相続が発生した際、不動産の名義変更(相続登記)などの手続きで必要となるのが「相続関係説明図」です。
この書類を自作することで、専門家へ依頼する費用を抑え、手続きを円滑に進めることが可能になります。
この記事では、相続関係説明図の具体的な書き方や、無料のテンプレート、そしてよく似た書類である「法定相続情報一覧図」との違いについて、分かりやすく解説します。
相続関係説明図とは?相続手続きをスムーズに進めるための書類

相続関係説明図とは、亡くなった方(被相続人)と、その財産を相続する権利を持つ人(相続人)との関係性を一覧にまとめた家系図のような書類です。
この書類の作成は法律上の義務ではなく、相続関係説明図は必要か問われると、必ずしも提出がいらないケースもあります。
しかし、作成には大きなメリットがあり、特に不動産の相続登記手続きにおいて重要な役割を果たします。
相続関係が複雑な場合でも、この図があることで登記官が関係性を迅速に把握でき、手続きがスムーズに進みます。
目的①:提出した戸籍謄本一式の原本を返却してもらうため
相続関係説明図を法務局に提出する最大の目的は、相続登記の際に提出した戸籍謄本や除籍謄本、住民票といった公的書類の原本を返却(還付)してもらうためです。
相続手続きは不動産の名義変更だけでなく、預貯金の解約や有価証券の名義変更など多岐にわたります。
戸籍謄本一式はこれらの手続きでも必要になるため、原本還付を受ければ、その都度戸籍を取り直す手間と費用を省き、他の手続きに使いまわすことが可能になります。
目的②:複雑な相続関係をひと目で分かりやすく整理するため
相続関係説明図は、相続人の数が多い場合や、代襲相続、数次相続などが発生して関係が複雑になっている場合に、誰が正当な相続人であるかを視覚的に分かりやすく整理する役割も果たします。
この一覧図は、いわば相続に特化した家系図であり、戸籍謄本だけでは読み取りにくい全体の相続関係をひと目で把握できるようにします。
これにより、手続きを行う法務局の登記官だけでなく、相続人自身も関係性を正確に理解し、後のトラブルを防ぐことにも繋がります。
法定相続情報一覧図との違いは?どちらを作成すべきか解説

相続手続きを進める上で、相続関係説明図とよく似た書類に「法定相続情報一覧図」があります。
これは法務局が認証した公的な書類で、相続関係を証明する効力を持つ点が大きな違いです。
どちらの書類を作成すべきかは、行う手続きの種類や数によって異なります。
それぞれの特徴を理解し、自身の状況に合わせて適切な方を選択することが、相続手続きを効率的に進める鍵となります。
公的な証明力や作成場所の違いを比較
相続関係説明図は、個人が自由に作成できる私的な書類であり、公的な証明力はありません。
一方、法定相続情報一覧図は、戸籍謄本一式と共に法務局(登記所)へ申し出て認証を受けることで、その内容が公的に証明されます。
一度認証を受ければ、その後の5年間は写しを無料で何通でも発行でき、各種手続きで戸籍謄本の束の代わりとして利用可能です。
作成場所も、相続関係説明図が自宅などで作成できるのに対し、法定相続情報一覧図は登記所での手続きが必要となります。
不動産の名義変更だけなら相続関係説明図がおすすめ
相続手続きが不動産の名義変更(相続登記)のみで完結する場合は、相続関係説明図を作成するのがおすすめです。
不動産登記の手続きにおいては、相続関係説明図を提出すれば戸籍謄本一式の原本還付が受けられ、目的を十分に果たせます。
法定相続情報一覧図のように法務局の認証を受ける必要がないため、比較的少ない手間で作成でき、迅速に手続きを進めることが可能です。
銀行など複数の手続きがあるなら法定相続情報一覧図が便利
不動産の名義変更に加えて、複数の銀行や証券会社などの金融機関で預貯金の解約や名義変更手続きが必要な場合は、法定相続情報一覧図の作成が非常に便利です。
法定相続情報一覧図の写しは、戸籍謄本一式の代わりとして各金融機関へ提出できるため、手続きの都度、重くて分厚い戸籍の束を持ち歩く必要がなくなります。
これにより、複数の相続手続きを並行して効率的に進めることが可能になります。
【テンプレート付き】相続関係説明図の具体的な書き方と作成手順

相続関係説明図の作成は、定められた手順に沿って進めれば、専門家でなくても作成が可能です。
ここでは、相続関係説明図の作り方について、具体的な作成方法を4つのステップに分けて解説します。
法務局が示す書式や様式を参考にすることで、不備のない書類を作成できます。
相続関係説明図の作成に取り掛かる前に、全体の流れを把握しておきましょう。
ステップ1:作成に必須となる戸籍謄本などを収集する
相続関係説明図を作成するための最初のステップは、必要書類を正確に収集することです。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要となります。
これらの戸籍情報をもとに、被相続人と相続人の関係を法的に証明し、図に反映させていきます。
書類の収集には時間がかかる場合があるため、早めに準備を始めましょう。
ステップ2:見本に沿って被相続人と相続人の情報を記載する
戸籍謄本が集まったら、次に被相続人と相続人の情報を図に記載していきます。
まず、図の冒頭に「被相続人〇〇〇〇相続関係説明図」とタイトルを記載します。
被相続人については、氏名、最後の住所、本籍、生年月日、死亡年月日を戸籍の通りに正確に書きます。
相続人については、それぞれの氏名、生年月日、住所を記載します。
これらの記載事項は、相続登記申請書の情報と一致している必要があります。
ステップ3:続柄(長男・妻など)と関係性を線で正しく結ぶ
次に、記載した各人の関係性が分かるように、続柄を記入し、線で結んでいきます。
配偶者との関係は二重線、親子や兄弟姉妹などの関係は実線で結ぶのが一般的です。
縦の線で世代をつなぎ、家系図のように視覚的に分かりやすく構成します。
各相続人の名前の横には、「妻」「長男」「二女」といった具体的な続柄を明記します。
これにより、誰がどの立場の相続人であるか、その範囲が明確になります。
ステップ4:誰が財産を取得するのか(相続・遺産分割など)を明記する
最後に、遺産分割協議の結果、誰がどの財産を取得するのかを図上に明記します。
例えば、不動産を特定の相続人が取得する場合、その相続人の名前の横に「(相続)」や「(遺産分割により取得)」などと記載します。
財産を取得しない相続人については特に記載は不要ですが、分かりやすくするために「(分割)」や「(遺産分割)」とだけ記載することもあります。
この記載により、登記官は遺産分割協議の内容と照合しやすくなります。
すぐに使える!相続関係説明図の無料テンプレートダウンロード
相続関係説明図をゼロから作成するのは手間がかかるため、テンプレート(ひな形・ひな型)の活用がおすすめです。
インターネット上では、Word(ワード)やExcel(エクセル)形式で編集できる無料のテンプレートが多数配布されています。
これらのツールや作成ソフトを利用すれば、必要な情報を入力するだけで簡単に関係図を作成できます。
自分の相続ケースに近いテンプレートをダウンロードし、効率的に作業を進めましょう。
【ケース別】相続関係説明図の書き方見本を紹介

相続の形は家庭によって様々です。
ここでは、具体的な相続ケースに応じた相続関係説明図の書き方の見本(サンプル)を複数パターンに分けて紹介します。
基本的なケースから複雑なケースまで、それぞれの記載例を参考にすることで、ご自身の状況に合わせた正確な相続関係説明図を作成するためのヒントが得られます。
見本①:配偶者と子供が相続する基本的なケース
最も一般的なのが、被相続人の相続人が配偶者と子供であるケースです。
この場合、図の中心に被相続人と配偶者を配置し、二人の関係を二重線で結びます。
そして、その下の子の段に子供たちを並べて記載し、それぞれを親と実線で結びます。
続柄には「妻」「長男」「長女」などと具体的に記載し、誰が相続人であるかを明確に示します。
見本②:子供がおらず両親や兄弟姉妹が相続するケース
被相続人に子供がいない場合、相続権は次の順位に移ります。
まず、被相続人の両親が存命であれば、両親が相続人となります。
両親がすでに亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
さらに、兄弟姉妹の中に亡くなっている方がいれば、その子供である甥や姪が代襲して相続人になります。
図を作成する際は、これらの関係性を戸籍に基づいて正確に記載する必要があります。
見本③:代襲相続や数次相続が発生している複雑なケース
相続手続きが複雑化する要因として、代襲相続と数次相続があります。
代襲相続は、本来相続人となるはずの子や兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合に、その子供(孫や甥・姪)が代わりに相続する制度です。
この場合、亡くなった人と代襲相続人である孫などを線で結び、続柄を明記します。
一方、数次相続とは、遺産分割が終わらないうちに相続人が亡くなり、次の相続が開始される状況を指します。
この場合、死亡した相続人の情報に「(相続人兼被相続人)」と記載し、死亡年月日を併記して関係性を示します。
相続関係説明図に関するよくある質問

相続関係説明図の作成にあたっては、様々な疑問が生じることがあります。
ここでは、手書きでの作成は可能か、テンプレートの入手方法、専門家への依頼費用など、よくある質問とその回答をまとめました。
法務省のウェブサイトでも相続登記に関する情報が公開されていますが、より実務的な疑問点を解消します。
相続関係説明図は手書きで作成しても問題ありませんか?
はい、問題ありません。
相続関係説明図はパソコンで作成する必要はなく、手書きで作成したものでも法務局に提出できます。
ただし、誰が読んでも分かるように、丁寧で判読しやすい字で記載することが重要です。
用紙に特定の定めはなく、A4サイズの白紙などに黒のボールペンや万年筆ではっきりと書きましょう。
修正液や修正テープの使用は避けるのが望ましいです。
パソコンがない場合、テンプレートはどこで入手できますか?
パソコンがなくExcelなどのテンプレートが利用できない場合でも、法務局の窓口で入手できることがあります。
不動産の所在地を管轄する法務局で相続登記の相談をする際に、書き方の見本や白紙の様式をもらえる場合があります。
事前に電話で確認してから法務局へ向かうとスムーズです。
また、司法書士事務所などで相談した際に、見本を提供してもらえることもあります。
自分で作るのは難しい場合、司法書士に依頼すると費用はいくらですか?
相続関係説明図の作成を司法書士に依頼した場合の費用は、数万円程度が目安となります。
ただし、多くの場合、相続関係説明図の作成単体で依頼するのではなく、不動産の名義変更(相続登記)の手続き全体を依頼する中の一業務として含まれます。
相続関係が複雑な場合や、平日に役所へ行く時間がない場合は、専門家である司法書士に依頼するのが確実です。
まとめ

相続関係説明図は、相続登記を円滑に進めるために非常に役立つ書類です。
作成は任意ですが、提出することで戸籍謄本一式の原本還付を受けられるメリットがあります。
作成者として記名や押印をしておくと、より丁寧な書類となります。
相続関係に養子縁組や離婚、再婚などが含まれる場合は、戸籍の記載通り正確に反映させる必要があります。
また、相続放棄をした人がいる場合は、その事実を家庭裁判所の証明書とともに示すことが求められます。
遺言書がある場合でも、相続人を確定させる書類として提出が望ましいケースが少なくありません。
遺産分割調停やその他の遺産相続手続きにおいても、相続関係を明確にする資料として活用できます。
申請書とあわせて提出することで、法務局での手続きがスムーズになります。相続税の申告書に添付できる場合もありますが、その際は法定相続情報一覧図として利用するなど、利用方法に注意が必要です。
図が複数枚にわたっても問題ありません。
この記事で解説した書き方やテンプレートを参考に、ご自身の状況に合わせて正確な書類作成を進めてください。

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