短期間で集中的に贈与を行うと、相続税の基礎控除を超える原因になることがあります。生前贈与は、税負担だけでなく資金移動の目的や時期を踏まえて、計画的に行うことが重要です。

基礎控除と相続税対策を混同しないための注意点

相続税の基礎控除は、あくまで「課税されるかどうかを判断する基準」です。基礎控除の範囲内に収まりそうだからといって、対策が不要と判断するのは危険です。

不動産価格の変動や評価方法の違いにより、将来の相続時には基礎控除を超える可能性もあります。基礎控除を安全圏と捉えず、定期的に財産状況を見直す視点が欠かせません。

基礎控除を軸にした相続対策の視点

相続対策は、相続税の基礎控除を起点に、税負担と家族関係の両方を考慮して設計します。早い段階から準備を始めることで、贈与や分割方法などの選択肢が広がります。

短期的な節税だけを目的にすると、後々のトラブルや手続き負担が増えることがあります。基礎控除を軸に、将来を見据えた長期的な視点で検討することが、結果的に安定した相続につながります。

まとめ

今回の記事では、相続税の基礎控除についてご紹介しました。

相続税の基礎控除は相続税の課税有無を決める重要な基準で、計算方法や注意点を正しく理解する必要があります。

この記事を参考に、相続税の基礎控除を踏まえた判断や準備を進めていただければ嬉しいです。

この記事を担当した税理士

税理士法人SWATS

代表 柴田 潤

経歴
関西大学商学部卒業後、2002年に税理士法人SWATSに入社。資産税・相続税を専門とし、税務と法務の両面から相続をサポート。登録番号:第132969号/近畿税理士会神戸支部所属。
一言
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